リケラボ理系の理想のはたらき方を
考える研究所

頭の体操クイズや豆知識、オモシロ実験など理系ゴコロをくすぐるエンタメ情報をお届け!

手作りカロリーメーターで燃料の熱量を測ってみた│ヘルドクターくられの1万円実験室

手作りカロリーメーターで燃料の熱量を測ってみた│ヘルドクターくられの1万円実験室

科学を愛する読者のみなさま、ごきげんよう。くられです。

使える予算は1万円以内。「高価な実験機器は使えない」という制約のなかで知恵と工夫を凝らして実行可能なおもしろ実験を紹介する本企画。

第51回目のお題は「カロリー測定」です。今回も、私が主宰する秘密結社「薬理凶室」のメンバーであり化学に造詣の深いレイユール氏の協力のもと、お届けします。それではお楽しみください!

皆さんこんにちは。レイユールです。

今回はカロリー測定の実験をやってみようと思います。カロリーは身近な単位でありながら、その測定に関する実験は中々紹介されることはないようです。今回はカロリーの定義とその測定方法を実際に実験をしながら確かめてみたいと思います。

カロリーとは

カロリーとは、よく食品の熱量を表す単位として身近なものです。熱量の単位としては現在はSI単位系で採用されているジュール(J)が化学的には用いられますが、食品の熱量を表す際には慣習的に現在も用いられています。

カロリーは、1gの水の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量として定義されます。ただし、水を温めるのに必要な熱量は水温によってわずかに異なるため、厳密に定義するには基準となる温度を定めておく必要があります。そのため、一般には14.5℃の水1gを15.5℃まで上げるのに必要な熱量として定義される「15℃カロリー」が広く用いられてきました。工業分野では20℃カロリーや平均カロリーなどが用いられることもありましたが、現在では熱量の多くはジュールで表されます。

食品の熱量を表す際には、扱いやすいように1000倍のkcalが用いられます。1kcalは、1kgの水の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量に相当します。成人男性の1日の摂取エネルギー量は個人差がありますが、2300kcalほどとされることがあります。これは、2.3t(2300kg)の水を1℃上昇させるのに必要な熱量に相当します。なお、1calは4.184Jです。

カロリー測定

前述のとおり、カロリーは測定対象の持つ熱量なので測定対象を燃焼させそこから発生する熱量を定量することができれば測定することができます。例えば、食用油のカロリーを求める場合はこれを燃焼させ、その熱で水を加熱し、燃焼した食用油の質量と水の質量、加熱前後の水の温度差からカロリーを推定することができます。しかし、このような方法には、燃焼によって発生した熱が全て水の加熱に使用されるわけではないという問題があります。これはこの方法では常に実際よりも低いカロリーが測定されることを意味します。従って、この誤差を補正するなんらかの校正手段が必要になります。なお、今回の実験は、元々食用油のカロリー測定を目標にしていましたが、後述する理由から今回は灯油の測定を行うことにしたいと思います。

校正の方法

このように実際に燃焼させることによってカロリーを測定する場合、燃焼熱のどのくらいが水の加熱に利用されたかの割合を事前に求める必要があります。これにはカロリー既知の燃料を燃やして実際に測定を行い、測定に用いた装置の熱効率を求めます。この数値を元に測定値を補正することで、ある程度正確なカロリー測定を行うことができます。カロリー既知の校正用燃料としては、組成の安定している単一成分の燃料を用います。今回は入手しやすいエタノールを使用します。

測定装置の組み立て

測定装置は、ランプのような燃料の燃焼部分と、その熱を水に受ける感熱部分から構成されます。熱を水に伝える部分としてはアルミカップのような薄く熱伝導率の高い容器を吊るして用います。吊るすためにタコ糸を輪の形に縛り、ここにカップを差し込んで使います。下には万一に備えて金属トレーなどを敷いておくと安心でしょう。

【※実験を行う際の注意事項※】

本実験ではエタノールや灯油といった引火性の高い液体を使用し、直火を扱います。実際に試す場合は、火災や事故を防ぐために必ず以下の安全対策を徹底してください。

・換気の徹底:一酸化炭素中毒などを防ぐため、必ず風通しの良い環境(または換気扇の下)で行うこと。
・周囲の整理:引火を防ぐため、実験装置の周囲に燃えやすいもの(紙や布など)を絶対に置かないこと。
・消火の準備:万が一の引火や転倒に備え、すぐに火を消せるよう「濡れタオル」や「水を入れたバケツ」を手元に用意しておくこと。

