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就活で最も求められるスキル「リーダーシップ」、正しく理解できていますか?

就活で最も求められるスキル「リーダーシップ」、正しく理解できていますか?

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「リーダーシップ」と聞いて、あなたはどんな姿を思い浮かべますか?

会議で指示を出す上司、チームをまとめるキャプテン、発言力のある誰か・・・

就職活動の面接でも、よくこう質問されます。

「あなたがリーダーシップを発揮した経験を教えてください。」

けれど、多くの学生は少し困った顔をします。

「自分はリーダーになったことがない」、「チームをまとめるのは苦手だ」。

私も採用担当をしていた頃、この質問に詰まる学生、本音で語っていると思えない学生をたくさん見てきました。

しかし、私はいつもこう思っています。

リーダーシップは、特別な人に与えられた才能ではなく、誰もが持つ“仕事の一部”なのだと。

リーダーシップは“才能”ではなく、“仕事”である

この考え方は、経営学者ピーター・ドラッカーの言葉に基づいています。

「リーダーシップとは、仕事である。」

私自身、製薬企業の研究職として働き、人事部で採用・人材育成を担当し、その後、大学で博士学生のキャリア支援に携わってきました。

どの現場でも感じるのは、「リーダーシップは肩書き(役職)ではなく、行動(仕事)」だということです。

例えば、就活に悩む学生からよくこのような相談を受けました。

「私は部活で部長やキャプテンをしたこともなく、バイトでも●●リーダーという役割になったことがありません。なのでリーダーシップを発揮した経験を話せなくて困っています」。

そのような学生に私はこう伝えています。

「その企業からは、「リーダー」という肩書の経験を聞かれているの?それとも「リーダーシップ」を発揮した経験を聞かれているの?」

するとほぼ100%の学生が「リーダーシップを発揮した経験」を聞かれていることに気付きます。そこで私はこう伝えます。

「じゃあまず、「リーダーシップ」とは何か、理解することが大事だよね」

この記事でも、「リーダーシップ」の定義を正しく学ぶことから始めていきますね。

“マネジメント”と“リーダーシップ”の違い

私は講義で、リーダーシップを学ぶ最初のステップとして「マネジメントとの違いを理解すること」を伝えています。

  • マネジメント:管理能力(複雑な物事に対応し、効率よくやりきる力)
  • リーダーシップ:変革能力(根本的な解決策を打ち出し、行くべき方向を示す力)

前者は“効率”を重んじ、後者は“意義”を問います。

両者の違いをまとめたので、ご参考としてください。

筆者作成

たとえば研究室で、新しい実験手法を導入するとします。

「マネジメント型の発想」では、手順を守り、管理し、期限どおりに進めることが目標になります。

一方、「リーダーシップ型の発想」では、「なぜこの実験を行うのか?」「この研究は誰のためになるのか?」を問い直します。

つまりリーダーシップとは、変化に対応し、未来の方向を示す力。

決められた仕事をこなすだけではなく、「より良くする」ために動けるかどうかが問われているのです。

信頼される人こそ、リーダーである

ドラッカーはリーダーの条件として、「信頼」を最も重視しています。

私もこれまでの経験から、心から強く同意しています。

信頼はスキルではなく、誠実さの積み重ねによってしか得られません。

「ありがとう」と言われなくてもやる。

約束を守る。

困っている仲間に手を差し伸べる。

そうした地道な行動の先に、リーダーシップが生まれます。

かつて、私が採用面接で出会った学生の中に、印象的な方がいました。

彼女はリーダー経験を尋ねられてこう答えました。

「リーダーという立場は経験したことがありません。ただ、研究室の後輩や仲間が実験で失敗したとき、何が原因かを一緒に考え、私なりの解決策を提示し、共に解決に向けて動いていました。」

