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タンパク質は細胞内で、あらゆる生命現象を実行している生体分子です。ゲノム解析によって細胞内の全遺伝子のDNA塩基配列が明らかになり、これをもとに全てのタンパク質の1次構造(アミノ酸配列)が解読されました。ポストゲノムの時代となった昨今では、それぞれのタンパク質について、「どのような機能をもつのか?」「身体あるいは細胞内のどこの領域・場所に、どの程度の量で存在するのか?」を明らかにしていくことが生命の理解に向けた次の重要な課題です。ここでは、培養細胞からタンパク質を取り出す方法を学び、取り出したタンパク質の量や機能または活性状態を明らかにすることができるウェスタンブロット法について概説します。
何よりも目的のタンパク質のことをよく知る
タンパク質を試料として実験を行うときに、実験で着目する目的タンパク質の素性を知ることが何よりも大切です。
- どのようなアミノ酸配列・立体構造をもち、分子量はどのくらいなのか?
- 体内あるいは細胞内のどこに発現・分布するのか?
- 細胞内でどのような機能や活性をもつのか?
- 細胞内でリン酸化やプロテアーゼ分解などの翻訳後修飾を受けるのか?それらの化学的修飾はタンパク質の機能にどのような影響を与えるのか? など
タンパク質試料を正しく扱う
細胞内タンパク質の機能は、その立体構造や化学的修飾の状態により大きく変化します。タンパク質の構造および修飾は、熱・pH・変性剤・酸化などに対して不安定であることから、タンパク質試料を調製・解析するときには、以下の点に注意しなければなりません。
- 氷上あるいは低温室内で常時1〜5度に冷やしながら扱う。
- 実験作業時間をできるだけ短くする。
- 攪拌は低温かつできるだけ穏やかな条件で行う。
- 目的タンパク質を組織抽出液のように混合物として得る場合は、プロテアーゼ阻害剤や安定化剤などを添加する。
- 実験を中断する場合には、タンパク質試料を超低温庫(-70度以下)または冷凍庫(-20 〜 -40度)内で凍結保存する。再使用時には融解する。試料を分注して保管し、凍結融解の回数を最小限に抑える。
特異抗体を用いることで特定のタンパク質に着目した解析が実現する
あるタンパク質を抗原として認識する抗体が手元にあれば、これをツールとして、そのタンパク質の存在量や機能を明らかにすることができます。抗体の質(親和性と特異性)は得られるデータの質を左右するため、良質の抗体の入手が実験成功に欠かせません。抗体を用いたウェスタンブロット解析や細胞免疫染色によって、「目的タンパク質が、いつ、どこで、どの程度発現しているか?」を可視化することができます。また、抗体を用いて免疫沈降実験を行うことで、細胞や組織の粗抽出液中から特定のタンパク質を選択的に分離できるため、ウェスタンブロットと組み合わせると、その生理活性や翻訳後修飾の動態、さらにはそのタンパク質と複合体を形成している一連のタンパク質分子をひとつひとつ明らかにすることもできます。
この記事の続編では、標準的なタンパク質実験として、ヒト培養細胞から抽出したタンパク質をSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)で分離し、ウェスタンブロットで検出する方法をご紹介します。また、応用編として、免疫沈降法を用いて目的タンパク質を選択的に分離・精製する方法もご紹介します。
*監修
パーソルテンプスタッフ株式会社
研究開発事業本部(Chall-edge/チャレッジ)
研修講師(理学博士)
この記事は、理系研究職の方のキャリア支援を行うパーソルテンプスタッフ研究開発事業本部(Chall-edge/チャレッジ)がお届けする、実験ノウハウシリーズです。
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