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多くの分野でDX・デジタル人材の需要が急速に高まっています。ライフサイエンス研究開発の現場でも、リスキリングを通じた“データ駆動型”へのシフトが不可欠となる一方、AI時代に適したリスキリングプログラムはまだ確立されておらず、多くの企業が課題に直面しています。
こうした背景を踏まえ、パーソルテンプスタッフ研究開発事業本部(Chall-edge/チャレッジ)は、DX人材の育成や組織づくりに深い知見を持つ3名のスピーカーを迎え、DX導入の先行事例を紹介するセミナーを実施(2025年2月12日)。それぞれの立場からの講演の後、同社研究開発事業本部の田村本部長を加えた4名によるパネルディスカッションでは、バイオ産業が直面する人材育成課題や今後の展望について議論しました。
<第一講演>
スキル可視化が促進するDX人材育成〜リスキリングの先進事例より
山藤 昌志氏(株式会社三菱総合研究所 政策・経済センター 首席研究員 研究提言チーフ/人材分野)
<略歴>
1994年三菱総合研究所に入所。1997年から外務省に出向し、1999年から同社に帰任。人材、労働、社会保障分野を中心とする政策提言、労働需給や人口動態、健康寿命等に関するシミュレーション、各種統計手法を活用したデータ解析が専門分野。
◆タスク分解と小刻みなリスキリングが創造的人材を増やす
2020年から35年までの15年間において、労働市場に入ってくる人よりも退出する人の方が多くなり、2020年の三菱総合研究所のデータによる試算では、需給バランスで約450万人規模の人手不足、さらに各種の前提条件に基づくと、2035年時点での労働供給不足は190万人となる計算。さらに職種別では需要側との間に起こるミスマッチが大きく、その数は480万人にものぼるとの試算になっている。不足する190万人とミスマッチの480万人を合計すると約670万人となり、日本の所定就業者の約1割に達する数字となる。
2020年時点での日本の人材ポートフォリオは、定量的タスク領域の仕事に3/4が集中しており、創造的かつ技術や専門分野領域には人が少ない。米・英とこの差が広がってきており、人材の創造的タスク領域への移動が重要課題になってきている。そこで考えられるのが、職業をタスク分解によって可視化し、定型タスクの自動化を進める解決方法だ。また創造的な領域への人材育成については、小刻みで継続的なリスキリングを行うことによって一歩一歩、行っていく形が現実的である。タスクの自動化によってできた余力をリスキリングに回すことでデジタル人材へのキャリアシフトを果たす道筋が考えられる。
・シンガポールの事例
資金支援・キャリア支援・教育訓練の3つの柱によって多角的な支援が行われており、必要なスキルを可視化し、スキルファーストで学ぶ側のモチベーションを上げている。
・日本の製薬会社の事例
DXを先進的に進めている企業では、ビジネスアーキテクトとデータサイエンティストを重要視し、DX戦略に沿った形で業務を定義して人材育成のプログラムを立案している。スタッフから経営者に至るまで、さまざまなロール、さまざまな職責に対応したプログラムを立案し、体系だった形でデジタル人材育成に向けたリスキリングを行っている。
<第二講演>
AI革命におけるタレンティズムと組織実践
先崎 心智氏(日本IBM株式会社 コンサルティング事業本部 理事・パートナー ヘルスケア&ライフサイエンスリーダー)
<略歴>
日本IBMヘルスケア&ライフサイエンス事業の責任者として、製薬企業や医療機器メーカー向けにバリューチェーン横断型のDX推進支援を行うコンサルティングサービスや、産官学医連携によるメディカルAI開発、表情と音声による認知機能推定AIの開発と社会実装、データとAIを活用したがん治療や難病早期発見の研究開発、電子カルテと生成AIを組み合わせた臨床開発支援等を行う。最近は、バイオメディカルAI基盤モデルを活用した創薬支援にも取り組んでいる。
◆AI時代にますます重要となる「人」の価値
