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研究特化型クラウドファンディングサイト「academist」。代表柴藤さんに聞く、学術系クラファンの実際

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ここ数年で世の中に定着しつつあるクラウドファンディング。やりたいことを発信し、共感を得られると賛同者から支援を受け取れる新しい資金獲得の仕組みです。

academistは2014年に立ち上げられた「日本初、学術系プロジェクトに特化したクラウドファンディングサイト。」リケラボ読者の中にも気になっている人は多いのでは?

資金の問題で断念している研究テーマを埋もれさせてしまうのはもったいない!

ということで、一つでも多くの研究テーマが日の目を見るといいなとの願いから、同クラウドファンディングサイトを運営するアカデミスト株式会社の創立者 柴藤亮介さんに、設立の背景や運営者としての想い、どんなプロジェクトが成功しやすいのかなどを聞いてきました!

 

日本初の学術系クラウドファンディングサイト「academist」とは

──2014年に日本初の学術系クラウドファンディングサイトとして誕生したacademistですが、改めて仕組みについて教えてください。

応募する研究者を「チャレンジャー」、資金集めに挑戦する研究テーマを「プロジェクト」と位置づけ、クラウドファンディングで「サポーター」および「研究資金」を募る仕組みです。

チャレンジャーからの応募は我々が審査させていただいたうえで、クラウドファンディングサイト「academist」に掲載し、サポーターを募ります。発信主体となるのはあくまで研究者自身ですが、発信内容や構成などについては、魅力的な研究が一人でも多くの人に伝わるよう運営側もサポートを行います。

──設立から2021年4月までで、合計1億6000万円以上の資金を集められたとか。

年間で50〜60本のプロジェクトを掲載し、これまで200本ほどのプロジェクトが成立しています。プロジェクトの達成率は85%ほどです。集まる研究費は1プロジェクトあたり平均100万円ほど。最大だと650万円というものがありました。

──一般的なクラファンでは、プロジェクトの目標金額に達しないと、資金を受け取れないと聞きますがacademistでもそうなんですか?

スポット支援型のプロジェクトですとそうですね。academistでは、「スポット支援型」と「月額支援型」両方のプロジェクトを掲載しています。

・スポット支援型
チャレンジャーが特定の目的に対して目標金額と募集期限を設定し、研究費を募る。設定した期限内に支援額が目標金額に到達すればクラウドファンディング成功。チャレンジャーは研究費を受け取れる。目標金額に到達しなかった場合、サポーターの支援予約は取り消される(All or Nothing型)。
・月額支援型
チャレンジャーが自身の研究活動を継続的に発信することで、研究費/生活費を募る。月額支援型では目標金額は設定せず、毎月研究費/生活費を受け取ることができる(All In型)。

──単発ではなく継続的なサポートを受けられるタイプもあるのはいいですね!サポーターには何らかの御礼が必要なのでしょうか。

「購入型」と言われるプロジェクトはそうですね。サポーターは研究者に「寄付」するのではなく、研究者が提示したリターンを「購入」する形になります。リターンの内容は様々ですね。研究報告レポートとかオンラインセミナーなどを体験できるものとかが多いです。一方「寄付型」ではサポーターは文字通り研究者に「寄付」をすることになりますので、サポーターは税制優遇措置を受けることができます。また、研究者側のリターンの義務はありません。ただ、academistでは寄付型でもリターンを設けることが一般的です。

さらに「academist Grant」というサービスでは、クラウドファンディング+企業からの支援、あるいは企業の課題解決のための研究を行うという形で企業から資金を得ることも可能です。

写真提供:アカデミスト株式会社

──サポーター獲得のために、運営としてされていることはありますか?

先にお話ししたプロジェクト内容の見せ方のサポートのほか、academist公式SNSやメールマガジンでの周知を行っています。また、プロジェクト期間中には定期的にミーティングの機会を設け、チャレンジャーの方々と一緒に宣伝戦略を練っています。

──応募プロジェクトの採択率はどれくらいなのでしょうか? 

