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常になぜ?を問うことで研究も人生も着実に前へ! 理系のキャリア図鑑vol.9 株式会社ジーシー 吉満亮介さん(歯科材料開発)

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世の中には私たちが想像している以上に多様な“理系のシゴト”があり、さまざまな人材が活躍しています。理系のキャリア図鑑は、理系の道で活躍する先輩たちに今の仕事に就くまでや、現在の仕事内容、今後のキャリアについてのお話を伺いながら、理系の仕事の幅広さを伝え、就職のヒントを探っていくシリーズです。

vol.9でお邪魔したのは、歯科医療の総合メーカーとして業界のリーディングカンパニーである、株式会社ジーシー。ここは材料分野から機械分野まで、幅広く理系の人材が活躍している会社です。その中で、今回は歯に充填するセメントの研究開発に携わる吉満亮介さん(入社7年目)にお話を伺いました。

吉満さんは、高専で電気・機械を学んだ後、大学3年次に生物専攻として編入。修士課程では生物機能工学専攻としてiPS細胞を使った研究をしていたそうです。機械と生物、両方分かるなんてスゴイ。いったいどんな研究をしているのでしょうか?

株式会社ジーシー
1921年創業、100年近い歴史を持つ歯科医療総合メーカー。歯科医療に使うセメントの研究から出発し、現在は歯科材料、歯科用の機能包材、歯科用機械、インプラントシステムなど、歯科医療に必要なすべての材料や機器・機械の開発・製造・販売を一貫して手がけ、国内シェアナンバーワンを誇る。「健康長寿世界に貢献する世界一の歯科企業への挑戦」というビジョンのもと、社員すべてが「なかま」であり、全員で会社を動かしていくという意識を持ち、業界を牽引している。
http://www.gcdental.co.jp

 

電気・機械を学んだ高専から、大学に編入し生物学を専攻

 
私は中学卒業後、高専に通っており、元々は機械や電気を学んでいました。将来は人のためになるもの、例えば医療機器に携わりたいという想いを持っていた気がします。高専の4年になり進路を考える段階になったとき、就職か進学かの道がありましたが、考えた末に進学の道を選びました。機械にこだわらずさらに可能性を探ってみようという気持ちがあったため、大学で医療に関連するものとして生物を学ぶ決意を固め、大学編入を目指すことにしました。私のように電気や機械から180度専攻を変える人はそう多くはないと思いますが、それでも周囲には同じように分野を変えて進学する生徒もいました。生物機能工学科への大学編入を果たしますが、化学や生物はほとんどやってこなかった分野だったので、大学に入った時点ではだいぶ苦労しました。周りの友人は生物や化学の基礎をしっかり学んでいます。追いつくためにかなり努力が必要でしたが、周囲の友人に助けてもらうこともでき、充実していました。大学では細胞生物学について学び、研究室ではiPS細胞を扱っていました。iPS細胞は、再生医療や創薬の分野での活用が期待できるものだったので、扱うことができたのは良かったです。これも一つの出会いでしょうね。

就職活動は初め、医療、医薬品や食品業界を志望していました。正直に言うと、歯科の分野はノーマークだったのですが、合同説明会でジーシーに出会って興味を持ちました。医療、食品について色々調べているうちに、口の健康はとても大事なんだなというのがわかってきていたんです。口が健康であることは、噛むことはもちろん、言葉を発すること、外見、それに全身の健康にも大きく影響します。歯科医療のメーカーで口の健康に関わる研究をするのは社会的に貢献度も高く、非常にやりがいがありそうだなと思いました。それに、面接や説明会で会社に訪問した際、社員の方々に気さくに話しかけてもらえて、会社の雰囲気の良さを感じられたことも決め手になったと思います。

 

虫歯を削った場所を埋めるグラスアイオノマーセメントの研究開発に従事

 
私が入社以来担当しているのは虫歯を削ったところに充填する、充填修復用グラスアイオノマーセメントです。グラスアイオノマーセメントは、ガラスの粉とポリアクリル酸の水溶液を練り、酸塩基反応によって固めるという仕組みのものです。ジーシーでは1977年に合着用として開発されたのを皮切りに、現在は充填、裏層、シーラント、ベース、矯正など用途別に多くの材料が製品化されています。

グラスアイオノマーセメントはさまざまな製品が開発され、また改良されて現在に至りますが、圧縮強度などの機械的強度だけでなく、口腔内の酸で溶けにくくするための耐酸性の向上や、見た目の美しさ(審美性、充填した周囲の歯と同様の色調、透明感がある)など、改良を続けていくポイントは複数あります。また国内向けと海外向けでは仕様が異なり、国内向けは人が手で練って使うタイプが主流ですが、海外ではカプセル状になっていて機械で練和し、充填するものが普及しているという違いがあります。歯科治療にもお土地柄が反映されているわけです。とはいえ、歯科医師が手早く操作できること、硬化までの時間を可能な限り短くするなど、使い勝手の良さに対するニーズは世界共通。治療者と患者さんを第一に考え改良を進めています。

入社時から数年は先輩社員のもとで歯科の知識や製品について、実験に用いる装置の使い方など、基本的なことを学びながら研究、製品開発を進め、3、4年目くらいから自分が主となってテーマを持って製品開発を担当するようになりました。その頃携わったのがBioUnionフィラーを配合した製品です。

現在、超高齢社会を迎え、8020運動の成果により高齢者の残存歯割合は高まる一方、根面う蝕(歯の根元の虫歯)の患者が増加しています。根面はコラーゲン等の有機質の多い部位であるため弱い酸でもすぐに脱灰されます(歯からカルシウム等のミネラルが流出すること)。脱灰してコラーゲン層が露出すると、プラークから作られるコラゲナーゼによりコラーゲン層が分解されていきます。したがって、根面はう蝕リスクの非常に高い部位であり、根面う蝕に適した材料の開発が必要となります。

