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理系就活Q&A エントリーシートの書き方。志望動機、自己PR、ガクチカ

「エントリーシートの書き方が分かりません。志望動機や自己PRをどう書けばいいでしょうか?」:理系就活Q&A 第3回

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こんにちは。サインキャリアデザイン研究所の篠原です。フリーランスのキャリアコンサルタント(国家資格)として学生向けのキャリア支援を行っており、理系大学を含む複数の大学でキャリア科目・就職支援講師として活動しています。人材業界でも17年間、企業の新卒採用支援や自社の採用業務、新入社員の教育担当などを行っていましたので、採用企業が新入社員に求めているもの、新入社員が会社に求めているもの両方を知っていることを強みとしています。

ある理系大学では長年にわたって、多くの学生の皆さんの就職活動における迷い、悩み、頑張りに触れてきました。また企業の方たちと協力して理系向け就職セミナーや、技術職社員の方たちとの座談会などの運営経験もあります。そうした活動を通じて実感してきたのは、就職活動という場そのものが、学生さんそれぞれの気付きや見直し、成長のステージになり、いかにそこから逃げずに向き合っていくことが大切であるかということです。

このシリーズでは、そんなこれまでの実際の先輩たちの就職活動における成功や失敗の事例も多く取り上げながら、よりリアルに理系の就職活動の進め方をイメージしていただける記事を発信できればと考えています。

第3回目の今回はES(エントリーシート)を書くコツをお届けします!

「エントリーシートを書いていますが、何か特別な経験をしたわけでもなく、ありふれた内容になってしまいます。志望動機や自己PR、ガクチカなどで、企業の目を引くような書き方のポイントなどがあれば教えてください」

就職活動における応募書類の一つであるエントリーシート。そこに記載する「志望動機」「自己PR」「学生時代に力を入れたこと(通称:ガクチカ)」は、どんな企業のエントリーシートにも頻出することから、3大質問と呼ばれています。さらに、理系にとっては卒業研究も企業が注目するポイントです。今回は、これらの3大質問+卒業研究の書き方について、一つずつ見ていきたいと思います。

志望動機は、「企業レビュー」にならないように気を付けよう

まずは志望動機についてです。志望動機は応募企業ごとに異なるものなので、どれだけ1社ずつ心を込めて書けているか、その差が見えやすいものだといえます。志望動機の一番の基本は企業と自分との「接点」を示すこと、すなわち企業の「どこに」と、自分の「なぜ」の紐付けを示すものです。ところが、企業からは「これは単にうちの会社への評価だよね」「志望動機に本人の姿が見えない」などの声がよく聞かれます。要するに、一般的な企業の強みや、学生がその企業に対して良いと思った点をただ書き連ねているだけ、まるで映画や漫画のレビューコメントのような志望動機が目立っているということです。これを私は「企業レビュー型」と呼んでいますが、そんな志望動機を書かないよう、就活のガイダンスなどでは注意を促しています。

企業が志望動機で知りたいのは、「なぜこの学生が当社を選んでくれたのか?」ということです。つまり皆さんにとっては、「自分だからこそ御社を志望した」と言える情報を示すことが、ライバルとの差別化を図る大切なポイントです。理系の場合は、大学での専攻や実習などで磨いてきたことが、自分ならではの志望動機(背景・経緯)になることが多くあります。その点では、理系学生の技術系職種に対する志望動機は、企業との接点を考えるのに苦労しがちな文系の志望動機に比べると書きやすいといえます。理系学生にとって重要なのは、今学んでいることが今後の就職に対してどのように応用できるか?就職に向けて力を入れていくべきこと、あるいは何を研究することが有効なのか?といったことを日頃から考え、学業に向き合っていくことだと思います。