応募プロジェクトは8割がた掲載となります。落とすことを審査の目的にしていないので。プロジェクトは、ひとつひとつ応募者と一緒にコンテンツを作りこんで、魅力を最大化することにこだわっています。特に、一般の人に伝わることを重視していて、出来る限り最適な表現を検討します。

──それが85%と高い成功率の理由のひとつになっているのですね。

プロジェクトページのコンテンツの質ももちろん重要ですが、それ以上に大切なのは、やはり当事者である研究者の熱意です。チャレンジャーとして名乗りを上げるくらいの方々なので、友人知人に連絡したりSNSを通じて毎日のように告知したり、自分自身で発信しようという意欲が高いです。チャレンジャーと運営、お互いの努力が成功率を高めているのだと思います。

 

academistを通じて研究者や研究の魅力をより多くの人に伝えたい

──academistの原点は柴藤さんが大学院生時代に開催していた、異分野交流会だとか。

私は理論物理学の研究者志望だったんですが、一歩自分の専門を離れると他分野のことは詳しく知らないし、同じ建物にいても別分野の学生と話す機会もありませんでした。でも人が何を学んでいるのかとても興味があったんです。そこで思いついたのが学内での異分野交流会の開催です。「研究の『美』」とか「研究における『力』とは?」などといったテーマを設け、それぞれが専門分野の発表をしたり、お酒を飲みながらディスカッションをしたり。学会よりもざっくばらんに語れる場をつくりました。いろんな人と交流し、自分が知らない世界のことを知るのが楽しくて、それが一番のモチベーションでしたね。

──そこからacademistを設立するに至った理由は。

交流会は次第に学外にも広がり、幅広い人が参加してくれたんですが、やはりオフラインで閉じた世界で行っていたので限界があります。より多くの人に研究の魅力を知ってもらう方法を考えた結果、自分が研究者になるのではなく、アカデミア全体を盛り上げる活動をしようと。そうした活動の方が適性もあると思いました。

写真提供:アカデミスト株式会社

──研究者になることではなく、応援することが目標に?

というよりは、研究者の魅力をどうすればより多くの方に伝えられるかというストーリーを考えることが好きな自分に気づいたんです。それが結果的にクラウドファンディングサイトを通じた応援という形になりました。会社を立ち上げたときはacademistを事業として成立させ、伸ばして、研究業界で価値を発揮する存在になることだけを考えていました。ただ応援することだけがモチベーションだと、ここまで続いていないと思います。

──クラウドファンディングは最初からあったアイデアですか?

最初は研究の魅力を伝えるために、研究者自身が語る動画を作っていこうと考えたんです。でも研究者も忙しいし、動画もよほど面白くないと見てもらえませんよね。そこで、人が動画に興味を持てて、研究者も動画で発信したくなるような仕組みってなんだろう?と考えてたどり着いたのが、クラウドファンディングだったんです。いいプレゼンをすればするほど人と研究費が集まり、広く研究者のことや研究内容を知ってもらう循環ができていくはずだ。国の資金の選択と集中が進む今、それとは別のところ、つまり民間からの資金を得る仕組みを研究者に提供する全く新しいサービスがあったらいいと思い、立ち上げました。

写真提供:アカデミスト株式会社

──初のプロジェクトである深海生物のテヅルモヅルの研究はかなり話題になりましたよね。

日本初の学術系のクラウドファンディングサイトの誕生ということで注目していただき、インフルエンサーにも随分拡散していただきました。でもその後は苦労の連続で、新しい仕組みなので応募に躊躇する人が多く、研究者の所属先の考え方もさまざまで、議論が起こりました。そんな中でこつこつ研究者に声をかけ、大学で説明会を開くといった地道な活動が2、3年ほど続きましたね。7年経って社会的にもクラウドファンディングが定着してきて、研究費獲得の一つの方法だという認識が広がり、我々と連携してくれる大学も増えてきています。

 

プロジェクトの成否を分けるのは研究のビジョン

──academistに応募される研究者の特徴というか何か傾向はありますか?

academistのチャレンジャーたちは単に研究費が必要ということだけではなく、それと同じくらい自分の研究を人に知ってもらいたいという思いが強い方たちだと思います。その分、外部に向けての発信に関心が高く、卓越している人が多い印象です。任期付き研究者が多いですが、大学院生も2-3割を占めています。

──どういう基準で審査されているのですか?

