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テレビドラマに憧れて“民間の科捜研”へ! 理系のキャリア図鑑Vol.8 法科学鑑定研究所 清野優花さん(DNA型鑑定)

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テレビドラマでもよくテーマになる「法科学」。DNAや指紋、筆跡、画像などを分析し、科学の力で犯人を突き止める科学捜査に、憧れを抱いたことがある人も多いのではないでしょうか。

今回の「理系のキャリア図鑑」では、そんな「法科学」の世界で活躍する方にお話を伺ってきました!

訪れたのは「法科学鑑定研究所」。科学鑑定を行う国内有数の民間鑑定機関で“民間の科捜研”とも呼ばれています。お話を聞かせてくださったのは、DNA型鑑定を担当する清野(せいの)優花さん(博士・新卒入社5年目)です!

法科学鑑定研究所
DNA型鑑定、指紋鑑定、筆跡鑑定、画像解析、交通事故鑑定、火災鑑定といった科学鑑定や、成分分析などの検査分析などを行う国内有数の民間鑑定機関。主に警察が介入できない民事事案に関する鑑定を行う。科捜研等での検査結果の検証として、警察から刑事事件の鑑定を嘱託されることもあり、捜査の確実性をより高めるための協力もしている。
http://alfs-inc.com/

法科学鑑定研究所の山崎所長いわく、「DNAで見たところ、この子はうちの会社でいちばんIQが高いんです」とのこと。DNAでそんなことも分かるとは…!
清野さんのお仕事内容やDNA型鑑定の現在(いま)について、いろいろとお話を聞きたいと思います。

 

ドラマで目にする「DNA型鑑定」。その実態は?

 
──DNA型鑑定が必要とされるケースは様々あると思いますが、たとえば「法科学鑑定研究所」では、どんな依頼を受けることが多いのでしょうか?

当社では民事事案に関する鑑定を主としているので、相続関係を明らかにするための親子鑑定や兄弟姉妹鑑定をご依頼いただくことが多いです。たとえば、兄弟姉妹の中でご自身だけが何らかの理由により生みの親と別戸籍になってしまっているため、「戸籍上は親子ではないけれど、実親とは血縁関係がある」ということを証明するために兄弟姉妹鑑定をするケースなどがあります。

 
──依頼を受けてから、どのように鑑定が進んでいくのですか?

基本的にはご依頼者さまからお電話などで相談を受ける段階から、検査をして結果をご報告するまで一貫して担当します。「DNA型鑑定」という言葉自体は聞いたことがあっても、具体的に何があればいいのかまではわからないという方が多いため、まずは「この方にはDNAの採取にご協力いただけそうですか?」「こういうものは集められますか?」など、こちらから手段をご提案するところから始まります。「親子鑑定をしたいけれど対象となる方がすでに亡くなっている」「本人に知られずに鑑定をしたい」など、状況は本当に様々なので、お話を聞きながら最適な方法をスムーズに判断するのは大変なこともありますが、「ご依頼者さまが抱えるモヤモヤをなるべく早く、確実に晴らせたら」と思いながら日々ご相談を受けています。

 
──たとえば、DNAを抽出できる試料にはどんなものがあるのでしょうか?

当社で推奨しているのは、口腔内の細胞です。綿棒で頬の内側をこするようにして細胞を採取します。本人に知られずに証拠を集めたいといった場合には、ガムや歯ブラシ、毛髪、ティッシュ、口にくわえたストローやタバコなど……きちんと抽出できない可能性もありますが、身のまわりの様々なものからDNAを採取できそうなものをお持ちいただきます。対象の方が亡くなられている場合は、ご遺髪や爪、あとは遺品の中のクシやひげ剃りなどをお持ちいただくこともあります。ご病気の経験があり、病院に病理組織などが保管されていた場合は、依頼者や対象の方の親族の方等が病院側に依頼を行い、その方々が提出を受けた病理試料を持ち込むこともあります。

 
──「きちんと抽出できない可能性もある」とのことですが、保存状態や時間の経過などによって成功の確率も変わってくるのですか?