志望動機には「何をやるために」を入れよう

志望動機の基本は応募企業の「どこに」と、その背景や経緯となる自分の「なぜ」の紐付けを示すことだとお伝えしましたが、そこにもう一つ加えていきたい大切な視点があります。それはその企業で何をやるために志望したのかという「目的」です。それは「~に興味があり志望した」で終わるのではなく、「~に興味があり~をするため(実現するため)に志望した」と示すことです。ところが実際は、私が前職の人材系企業の採用担当だった時も、現在、大学で学生の志望動機の添削を行う中でも、「〜をするために」という目的まで示す志望動機を目にすることはごく僅かで、「興味があるから志望した」止まりの内容が多く見られます。

参考にしていただきたい志望動機の例として、大手航空会社の技術職に就職を決めた、ある学生の志望動機をご紹介します。大変な人気企業で、その大学で内定を得たのはその学生が初めてという難関企業。志望動機を伝える時にしたことは、自身の機械系の知識を用いて、航空機のある部分のより強固なメンテナンス体制の必要性を訴えることでした。そして、「100%の航空安全を実現するために」という強い目的意識を示し、見事内定を獲得しました。航空会社といえばつい「飛行機が好きだから」といった志望動機になりがちですが、その学生はその先までしっかり見据えた目的意識を示すことで、採用担当者の心を動かしたのだと思います。

自己PRのエピソードは3ステップで整理

自分の強み、能力をアピールするのが自己PRですが、実はその強みや能力以上に注目されるのが「根拠となるエピソード」です。というのも、強みや能力はたとえば「積極性」や「リーダーシップ」、「粘り強さ」「最後までやり抜く意思力」など、多くの学生でかぶります。そんな中、その強みに説得力を持たせ、強く印象付けることができるのがエピソードです。

エピソードにはクラブ・サークル活動、産学連携といった学内外のプロジェクトへの参加、学業への取り組み、アルバイト、ボランティアなど、多数の活動が候補として挙げられます。それらの活動の中で発揮した強みや能力についてのエピソードを紹介していくのが自己PRの基本形です。コロナ禍での厳しい学生生活を余儀なくされている昨今では、それを逆手に取り、コロナ禍だからこそ工夫したことなども自己PRのエピソードとして多く活用されています。

そのため、自己PRを作成する際には、どんな活動のどんなエピソードを紹介すれば、一番自分のアピール材料になるかを考えていきましょう。その際にはその活動での「何に対して」→「どのようにして」→「どうなった」という3ステップでエピソードを整理していくと、構成をイメージしやすくなり、企業の担当者も理解しやすくなります。

自己PRは「だからこそ」の独自エピソードで差別化を

自己PRで飲食店でのアルバイト経験を紹介する際によく見られるのが、単純に「飲食店でアルバイトをしていました」という書き方です。そして、そこで語られるエピソードも、「自分から積極的にお客様に働きかけた」など似たり寄ったりのものが多いです。私がそんな自己PRを添削する時に必ず聞くことは「どんな飲食店なのか?」ということです。すると駅ナカのそば屋、ビジネス街のカフェ、個人経営の居酒屋などの種類を紹介してくれます。私はそこで、「飲食店でのアルバイト」ではなく「駅ナカのそば屋でのアルバイト」と書くよう勧め、同時に駅ナカのそば屋だからこそのエピソードがないかを聞きます。すると、通勤、通学で人の流れが多く、毎日来られるお客さんも多い駅ナカという立地だからこそのエピソードがいろいろと出てきます。それらを盛り込むことで、ありきたりのエピソードが、格段に印象深いものになっていきます。

この「だからこそ」のエピソードは飲食店のアルバイトに限りません。スポーツならその競技だからこそのエピソード、何かのプロジェクトならそのプロジェクトだからこそのエピソードがあるはずです。それらをふり返り、読み手が「なるほど!」と唸るような独自性のあるエピソード紹介を目指すと良いでしょう。

