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【理系学生向け】技術面接の準備はこれで万全!キャリアコンサルタント堀江貴久子さんによる理系就活アドバイス│リケラボ

技術面接は万全の準備で挑む!キャリアコンサルタント 堀江貴久子さん

心理学の視点から紐解く、技術面接における研究内容の伝え方

化学メーカーでの勤務や総合大学にて20年間、延べ10,000人以上の学生の進学・就職支援を行ってきたキャリアコンサルタント堀江貴久子さんによる、理系就活生のための記事です。

多くの学生に寄り添ってきた経験を活かし、心理学の観点から皆さんの役に立つアドバイスをいただいています。第5回の今回は、技術面接についてです!公務員技術職を目指す方も必見です。

技術面接とは?

技術面接は、理系学生が自らの研究や技術的な知識をプレゼンテーション形式で発表し、その内容に基づいて質疑応答が行われる面接です。

職種にもよりますが、皆さんが就職活動を行う際に、研究内容・説明を発表することは、採用における非常に重要な要素であり、プロセスとなります。研究開発職や技術職志望の方にとっては避けて通れないものの一つです。主に大学や大学院での研究内容や技術的なスキルを評価するために行われ、どのような研究を行ってきたのか、またその研究の工夫点や独自性がどのように社会や企業に貢献できるのかをアピールする必要があります。採用時期は年々前倒し傾向になっているため、研究計画の段階で発表を余儀なくされることもあるでしょう。研究においてどのプロセスかによってアピールする項目も変わってくるかもしれませんが、枠組みを理解することで、技術面接を恐れることなく乗り越えていただけると嬉しいです。

学校推薦枠の場合、一次面接を免除される場合もありますが、本題に入る前に一般的な企業の採用フローを押さえておきましょう。

企業の採用フロー(一例)
(図提供:堀江さん/リケラボ編集部作成)タップして拡大

面接官は技術面接を通してここを見ている!

技術面接は、通常、人事部や技術職の専門家が行い、応募者の専門知識や問題解決能力を深く掘り下げて評価します。そのポイントを詳しく説明します。

【プレゼンテーション能力】

研究内容をわかりやすく伝える能力が求められます。資料の構成や視覚的な表現も重要です。複雑な概念をわかりやすく説明できるよう工夫することが大切です。専門用語は必要最低限に留め、使用する場合は説明や補足を加えましょう。

また、面接官は必ずしも理系出身者であるとは限らないため、専門的な内容を非専門家にもわかりやすく説明できるように心がけると良いです。高度な理論・用語を用いた説明は避け、高校生でも理解できるレベルで説明することが理想です。

【論理的思考力】

質問に対して論理的に答える能力が求められます。研究の進め方や問題解決のプロセスを具体的に説明できることが重要です。また、研究の背景や目的を冗長にならないよう心がけ、端的かつ明確に伝えましょう。

【研究のオリジナリティ・エンゲージメント】

研究そのものに独自性があるかも大切ですが、どのような独自の視点やアプローチで研究を行ったのかにも焦点を当ててみましょう。皆さんがどのように研究と関わり、研究成果を社会に還元でき得るかを考慮します。可能であれば、研究がどのような社会的背景から生まれたのか、何を解決しようとしているのか考えてみましょう。

【問題解決能力・柔軟性】

研究を通じてどのような課題を解決したのか、研究中に直面した問題に対してどのように対処したかを具体的に説明することが求められます。技術力はもちろん、その背景にある思考プロセスも大切です。また、予想外の状況にどう対応しているか、従来の研究に固執せず、臨機応変に対応できているか振り返ってみましょう。

【過去の経験から何を学び、どう活かそうとしているか】

自分の技術的なスキルや経験をアピールする際には、具体的なエピソードを交えて話すことが効果的です。これにより、面接官に対して説得力を持たせることができます。また、自分のスキルがどのように企業に貢献できるか将来の展望を述べることで、面接官に自分の価値を理解してもらいやすくなります。

【忍耐力・ストレス耐性】

研究の過程において、文献、タスク、実験において愚直な繰り返しが求められる場合があります。企業においても期限に迫られる場面や、クライエントの無理難題に対応せざるを得ない場面があるため、研究内で乗り越えた経験を伝えられると良いでしょう。

面接
画像:Adobe Stock

技術面接に向けて、準備をしよう!