生成AIは、大きく「専有モデル」と「オープンモデル」に分けられる。専有モデルは、ChatGPTやGeminiのようにビッグテック企業が開発・提供し、ユーザ企業はクラウドサービスにアクセスして利用するもの。一方のオープンモデルは、オープンソースで公開されておりダウンロードが可能で、独自のデータと組み合わせて自社専用の基盤モデルを作ることが可能なタイプを指す。以前は、オープンモデルは専有モデルに比べて性能が劣るとされていたが、技術開発によってオープンモデル型AIと専有モデル型AIとの性能の差は急速に縮まっており、コンパクトで自社固有の基盤モデルを作れる領域特化型のオープンソースモデル派生のAIが続々と誕生しているというのが昨今のテクノロジートレンドである。IBMヘルスケア&ライフサイエンスチームはAIの黎明期から、病理画像を元にしたがん予測、患者に最適な薬剤、日常の表情や音声からの認知機能推定、電子カルテから希少疾患の患者を早期に見つけるといったさまざまなAI開発を行ってきた。また、創薬特化型の基盤モデルをオープンソースで公開している。
人材や組織については、将来さまざまな国やビジネスにおける成功の鍵は、モノやカネではなく、タレントであると言われるようになってきている。その一方でAIや基盤モデルの進化をはじめとするテクノロジーの進化は止まらない。そこで人の価値がどうなるのかに注目が集まっているが、AIは情報収集や要約、仮説の提示、既存業務の代替を行い、人は判断やAIがリーチできていない情報を含めた検証、コミュニケーションを通じて実際のアクションにつなげることなどが役割になるだろう。いかに情報の正しい判断や仮説検証を深めて新たな付加価値を作り出せるかが重要となり、AI時代だからといって人の価値が下がることはない。大切なのは、人や組織の行動変容につながる信頼感や安心感、つまり心理的安全性をどう作り出せるかである。
組織運営については、生産人口が減っていく時代にあって、タレントをいかに集められるかが鍵になる。先進技術へ継続的なチャレンジができる環境や、人と人のつながりを実感できる組織に成功例があり、こうした組織がさらに人を惹きつけていく。そのような仕組み・雰囲気づくりこそが、これからのあらゆる組織のリーダーの役割と言える。
<第三講演>
バイオDX人材育成の要点と事例紹介
山口 昌雄氏(アメリエフ株式会社 代表取締役社長CEO)
<略歴>
2000年理化学研究所遺伝子多型研究センターに入所し、2007年京都大学大学院医学系研究科博士後期課程を修了。2009年アメリエフ株式会社を設立し、バイオインフォマティクス事業を開始。2019年より東京医科歯科大学の非常勤講師、2023年から同客員教授を務める。
◆バイオインフォマティシャン育成には個別化プログラムが必要
コンピューターの進化に伴う遺伝子解析の技術革新は凄まじく、公共データベースに記録されている遺伝子解析の結果は2019年時でも36ペタバイト(3600万ギガバイト)のデータがあり、現在もデータは増え続けている。つまり現在のバイオ研究はデータサイエンスが前提となっている。実際にデータ駆動型のAI創薬を実現している会社が海外に出てきてもいる。食品衛生、菌やウイルスの特定、製造業における品質管理、環境DNAや環境アセスメント等でも、ゲノムデータの活用が進んでおり、バイオDX人材の需要は拡大の一途である。
創業時より人材育成にも力を入れてきたアメリエフでは、バイオインフォマティクス人材育成のロードマップとして、個別の具体的な技術セット以外にITインフラ、プログラミング、統計学、生物学的知識などを基礎科目とした教育を提供するほか、立場が上がるごとに重要度が増すヒューマンスキルやマネジメントスキル、コンセプチュアルスキル(情報や知識から共通点を見出し、物事の本質を理解する概念化の能力)についてもプログラムを開発、各人の特性に合わせて個別化したトレーニングが重要であると考えている。
【パネルディスカッション】
AI・DX時代の人材育成とリスキリング課題
◆バイオDX人材育成のロードマップ
── まず、パーソルテンプスタッフで研究開発向け人材サービスを管轄する研究開発事業本部田村本部長に、国内のバイオ人材の需給バランスの状況について認識を伺いたい。
田村 需給バランスは非常に崩れている。先程アメリエフの山口様も指摘されていたが、産業側と個人のやりたいことにギャップがあり、それが職種でも地域においても非常に大きな違い(ギャップ)として出ている。たとえば栃木県。同県は自動車、航空機、医療器、医薬品等、ものづくり企業が非常に多く、理系人材が欲しいという話をたくさんいただくが、県内には理系学部がひとつしかなく、そもそも地域に理系人材を生み出す機能が備わっていない。そのようなことがあちこちで起こっている。少子化の中、IT系の情報処理、DX推進のために、とにもかくにもデジタル業界へ理系人材を集めるという大きなトレンドがあることも、適材適所のマッチングが崩れている背景となっている。
── マクロ観点で労働需給を分析してこられた山藤様からもご見解を伺いたい。