私たちは根面う蝕にはどのようなイオンが必要なのか探索し、亜鉛イオン、カルシウムイオン、フッ化物イオンに着目しました。亜鉛イオンは菌の酸生成、生育・付着を抑制し、さらにコラゲナーゼによるコラーゲン層分解を抑制すると言われています。また、フッ化物イオン、カルシウムイオンは脱灰抑制、再石灰化促進効果が知られており、亜鉛イオンを組み合わせることでその効果の向上が期待されます。そこで、亜鉛イオン、カルシウムイオン、フッ化物イオンを放出するBioUnionフィラーを開発しました。さらに、BioUnionフィラーを配合した2つの製品 (イオン放出型2液性歯面塗布材ケアダインシールド、イオン放出型充填材料ケアダインレストア)を開発しました。このように、イオンの働きについて着目し、可能性を広げたと自負しています。

 

ユーザーの反応を近くで感じながら、より求められるものを目指す

 
製品は世に出せばそれで終わりということはありません。材料の有用性について学会などを通じて情報を発信し、大勢の先生方と話をしたり、使用感を実際に聞いて改良点を見つけて次の製品開発へつなげていきます。大事にしているのは、現場における使い勝手や、今現在何に困っているのかをしっかり見極めることです。BioUnionフィラーの開発では、ただ単純にう蝕を削って充填し、修復するだけでは足りないのでは、という気づきが基になりました。それらをいかに知って意識できるかどうかだと思います。

当社の良いところは研究者がユーザーと近いことです。先生や衛生士、歯科医療に携わる人たちと実際にお会いして話をする機会は多く、得られるものは大きいです。感想を聞くだけではなく製品を触ってもらい、評価していただきますが、研究開発者が直にそういうことができるのはなかなか珍しいことだと思いますし、このメリットを最大限に活かして、製品の開発や改良につなげています。

当面の目標は、イオン効果、製品の有用性を更に実証していくことです。亜鉛、フッ化物、カルシウムイオンが良い働きをすることはわかっています。でも今以上に確実性や効果を謳えるように実証研究を進めていき、さらに多くの人に良さを知っていただけたらと思っています。その成果をもとに、さらに進化した材料を作り出したいですね。口の健康は体全体の健康につながると言われています。また、口腔内環境は体調など様々な要因に影響を受けていて状態も大きく変化します。そういう意味では歯科の分野だけでなくもっと広い視野を持つことで、より進化した歯科材料の着想が生まれるかもしれません。世の中により役立つものを目指し、いろんな可能性を探して研究を続けていきたいと思います。

 

就活生へのメッセージ

 
私は一つのことにとらわれないタイプで、この研究室だからこうした仕事をしよう、という風に偏った考え方はしていませんでした。だからこそジーシーという会社にも出会えたと思います。学んでいる分野に縛られて自分の可能性を狭めないことが大切ではないでしょうか。ジーシーに入社する人のほとんどが歯科以外を学んできた人です。私は仕事を進めていき、細菌を扱い始め、学生時代に学んだことが役立つこともありました。逆に化学系専攻だった研究員が入社後から細菌を扱うこともあります。このように、ジーシーには一つのことにとらわれず、様々な面から柔軟に見れる人、前向きな気持ちを持てる人が多い会社であるように思います。また、みんな、歯科の領域で人々の健康に貢献できることを誇りに思っています。

それと、私はとても苦手ですが、英語は勉強できていたほうが良いです。大学の時と同様に英語論文は多く読みます。分野は異なっても英語論文を読みなれていることは大事です。また、海外の先生と話すことも多々あるのでとても役に立ちますよ。

もし、「やりがいのある仕事に出会うためにも大切なことは」と聞かれてお答えするとしたら、常に「何故」を繰り返すようにしているということです。学生時代は「何故その大学に行きたいのか」「その専攻に進むのか」「何故その研究をしたいのか」と、常に繰り返し問いながら進む方向を選んできました。これは生き方だけではなく、研究開発にも役立つ思考法です。そうすることで目的を見失うことなく進むことが出来ます。また、学生時代にはいろんな人と話すことも大事にするといいと思います。同期や先輩、先生など、人と話すことで自分では気づけないことが見えてきます。自分の可能性を広げるために、多くの人と接して話しながら未来を探ってみてください。

 

編集部より

 
誰しも歯科には一度ならずお世話になったことがあるはずです。社名を聞いただけではピンとこないかもしれませんが、歯科医療で使われる材料や各種機器開発を手がけるジーシーは、実は私たちにとってとても身近な存在といえます。しかも、セメントなどの歯科材料、インプラントのシステム、治療時に私たちが座るユニットや器具等の開発から製造まで手がけていて、一口に理系といっても非常に間口が広く、多様な人材が活躍できるフィールドがありそうです。研究職以外にも品質保証、薬事、知財、工場等、理系の知識を活かして活躍できる部署が多いことにも注目したいです。

「何故」を繰り返すことが大切という吉満さん。高専から大学に進むことを決めたことが自分の中では一番大きな転機だったと言います。「何をしたいか」は大切ですが、「何のために」を考えることも視野を広げるにはとても大切なことだと思わされます。常に「何故」と問い続けていく中で、「人のために」と考えたことが吉満さんの可能性を広げたのだなと、取材を通して感じることができました。そして、新しい分野を学ぶ際の苦労を乗り越えることができたのも、「何故自分がこの道を選んだのか」が明確だったからなのでしょう。常に本当の理由を思い起こすことで困難に打ち克ち、自信を持って新たな可能性にチャレンジしていく吉満さんのはたらく姿勢はとても素敵でした。

著者プロフィール:

リケラボ編集部

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