先にも述べたように技術面接では、プレゼンテーション形式で研究内容を発表することが一般的です。技術面接でのプレゼンテーション能力を向上させるためには、準備、論理的思考、表現力、そして面接対応者が見ているポイントを意識することが不可欠です。これらを意識することで、より効果的なプレゼンテーションが可能となり、面接の成功につながるでしょう。

①研究概要の整理

研究概要を整理し、まとめます。特に研究のオリジナリティや工夫した点をアピールすることは、面接や論文発表の場で非常に重要です。そのためには、先行研究との比較、具体的な成果の提示、研究の目的と意義の明確化、そしてプレゼンテーションの工夫が重要です。これらのポイントを意識することで、面接や発表の場で自分の研究の独自性を効果的に伝えることができるでしょう。以下に、オリジナリティを効果的に伝えるためのポイントをまとめています。これらの具体的な事例を通じて、自分の研究がどのように独自性を持ち、学問や社会に貢献するかを明確に伝えることができます。

  • 先行研究との比較

皆さんの多くは、先輩の研究を引き継ぐ研究を行う方も多いかと思います。その中でもオリジナリティを強調するためには、まず自分の研究がどのように先行研究と異なるのかを明確にすることが重要です。研究の背景として先行研究で扱われていない問題や未解決の問題、ギャップを特定し、自分の研究がそれをどのように解決するかを示しましょう。また、既存の研究方法を改良したり、新しい理論的枠組みや視点を用いて方法論を導入することで、研究のオリジナリティを示すことができます。

  • 具体的な成果の提示

研究の成果を具体的に示すことで、オリジナリティを強調できます。データや結果の提示において、研究の結果がどのように新しい知見を提供するかを具体的なデータや事例を用いて説明します。実用的な応用がある場合、研究成果が実際にどのように応用されるかを示すことも効果的です。

具体的な成果の提示
画像:Adobe Stock
  • 研究の目的と意義の明確化

研究の目的や意義、その研究で何を解決しようとしているのか、どのような新しい知見を得ようとしているのかを明確にしましょう。皆さんの研究が社会に与える影響や貢献を説明することで、社会的意義やオリジナリティを強調することができます。

②スライドの作成

自身の研究テーマ、研究内容を整理します。資料はパワーポイントを用いることやA4用紙1枚に収めることが多いです。スライドの作成において、フォントや色、囲み枠の工夫によって、視覚的にわかりやすくし、重要なポイントを強調しましょう。スライドは見やすく、情報を絞って要点を押さえた内容にすることが望ましいです。高校生にも理解できる程度の内容にまとめることが理想です。ポスター発表などの経験を活かしましょう。

③予備データの提示

研究がまだ実施に至っていない場合や、研究計画のみの場合もあるでしょう。学部での教科や学びを記すのも良いですが、研究の初期段階で得られたデータやパイロットスタディを提示することで、提案する研究の実現可能性を示すことができます。

④練習(模擬面接の実施)

キャリアセンターや、友人・先輩にプレゼンテーションを見てもらい、フィードバックを受けることで改善点を見つけます。可能であれば、自身の研究を知らない人に初見でも理解できるかどうか見てもらいましょう。

プレゼンテーションの内容を明確にし、伝えたいメッセージを一つに絞ります。研究の目的、方法、結果、結論を論理的に構成することが重要です。

スライドには要点を簡潔にまとめ、詳細は口頭で説明するスタイルが効果的です。

発表の練習を重ね、必ず時間内に収めることができるようにしましょう。また、質疑応答に備えて専門的な質問にも答えられるように準備しておくことも大切です。面接官からの質問に対しても論理的に答えられるよう、想定される質問をリストアップし、それに対する答えを準備しておきます。

面接官とのコミュニケーション

面接中は、面接官との対話を意識し、質問に対して明確に答えることが重要です。
以下の点に注意しましょう。

質問に応答する際

面接官の質問に対して頷き、しっかりと耳を傾け聞きましょう。理解した上で、質問に対して的確に答えることが重要です。

ミラーリングを活用

質問の意図が理解できない、あるいは聞き取れない場合は、聞き流さずに確認しましょう。「結論ファースト」で話せない場合、質問の内容をそのまま主語として繰り返した後、答えます。

質問の深堀りには?