それはズバリ、ビジョナリーな研究です。

──ビジョナリー…つまり展望があるものですか。

クラウドファンディングはファンを募る場です。「こういうことをやっています」「誰もやっていないことにチャレンジしています」という事実を伝えるだけでは、出資する人は少ないと思います。多くの人に応援しようと思ってもらうには、研究者自身が明確な研究ビジョンを持ち、そのためにこのようなことを目指している、ということを語る必要があります。

──ビジョナリーな研究について具体例を教えていただけますか。

最近の例ですと、カラスの研究ですね。モーションキャプチャ―技術を用いてカラスの知能を明らかにするというプロジェクトなのですが、それだけだと「マニアックな研究だな」という印象ですよね。でもその一個上のレイヤーに、「そもそも知能とは何か?それを明らかにしたい」という、多くの人にとって興味深いテーマ、ビジョンがある。それが読者の方に伝わっていって、賛同が集まるという流れですね。

もし研究者自身でうまく表現できていなくても、我々とディスカッションしていくなかで言語化していきます。

──academistが介在することで、一般の人にわかりやすく紹介されているのですね。

ユニークな研究はユニークな研究者から生まれます。そういう人の認知度が上がっていくと、研究業界全体の良いイメージができて、資金や人が回る世界になっていくと考えています。人文系の研究も含めて、一般の方に知られていない、でもユニークでビジョンのある研究をどんどん紹介していきたいです。

 

科研費に落ちたテーマもクラファンでよみがえる!

──これまでで特に印象に残っているプロジェクトについて教えてください。

うーん…(笑)どれも思い入れがあり選ぶのは難しいですが、強いて言えば「カミナリ雲からの謎のガンマ線ビームを追え」という研究ですね。

写真提供:アカデミスト株式会社

これは前例がないという理由で一度科研費の申請に落ちてしまったテーマでした。academistに掲載したところ160万円集まり、その資金で予備実験を行い、科研費にリトライしたところ採択されました。この一連の研究成果をまとめた論文は『Nature』に掲載され、テレビでもプロジェクトが紹介されました。今も研究が続いています。クラウドファンディングで0を1にしたことで、さらに10へと発展させることができたのは私としてもとても嬉しいです。

──すごくワクワクするエピソードですね!

新しい市民科学の誕生だと思いました。チャレンジャーの榎戸さんは他の人がやることはやらない、という芯のある方で、そのマインドセットが結果につながったクラウドファンディングの好例だと思います。

我々を含め専門外の人が、研究テーマの学術的な価値を判断することは難しいです。でもその人が持つ研究哲学や持っている熱量は伝わるし、それが賛同につながっていきます。

 

研究資金の多様性を創り、研究業界を盛り上げる

──今後のacademistの展望について教えてください。

全国には研究者が30万人いるといわれています。対して、これまで実施したプロジェクトは200弱。眠っている魅力的なテーマがまだまだたくさんあるはずですよね。それらをできる限り紹介して、研究者をサポートする人を世の中に増やしたい。個人のサポーターだけでなく、企業と連携したacademist Grantも拡大し、個人と企業、この2本の軸で民間からアカデミアへのお金の流れを増やしていきたいです。

アカデミアの研究環境の向上をはかるには、国の政策に訴えることはもちろん必要ですが、私自身は民間発で研究者が市民に支えられて研究できる研究機関のようなものを形にできるといいなと考えています。資金の多様性が進むことで、研究者が国だけではなく企業やサポーターなど、いろんな方向に目を向けて研究していくようになればいいと思っています。そうすれば、思ってもみないところと縁がつながって研究を加速することが出来たり、アイデアがより形になりやすくなっていきますよね。

──リケラボ読者には研究者を目指している大学生、修士課程在学生も少なくないのですが、その人たちに向けてもメッセージをお願いします。

ラボにいるとラボ内のことが常識になります。でもそこを一歩出ると、まったく違う考えの人に出会えます。非日常に踏み出すことを習慣化し、視野を広くして動くことを心がける…そうするとキャリアを狭めずに研究活動を広げ、豊かな研究者人生を送ることが可能になると思います。ぜひ、そうしたことにチャレンジして欲しいと思います。

写真提供:アカデミスト株式会社

アカデミスト株式会社 代表取締役CEO
柴藤 亮介(しばとう りょうすけ)

首都大学東京大学院理工学研究科物理学専攻で、理論物理学を専攻。大学院生時代に学内で全8回の異分野交流会を開催し、学外にも反響を呼ぶ。2013年株式会社エデュケーショナル・デザイン(現アカデミスト株式会社)を設立し、2014年に学術系クラウドファンディングサイトacademistをスタート。

著者プロフィール:

リケラボ編集部

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