紐 アルミカップ(マフィンの型)に合わせて紐を結ぶ

感熱部 カップに紐を通し感熱部を作る

燃焼部分としては、小さなガラス瓶に燃料を入れてタコ糸を芯として用います。アルミ箔などで芯を固定すれば簡易的なランプになります。なお、灯油の測定にあたってアルコールランプに灯油を入れて用いると、火力が強くなりすぎてしまいます。そのため、今回のような自作の小型灯油ランプを使用します。市販の小型石油ランプがあれば、それを用いてもよいでしょう。

簡易的なランプ 簡易的なランプはガラス瓶とアルミ箔、タコ糸などから簡単に作れる

校正

それでは校正のためにエタノールの燃焼熱を測定します。まず、エタノールを十分に入れたランプの総重量を測定します。

ランプの測定 測定のイメージ。この測定値は最終的な実験結果とは異なります。

次に、アルミカップに水(可能であれば純水が望ましい)を100g入れて温度を測定しておきます。

水の測定 容器を風袋した後、水を入れて100gとする。

温度の測定 今回はデジタル温度計を用いているが、棒状温度計で十分

次にランプに点火し、炎の先端とカップの底が5mmほど開くような距離で設置します。なお、点火したらすぐにアルミカップの下に設置しましょう。(この間も燃料は消費されるため)

測定中の様子

適当時間(今回は約10分)経過後にランプを消火します。次に間を置かずにカップ内の水の温度を測定し、記録します。記録が行えたらランプの総重量を測定します。

燃焼前後のランプ総重量の差は燃焼に用いられたエタノールの重量になります。温度差は水が吸収した熱量になります。今回は100gの水を用いたので、温度が10℃上昇すれば1kcal相当となります。(今回は温度領域にかかわらずカロリーは一定と仮定します)

点火前重量

燃焼後重量

加熱前温度

加熱後温度

実験の結果は、ランプ総重量は110.6gから109.6gに減ったので、燃焼したエタノールの重量は1.0gでした。水温は、12.6℃から49.6℃に上昇したので、37.0℃上昇しました。従って、水が吸収した熱量は3.7kcalということになります。

エタノール1g当たりの熱量は約7.1kcalなので、この実験装置の熱効率は約52%だと分かりました。

油のカロリー測定

それでは、食用油のカロリー測定を行います…と言いたいところではあるのですが、市販されている油は粘度が高く、煤も出やすいので今回のような簡易的なランプでは安定して燃焼させることが難しいことがわかりました。そこで、代用として灯油のカロリーを測定してみましょう。灯油であればサラサラとしていて、火力調節もしやすく扱いやすいでしょう。

灯油ランプによる測定

測定の手順は校正の手順と全く同じです。燃焼前後の重さと温度をそれぞれ測定します。

点火前重量

燃焼後重量

加熱前温度

加熱後温度

測定の結果、水温は14.4℃から42.2℃へ27.8℃上昇、ランプの総重量は146.1gから145.6gへ0.5g減少しました。

27.8℃上昇しているので、水が受けた熱量は2.78kcalということになります。熱効率が約52%なので、実際の熱量は約5.35kcalです。この熱量は灯油0.5g分なので、1g当たりのカロリーはその倍の10.7kcalだと分かるのです。

どの程度の精度か

灯油の1g当たりのカロリーは組成が一定でないため幅がありますが、概ね10.3kcal程度と言われています。従って、今回の測定では誤差率は約4%ほどであり、かなり精度が良い測定が行えたのではないかと思います。今後、ランプなどの燃焼部分を改良することで色々な物質のカロリーをある程度の精度で測定できるようになるのではないでしょうか。今回は予算、時間的制約から液状燃料だけの測定でしたが、乾燥したものであればそれを直接燃焼させての測定も可能でしょう。

実験にかかった費用

・アルミカップ 100円程度
・タコ糸 100円程度
・金属トレー 500円程度
・ガラス瓶 100円程度
・アルミホイル 100円程度
・温度計 3,000円程度
・エタノール 1,500円程度
・灯油 50円程度
・キッチンスケール 3,000円程度

画像はすべてレイユール氏提供

レイユール
薬理凶室怪人。専門は有機合成化学。薬理凶室では化学分野を担当している。

薬理凶室のYouTubeチャンネルでは、化学実験をコミカルな動画で紹介する「ガチ実験シリーズ」を不定期更新している。

くられ with 薬理凶室

くられ with 薬理凶室

くられ。自称、不良科学者。作家/科学監修、大学講師なども兼任する。近著では「アリエナクナイ科学ノ教科書」で2018年第49回 SF大会にて星雲賞ノンフィクション部門を受賞(続きの連載をDiscoveryチャンネル公式WEBにて掲載、好評を博し終了)。週刊少年ジャンプで連載中の人気漫画『Dr.STONE』の科学監修を務める。人気Youtuber動画チーム「〜の主役は我々だ!」とのコラボによる「科学はすべてを解決する」はコミック化されるなど好評を博している。
公式サイトはこちら

関連記事Recommend