あなたの人物像を立体的に把握しようとするための質問です。答えだけでなく、その背景にある考え方を伝えるようにしましょう。

難しい質問への対応は?

矛盾した質問やどちらか一方だけを選べないような質問など、答えにくい質問は反応や思考過程を観察するために行われます。正解はないので、焦らず等身大の答えを。

逆質問とは

面接の終盤に学生から企業への質問の時間が設けられることがあります。企業や業界に関する的を得た質問を用意することで、企業への関心や入社の意欲を示すことができます。就活マニュアルにあるようなありきたりな逆質問(入社までに何を学んでおくとよいですか?など)は逆効果なので注意してください。

技術面接時のよくある質問

面接では、研究内容を通じて自分自身をアピールすることが求められます。研究内容を通じて自分自身をアピールすることは、理系の就職活動において重要です。しかし、研究の背景や成果を明確に伝える「研究の内容」のみが評価対象となるのではなく、プレゼンテーション能力や振る舞い、論理的思考力を示す「社会人基礎力」や「研究能力」を測ることも企業が技術面接をする重要な目的です。そのため技術面接では、プレゼンテーションの後、技術的な知識や問題解決能力を評価するために、さまざまな質問が用意されています。これらの質問に対して、自身の経験や知識を具体的に説明できるように準備しておくことが重要です。また、実際のプロジェクトや研究に基づいた具体的なエピソードを交えることで、より説得力のある回答ができるでしょう。

【研究テーマの選定理由や意義についての質問】

  • その研究テーマを選んだ理由は何ですか?
  • 研究の結果を実社会でどのように応用できると考えていますか?
  • これまで関わったプロジェクトについて教えてください。その中でのあなたの貢献は何ですか?


このような質問の場合、回答のコツは、テーマを選べる環境であれば、「選択肢の中でなぜそのテーマに興味を感じたのか」。テーマが与えられたのであれば、「そもそもなぜそのゼミや研究室を選んだのか」を伝えましょう。さらに、工夫した点、自分の代で新たに試みたアプローチを説明するのも良いでしょう。

特に基礎研究や研究室内の継続研究ですと、どう実社会へ応用できるのか想像しづらいものですが、企業研究職は、応用研究がメインだということを強く認識し、応用の可能性について日頃から考える、または教授や先輩と議論する習慣をつけておくことが大事です。

他にも以下に技術面接でよく聞かれる具体的な質問例を挙げておきます。
事前の準備と練習を重ね、自信を持って面接に臨むことが成功の鍵となります。

【技術的な知識を測る質問】

  • データ構造の中で、○○と△△の違いは何ですか?
  • 特定の技術やツールを使用した経験について教えてください。
  • あなたが使用したプログラミング言語の特徴と利点は何ですか?
  • 最近の技術トレンドについてどう思いますか?

【問題解決能力を測る質問】

  • 最近取り組んだ技術的な課題は何ですか?それをどのように解決しましたか?
  • これまでに最も困難な技術的な問題は何でしたか?それをどのように解決しましたか?
  • 実験過程で直面した技術的な問題をどのように解決しましたか?
  • 研究を通じて感じた疑問はありましたか?それをどのように解決しましたか?
  • (架空の状況を設定し)その状況でどのように問題を解決するか説明してください。

【チームワークや協調性に関する質問】

  • 新しい技術を学ぶ際、どのように習得しましたか?
  • チームでの研究やプロジェクトにおいて、あなたはどのような役割を果たしましたか?
  • 他のメンバーとの意見の相違をどのように解決しましたか?
  • 教授へ納得してもらうため、どのようなアプローチをしましたか?

【研究を通じて得たスキルや経験について】

  • この研究を通じて、どのようなスキルを身に着けましたか?
  • 研究課程で得た学びは何だと思いますか?
  • この経験を社会人(技術職)としてどう活かせますか?