山藤 マクロ的に見ても、需給バランスはこのままなりゆきベースの供給が進んだ場合と、DXが実現した場合に必要な人材というところを比べると、大きくインバランスが発生すると予測している。しかし単純に頭数が足りない、という掛け声だけでは解決しないため、講演ではタスク分解とか、あるいはスキルの可視化といった提案を申し上げた。
本日はバイオDXというテーマでバイオ産業の方と同席させていただいている。是非伺いたいのは、バイオ人材と呼ばれる人材、かつDXされた形のバイオの人材というものは、どのように生み出すことができるかという点。
情報工学等を学んだ方々にバイオの知識を習得していただくのがよいのか、それともバイオのバックグラウンドを持った方が、後からDXの知識を身に付けるのが良いのか、どちらでもいいのか。あるいは全く別の分野でも、いわゆるベーシックな研究能力を身に付けた方であれば、バイオ産業においても、専門知識を後から学べばスイッチ可能なのか。我々はこれをタスク分解、スキル可視化という形で試みており、確かにスキル的には類似度が高い職種がある。ただデータ面で類似度が高いとしても、本当に別の領域に移れるのか否か、現場の状況を伺いたい。DXに資する創造的人材を別の領域から生み出すことができるのか、可能だとしたらどういった形になるかといった点に非常に関心を持っている。
山口 結論からいうと可能だと考えている。バイオ分野の研究者は情報学の必要性について十分に認識している。バイオ出身者が情報学を勉強すれば、習得の深さは別として、ある程度できるようになる。意欲の問題は大きい。情報分野でもプログラミングに向いている人もいれば、そうでない人もいる。しかし向いてない人が情報系のことが全くできないかというと、そんなことはなく、各々得意な領域でスキルを発揮している。バイオ分野も同様で、個性に合った教育プログラムを用意すれば実現可能だと考えている。
先崎 弊社は人材の出自がさまざまで、生物系、理化学系、情報系、数学系、経済、文系の方と本当に多様なバックグラウンドの人たちが集まっている。入社時点ではAI等デジタル領域、もしくはバイオの専門知識やスキルがない状態だが、そういった中で、例えば創薬における候補の化合物をディスカバリーするAIを作ろうとすると、まずはその分野に詳しい人たちを中心にいろんな人が集まり、開発を進めることになる。10名ほどの小グループの中で知識のある人に教えられ、考え、そしてアウトプットする機会を持って…とやっていく中で徐々にスキルが上がっていく。大体3年でチームリードできるぐらいになる。
── 多様な人材を活用する方法においてAIの革命が進んでいくのと、多様な人材をうまくマッチングさせていくこと、人材の育成も含めて組織として取り組んでいく、融合していくことが重要であると。
先崎 おっしゃる通り。
── 山口様は先ほどの講演の中でコンセプチュアルスキルの重要性について言及されておられた。AI、DXに絡めてもう少し伺いたい。
山口 これからはコンセプチュアルスキルの中にAIを活用する、そして生成AIをうまく使い、欲しい情報を素早く取るというスキルセットも必要な素養に入ってくるだろうということ。コンセプチュアルスキルというと広い概念だが、例えば論文を読んで理解することも含まれる。AIに丸々PDFを読み込ませて要約してくれといえば、かなりちゃんとした要約が出てくるし、似たような論文を複数読み込ませると関係性までアウトプットしてくれるので、理解を助けてくれると思う。
── 先崎様に伺いたい。10年後AIエージェントのようなものはもっと人間の創造の領域まで食い込んでくると考えるか。
先崎 AIエージェントについては確実に広がり、かなりの業務がAIに置き換わることは間違いない。ただ、AIを使ったシステムや業務改革のコンサルティングで必ず出てくるのが、AIの活用を進めると自分の仕事がなくなってしまうという意見。それをどうしたらもっと前向きに捉えられるか。当社のプロジェクトでは実際にDXやAIを使って業務を効率化、あるいは今までできなかったような推論をAIで行い、そこに人間を加えるということをしている。トップからマネージャー、そして現場に至るまでの目線にはかなりズレがあり、これをいかにワンチーム化させるか、リーダーが継続的に情報発信していくのが大切。一度ではなく継続的に情報発信し、一緒にアウトプットして発表し合うことが効果的で、部門や役割を超え目指す方向に向かっていくとものすごく強いチームになる。これを最初にやるかやらないかでかなり成功確率に差が出る。