DNAは生ものと同じなので、暑い時期に常温で置かれていたり、濡れたままの状態になっていたりすると、腐敗が進んでいて抽出できないといったケースがあります。できれば乾燥した状態で、あまり温度変化が激しくない冷暗所で保管されていたもののほうが出やすいというのは確かです。でも、こればっかりは本当に人や環境によってそれぞれで……1年前に見つけて保管してあったものを検査してみたらキレイに抽出できた、ということもありますし、反対に昨日とった試料から何も出なかった、ということもあります。ご依頼者さまとしてもその基準は気になるところかとは思うのですが、私たちも明確な基準はお伝えできないというのが正直なところです。

 
──テレビドラマなどのフィクションの世界ではものすごくわずかな痕跡からもばっちり鑑定結果が出てくるように描かれることが多いですが、現実ではなかなか抽出が難しいケースが多いのですね。

そうなんです。それは実際に私が法科学の世界に入ってから感じたことのひとつでもあって……ドラマでは1時間のうちに犯人を捕まえなければならないので、スムーズに証拠が出ますよね。実際は、一発できれいにDNAが出るなんて本当にまれなことだなと思います。それでもしっかり気を抜かずに採取して検査をしてみると、きれいにDNAが出ることもあって。そのときは気持ちが良いというか、やっぱりうれしいですね。テレビほど簡単にはいかないかもしれませんが、それでもご依頼者さまが知りたいことを知れるよう、できる限り確実に結果を出せるように試料の集め方などを提案させていただいています。

それと、ドラマではよく白骨遺体から証拠を集めるシーンがあるので、「骨からDNA型鑑定ができる」というイメージを持つ方も多くいらっしゃいます。でも、荼毘に付される(火葬される)とDNAも燃えてしまうため、事件や事故でお亡くなりになった方以外のお骨からDNAを抽出できるのは本当にまれなんです。

 
──ちなみに、DNAで個人識別ができるのはどうしてなのですか?

個人識別や親子鑑定には、「STR(Short Tandem Repeat)法」という鑑定方法を活用しています。STR法は、現状では世界で一番信頼されていて、証拠資料としても採用される鑑定方法です。DNAの中には、ある塩基配列が繰り返し並んでいる領域が存在しており、その反復数が一人ひとり異なることを利用して個人識別を行います。また、反復数は生物学的母親と生物学的父親から受け継ぐため、親子関係を調べることもできるのです。

 
──実際に、試料からDNAを抽出して鑑定するとき、清野さんはどんな作業をされるのですか?

核酸増幅装置やシーケンサーなどの機械を活用する場面が多いので、私自身が手を動かす作業としては、ピンセットとハサミを使って試料を採取したり、ピペットで試薬や精製したDNAをとったり、機械にセットすることがメインです。気をつけなければいけないことは、絶対に自分のDNAが混入しないようにすること。また、サンプルの取り違いも絶対にあってはなりません。万が一コンタミや間違いがあれば誰かの人生を変えかねないので、常に集中して作業するようにしています。

 

DNAで能力がわかる?様々な活用法も開発

 
──冒頭で山崎所長が「DNAでIQの高さもわかる」とおっしゃっていたのを聞いて、「DNAでそんなこともわかってしまうのか」と驚きました。

DNAは個人識別のほかにも、IQの高さだったり、能力だったり、体質だったり、様々なことを知る手がかりになります。当社のパートナー企業の「DNA JAPAN」では、能力や体質を調べるためのDNA型鑑定プランも提供していて、教育やダイエット、美肌対策などのために検査を受ける方もいらっしゃいます。

もちろん、能力の伸びには環境要因も影響しますが、たとえば子どものころにDNA型鑑定によって「得意」「不得意」がある程度わかっていると、「得意を伸ばす」のか「苦手を克服するのか」など、能力の伸ばし方の指針にすることもできます。こういった鑑定プランの開発も、普段のラボの業務と並行して私たちで行っています。ちなみに、「美肌対策遺伝子検査」のキットは私が開発に携わりました。今後も、DNA型鑑定の様々な活用法を考えて商品化できればと思っています。

 

科学捜査への憧れの末に出会った“民間の科捜研”