ガクチカは、経験の裏にある「想い」を語ろう

学生時代に力を入れたこと(通称:ガクチカ)は、文字通り自分が学生時代にとりわけ力を入れて取り組んだことを記載します。取り上げる活動例は自己PRと被りますが、自己PRがその活動の中の能力発揮に焦点を当てることに対して、ガクチカは活動全体をふり返りながら、活動そのものを通じた自分の成長や学びなどをアピールするというイメージです。ただし、自己PRやガクチカは明確にこうでなければならない、というものがあるわけではなく、あくまで区別して考えるとしたら、という理解で問題ありません。

ただし、このガクチカにおいて一点、意識しておきたいことがあります。それは、単なる活動紹介で終わらせないということです。ガクチカは、応募先に自分のことを知ってもらうことが目的です。そのため、活動のなかで自分が主体的に考え行動したことや、踏ん張ったこと、乗り越えたことなど、しっかりと自分の姿が見えるようにしましょう。特に団体活動の場合には、最後まで「皆で〇〇をした」という話で終わってしまっているものをよく見かけます。先に触れた企業レビュー型の志望動機のように「本人の姿が見えない」と思われるもったいないケースです。

そんな時は、活動全体をふり返ってみて、活動を始めた目的やきっかけ、どういう思いをもってやっていたのか、自分の気持ちや思いを添えてみましょう。例えばボランティア活動は、アルバイトと違って給料などの動機があるわけではありません。そこには参加しようと決めた大切な思いがあるのではないかと思います。そしてその思いこそが、採用担当者に伝えるべきことです。企業側は、あなたの「人となり」つまり「どのような思いでその活動を頑張ったのか?(大切にしている価値観や、どういうことをモチベーションに頑張る人なのか?)」を理解したいと考えているからです。

卒業研究の説明で大切なこと

最後に卒業研究について触れておきます。文系以上に注目される理系の卒業研究。その説明・紹介においては以下の流れが参考になるかと思います。

➀研究テーマ→②目的と背景→➂研究の応用→④進め方→⑤現状と今後の課題

就職活動の時期と卒業研究は、同時進行あるいは就職活動の方が先になることも多く、エントリーシートの時点では、研究成果まで示せないことが通常です。そこで大切になってくるのは、自分の研究に関心や期待を持ってもらうための書き方です。まず押さえたいのは、どんな目的を持って進めている研究なのか、そして目的の背景には何があるかということです。そこに社会的課題など、その研究を進める意義を感じてもらえるような目的と背景があればより効果的です。

院生の場合は実際の研究が進行中、あるいは既に学会発表まで行っているケースなどもあり、学部生以上に研究内容が注視される傾向にあります。そのため、通常のエントリーシートの他に「研究概要書」を別紙で求められることも多くあります。研究概要書は、ワード、PowerPoint、自由形式など、応募企業が指定する形式で準備します。内容は、前述の5つの流れが参考になることは同様ですが、学部生と違うのは研究結果・研究成果が出ているケースもあるということです。その場合は、研究結果・研究結果を示した上で、今後の課題や展望で締め括れると良いでしょう。研究概要書の形式によっては、図やグラフなども積極的に用いて、研究内容をより理解してもらえるように工夫することが重要です。

まとめ

今回は、3大質問+卒業研究の書き方について説明しました。紹介したアドバイスに沿って自分自身を深く掘り下げることで、エントリーシートに書く内容が、自分しか書くことのできないものになっていくことと思います。自分ならではのエントリーシートが書けるよう、応援しています!

※記事内の画像はすべて著者作成

篠原功治

篠原功治

キャリアコンサルタント
サインキャリアデザイン研究所代表・国家資格キャリアコンサルタント・JCDA 日本キャリア開発協会会員
2009年に学生・若年者を対象としたキャリア支援活動を事業とするサインキャリアデザイン研究所を立ち上げる。理系向け就職セミナーや技術職社員との座談会・パネルディスカッションをはじめとする理系大学生向けのキャリア支援にも長年携わっており、現在は大学でのキャリアデザイン科目・就職支援プログラム講師、企業・就職支援機関とコラボレーションした学生向けキャリア・就職支援プログラムの企画・実施、企業における営業研修などを務める。

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