田村 先崎様がおっしゃった話、大変共感する。パーソルテンプスタッフは事務職の派遣サービスが主力だが、その中にRPAを構築する人材を育成して派遣するサービスがある。RPAによって生産性が上がると事務の人員が従来通りには必要ではなくなってしまうため、それを推進するのはどうなのかという議論も当然あった。長い話し合いを経て、RPA化の流れは不可避である、それならば人の役割が変わっていくことをデザインする会社になろうというコンセンサスに至り、サービス展開が進んでいったという経験がある。先崎様のお話はまさにそういったことが各企業でこれからどんどん起きていくということを予見している。我々人材会社もそのようにトランスフォームしていくべきだし、顧客企業とともにさらなるチャレンジをしていきたい。
山口 とても共感する。我々はバイオDXの教育を事業として提供しているが、もともとはバイオインフォマティクス受託サービス企業でもある。「ノウハウを教えてしまったら受託の仕事が減るのではないか」と心配をいただくことも多い。でもそこへの回答は、裾野を広げないと日本の生命科学研究は世界に負けてしまうということであり、危機感があるからこそ、ノウハウを提供している。ノウハウを持った人ないし企業がそれを開放しにくいのは将来の自社の利益を食われてしまうからで、バイオDXの人材育成事業が進まない理由もまさにそこにあるが、何かしらブレイクスルーが起こらないといけない。厚生労働省や文部科学省等がリスキリングについて力を入れている今、我々が真っ先に前に進めていこうと考えている。
── 山藤様、政府としての支援は実際どうか。
山藤 政府の中でも経済産業省と厚生労働省の政策は大きく違う。あえてざっくりいうと、経済産業省は高度な人材をどう突き抜けさせるかといった、トップを目指すところに力を入れている。一方で労働市場全体、6700万人いる人たちをどうリスキリングしていくかというのは全く別の問題になる。だからどのセグメントに対しての話をしているのか、打ち手を考えるにしても切り分けて話すことが重要。その前提に立ったうえでバイオ人材、先進的な技術を持っている人材をどう育てるかについては、山口さんが今おっしゃられたように、まさにオープンにして、流動性を高めていく中で進めていくのが、おそらくライトアンサーだろうと考えている。
◆キャリアを決めつけすぎずに能力を伸ばす
── 先崎様がおられる日本IBMでは様々なキャリアパスが用意されているとのことだが、リスキリングした結果、「自分には向いてない」となった場合どうするのか。
先崎 そういう場合は柔軟にキャリアの方向性を変えることが可能な体制となっている。新卒の方々に多いのは、自分がコンサルタントなのか、あるいはITスペシャリスト、アーキテクト、営業かというふうに自分の“帽子” -弊社ではジョブロールと呼んでいるが-それを気にする傾向がある。先ほど山口さんのご説明にもあった通り、職種が変わっても共通するスキル要素があるので、最初から決めすぎず、いろんな帽子をかぶってスキルを伸ばした方がよい。そうするほうが引き出しも増え、結果的に成長につながる。入った時に黄色い帽子だったら一生黄色ではなく、赤に変えたりできるから、そこは気にしすぎない方が良いと伝えている。
── AIなどの技術革新によって先々が見通しにくい中、個人がリスキリングに取り組む際に何に留意すべきか、我々パーソルテンプスタッフとしてはどう考えるか。
田村 先崎様がおっしゃったように、キャリア構築は直線ではなく、決めつけすぎると逆に潰しがきかなくなるなどの弊害もある。人材会社の使命のひとつは個々人のキャリアを支援していくことだが、派遣社員は、会社を通じて色々な業界ではたらくことが可能であり、小刻みなリスキリングをしながら持続的にはたらくことができる。
人手不足に関して顧客企業とよく話題になるのが、採用において業界経験者にこだわるのか、それとも他の業界で共通要素を持つ業務経験者を歓迎するのか、どちらの方が事業を継続できるのか、といったこと。イノベーションにより産業が交わっていく中で、顧客企業にとってもはたらく個人にとってもメリットのある形での労働力移動を支援していくのは我々の大きな役割のひとつであると考えている。
個人のリスキリングについては、専門性が高まるほど、広く産業界を見渡して自分の価値を正確に把握することができにくくなるため、第三者として客観的にその方の価値を伝え、その後のキャリア構築の活力にしていただく機会を作れればと思う。教育機関や企業様とコラボレーションしながらバイオ分野のDX人材の育成に取り組んで参りたい。
◆リスキリングに大切な心理的安全性
先崎 山藤さんに伺いたい。日本には創造的な仕事をする人が少ないということだがそれはなぜか?どのように分析されておられるか?