 
──清野さんが法科学の道へ進むことになったきっかけを教えてください。

きっかけは、テレビドラマです。子どものころから科学を扱うテレビドラマが好きでよく見ていて、警察や法科学の世界に興味を持ちました。初めは「警察官になりたい」と思い柔道部に入って黒帯をとったりもしたのですが、身長が足りなくて……。ドラマの影響もあって理科がもともと大好きだったのもあり、理系の道へ進んで、科学捜査に携わる仕事を目指すようになりました。

科学捜査の中でも、ほんの少しの試料からでも手がかりを見つけて犯人にたどり着くDNA型鑑定に特に興味を持っていたので、大学ではDNAの勉強をしようと理学部の生物分子科学科に進みました。それから大学院までは、真菌(カビ)を対象としたDNAの研究をして、抗生物質への応用方法などを調べていました。

 
──清野さんご自身もテレビドラマへの憧れをきっかけに法科学へ興味を持ったのですね。

そうなんです。もともとは警察の科捜研(科学捜査研究所)を志望して就職活動をしたのですが、なかなかうまくいかなくて。それで、何かほかに科学捜査に携われる場所がないか調べたときに、真っ先に見つけたのが“民間の科捜研”とも呼ばれる当社でした。面接で初めてここに来たときは、ラボで先輩が実際に検査をされている様子も見えたりして、「すごいことをやっているな、ドラマで見た世界だ」と感じました。

 
──今年で入社5年目とのことですが、法科学の世界で今後さらにやってみたいことはありますか?

今後もDNAがメインの領域にはなっていくとは思うのですが、ほかにも少しずつ領域を広げていきたいです。たとえば、薬物の検査などにももっと詳しくなって、化学の領域にも広げていけたらと思っています。

知識や技術の幅が広がれば、DNA以外の捜査の行程をより意識できるようになり、「このあとの◯◯の検査に影響がないよう、DNAのとり方に気をつけよう」など、鑑定をスムーズで確実に進めるための力にもなるはずです。

※清野さんの後ろのPCモニターに映し出されているのは、指紋鑑定のサンプル映像。異なる2つの指紋を照らし合わせながら、一致箇所をもとに同一人物のものであるかを判断していく。

 
──最後に、法科学の世界に憧れている人たちに向けて、何かアドバイスをお願いします!

私自身、日ごろから心がけているのは「先入観にとらわれない」ことです。ご依頼者さまの状況も、結果も、本当に様々で、ときには思いもよらないような事実が判明することもあります。

ご説明した個人鑑定以外に、今後は産業分野でもDNA型鑑定を活用いただく場面が増えてくると考えられます。

たとえば、「食品に血のようなものが混じっていたから調べて欲しい」というご依頼があった場合、「製造ライン上でケガをした従業員の血が混入してしまった」「工場の誰かが故意に混入させた」「消費者がクレームをつけるために混入させた」「そもそも人間の血ではなく、原料の動物の血だった」など、様々な可能性が考えられます。可能性を見落としてしまうと、サンプルの集め方など適切な判断ができず遠回りしてしまう恐れもあるため、「先入観にとらわれない」ようにすることはとても大切だと思います。

 

〈取材を終えて〉

テレビドラマの題材になることも多く、文理問わずたくさんの人の憧れの的になっている法科学の世界。フィクションの世界ではスピーディーに展開が進むため、少ない試料からどんどん証拠が出てくるイメージを抱きがち。ですが、やはり少ない試料から適切な結果を導くことは簡単ではなく、熟練した技術が必要ということですね。

また、依頼者の状況や明らかにしたいことをきちんと理解しながら、あらゆる可能性を想定して適切な方法を探るためには、想像力や経験の引き出しがとても大切だということも分かりました。

ちなみに「法科学鑑定研究所」では、「多くの人に、できるだけ正しく“科学捜査”の世界を知ってほしい」という思いから、テレビドラマの監修なども行っているそうです。

現場で何が起きていたのか?

正しく知るために、科学の力を活用する。

「科学鑑定」は、理系出身ならではのスキルで世の中に貢献できるやりがいのある仕事の一つですね!

技術の進歩とともに今後益々発展していきそうで、目が離せません!  

著者プロフィール:

リケラボ編集部

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