面接で成功するためのヒント

技術面接は、単に技術的なスキルを評価する場ではありません。面接官は、あなたの技術力だけでなく、人間性や企業への適合性も同時に見ようとしています。

①自己分析を深める

自分の強み、弱み、経験を整理し、具体的なエピソードで表現できるようにしておく。
他己分析、研究室のメンバーや教授に聞くのも有効です。

②定性的および定量的な数字を引用する

定性的なアプローチと定量的なアプローチをしましょう。抽象的だと共有しづらい経験も、何と比較するか考慮し、概算するなどして、人数・時間・頻度・索引数・倍数・パーセンテージを用いることによって、想像しやすくなります。

③企業研究を行う

企業のビジョン、文化、求める人物像を理解し、自分の魅力とリンクしている部分をアピールできるようにしましょう。

④模擬面接を受ける

友人や家族など周りの人に協力してもらい、実際の面接を想定した練習をしましょう。キャリアセンターやハローワークを利用するのもおすすめです。それらが難しい場合は、自身で携帯に録音して振り返ってみましょう。

⑤自信を持って臨む

緊張するのは皆同じ、当然だと思います。自分の能力を信じ、堂々と話すことが大切です。

面接で成功するためのヒント
画像:Adobe Stock

心理学を用いてパフォーマンスを向上させる

技術面接での緊張を和らげるためには、心理的なテクニックやメンタルトレーニングが非常に効果的です。心理学に基づいた具体的な戦略をいくつか紹介します。

技術面接での緊張を、これらの心理学的アプローチを実践することで、効果的に和らげることができます。技術面接でのパフォーマンスを向上させ、自信を持って臨むことができるでしょう。事前に可能な方法を試し、自分に合った緊張緩和法を見つけておくことが大切です。

面接は単なる質問応答の場ではなく、自分をアピールする重要な機会であることを忘れずに、しっかりと準備を行いましょう。

①深呼吸とリラクゼーション

面接前に深呼吸を行うことで、心拍数を落ち着かせ、リラックスした状態を作ることができます。具体的には、息を吸い込む際に腹部を膨らませ、ゆっくりと吐き出すことを繰り返します。このプロセスは自律神経を整え、緊張を和らげる効果があります。推しのグッズを自立式のカバンに忍ばせるのもリラックスできる要因となるでしょう。

②ポジティブな自己暗示

面接前に「私は十分な準備をしてきた」「私はこの面接を成功させることができる」と自分に言い聞かせることで、ポジティブな気持ちを持つことができます。これにより、自己肯定感を高め、自信を持って臨むことができます。

③環境への意識を向ける

自分の緊張感にばかり意識を向けるのではなく、例えば「面接官は新たに人事異動した方かもしれない。家に帰れば優しいお父さんだ」と、相手の背景にまで注意を払うことで、緊張を和らげることができます。また、「来年には同じプロジェクトを行う先輩」という意識で話すと自然なコミュニケーションが生まれ、リラックスした状態で面接に臨むことができます。

④笑顔とボディランゲージ

口角を上げるなど笑顔を意識的に作ることで、脳がリラックスした状態を感じ取り、緊張が和らぎます。また、背筋を伸ばし、胸を張って話すことも、心理的に自信を高める効果があります。

⑤食事と水分補給

リラックス効果のある食べ物を摂取することで、脳内のセロトニン(幸せホルモン)が増加し、リラックス効果が期待できます。また、適度な水分補給も重要です。

まとめ

技術面接は、理系学生にとって自分の能力をアピールする絶好の機会です。日々取り組んだ研究について述べることはもちろん、企業にとって必要とする人材であることを印象付けることができます。しっかりと準備し、自信を持って技術面接に臨めることを祈っています。

堀江貴久子

堀江貴久子

キャリアコンサルタント/産業カウンセラー
新卒で化学メーカーに就職。営業、研究補助を経て退職。その後、国立大学・私立大学のキャリアセンターにて学生支援を20年務める。現在は、ダイバーシティ推進室にてコーディネーター職を務める傍ら、省庁でのキャリアガイダンスやSDGsファシリテーターを行い、心理大学院で学んだキャリアについてのノウハウを伝えている。

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