山藤 答えはひとつではないが、よくお伝えするのは産業構造の成り立ちが海外と違い、ものづくりでやってきた日本ではある意味自然な結果だということ。あとはよくいわれることだが、教育システムの違い。創造的な発想を育むような教育が皆無とは思わないが、幼少や、初等教育には少ない印象。地域活動の中で子どもたちと触れ合うと、創造的だと感じる子どもは少なくない。重要なのはいかにその後、たとえば企業に入った後も創造性を伸ばしていけるかだが、それほど難しくなく工夫次第で可能だと感じている。
先崎 人の素質というよりも、機会が偏っていることが理由だとするならば、逆に今は人が少ない分野を目指すチャンスだと言える。
山藤 まさに機会の問題。適性は生まれた時から決まっているわけではなく、何を与えられるかによってかなり大きく変わる。社会に出てからも変えるチャンスはあるし、そこをいかに活性化していくかが重要。雇用の流動化に対して忌避反応がないような社会になってきているので、あとはいかに有効な手を打つかどうかにかかっている。
山口 バイオDX人材育成を行っている立場としては、講演中に先崎様がおっしゃったように心理的安全性の確保が大きなキーワードだと考えている。何か新しいことをやろうと思った時に、心理的安全が確保されていないケースがまだまだ多く、それが阻害要因となっていると感じる。企業風土、組織風土だけでなく起業家の立場としては、バイオ産業、ヘルスケア産業での起業に関しても感じることが多々ある。欧米と比べセーフティネットが甘いので、起業のハードルが高いし、教えてくれる人もいない。起業後に伴走してくれる人や支援してくれる組織も少ない。その点シリコンバレーはよくできている。IT系の大学がたくさんあり、投資家も大勢いて、プレイヤーもたくさんいる。叩き潰されることもあるけれども、それ以上に潤沢なチャンスがある。日本は出る杭は打たれる的な感覚が根強く、上がっていく動きが鈍い。ただ、最近はスタートアップ支援が強化されてきており、追い風に感じる。組織だけでなく国全体として心理的安全性が感じられる風土づくりが重要だと考えている。
◆「人財」の面からバイオDXを促進したい ―主催者挨拶-
田村 本日は皆様貴重な知見を共有くださり誠にありがとうございます。私どもは2021年9月に大阪大学様と高度バイオDX人材の研究機関を立ち上げ、今回話を伺ったようなバイオ人材の能力の可視化に取り組んでいます。皆さんと一緒にこの産業そのもの、領域をもり立てていくために、これからの時代、新たに必要とされる人材の育成に取り組んで参ります。ものづくりの日本を、「人」を通じてご支援して参りたいと思っておりますので、今後ともどうぞよろしくお願い致します。本日はご参加いただき、誠にありがとうございました。
――
パーソルテンプスタッフ株式会社研究開発事業本部(Chall-edge/チャレッジ)では、
バイオDX人材の育成に取り組んでいます。
リリース:「パーソル高度バイオDX産業人材育成協働研究所」バイオ医薬品の開発・製造領域の人材育成に寄与する学習コンテンツを無料公開
研究開発職に特化したサービスブランド「Chall-edge(チャレッジ)」HP
https://www.tempstaff.co.jp/kmenu52/
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