私はその一言で、「彼女には高いリーダーシップがある」と判断しました。

リーダーシップとは、まさにこういうことなのです。

ドラッカーの著書「プロフェッショナルの条件」には、リーダーシップの本質が7つ挙げられています。ぜひ現在持っている資質を確認したり、今後のリーダーシップの成長をチェックすることにご活用ください。

筆者作成

リーダーに必要な「4つの仕事」

私は講義の中で、リーダーの仕事を次の4つに整理しています。

  1. 目標構築:チームの進む方向を描く
  2. 戦略実行:目標を現実に変えるために行動する
  3. 人材育成:仲間の成長を促す
  4. 価値創造:新しい成果や仕組みを生み出す

この中で、日本人は特に「人材育成」と「価値創造」が苦手と言われています。

この2つは成果が出るまでに時間がかかること、数字で成果が表現しにくいことが共通しています。

しかし、「目標構築」と「戦略実行」だけをしていると、「マネジメント」との差異がほぼ無くなってしまうんですね。

これが「日本人にはリーダーシップが足りない」と言われる所以だと思っています。

なかなか目に見える成果が得られなくとも、「人材育成」と「価値創造」を目指して仕事に誠実に向き合うことで、結果的に信頼を得られる。

その積み重ねが、リーダーとしての“軸”になるのだと思います。

このようにリーダーシップをバランスよく伸ばすために、4つの仕事をバランスよく行う必要があります。そのためにはセルフマネジメント「自己制御」が求められます。

リーダーとして仕事をする際のポイントを以下に図示しました。
ぜひ今後仕事に取り組む際に、意識してみてください。

筆者作成

リーダーシップを高めるための「行動」

では、どうすればリーダーシップを育てられるのか。

これは才能ではなく、日常の行動から鍛えられます。

私が学生に伝えている4つのポイントがあります。

  1. メンバーを信頼する
  2. 自分の意志を明確に持つ
  3. 仕事以外でも多様な人と関わる
  4. 常に明るくポジティブでいる

特に4つ目の「ポジティブさ」は誤解されがちです。

ポジティブとは「楽観的」ではなく、「どんな状況でも希望を見出そうとする姿勢」のこと。

リーダーは状況を変えられなくても、“空気”を変えることができます。

“We are the Leaders!” ——誰もがリーダーである

私が講義の最後に伝えるメッセージは、

「We are the Leaders!(私たちは皆、リーダーである)」です。

研究室で後輩を助けること、チームで提案をすること、それらはすべて小さなリーダーシップの発揮です。

就職活動で求められる「リーダーシップ」とは、「チームをまとめる力」でも「発言力」でもありません。

それは、信頼を軸に行動する姿勢そのものです。

“自分が主役になる”ことよりも、“チームがうまく回るために何をすべきか”を考えられる人。

そうした人が、社会の中で本当に強いリーダーとして成長していきます。

最後に

リーダーシップは、特別な立場や肩書きのある人だけのものではありません。

毎日の研究や仕事の中で、誰もが少しずつ磨いていける力です。

大切なのは、

「自分の行動が、周囲にどんな影響を与えているか」を意識すること。

それができれば、あなたはすでに“リーダーシップを発揮している人”です。

私自身も、日々の中でまだまだ学び続けています。

一緒に「We are the Leaders!」の精神で、次の一歩を踏み出しましょう。

板倉朋宏

板倉朋宏

大学院まで薬学部で学び、東証一部上場の製薬会社に研究職として入社。
11年間の研究生活を経て、同社の人事部に異動し、理系・大学院生の採用を担当(博士採用も含む)。採用職種は、研究職、開発職、生産技術職、データサイエンス職等。
担当業務は、ES審査、GD審査、1次・最終面接の審査官など、すべての採用業務を担う。
5年半の採用担当を経て、大学に派遣され大学院生(主に博士)に特化したキャリア支援業務に従事。現在は企業及び大学での経験を活かし、日本全国で「大学院生に特化したキャリア支援」を行う。国家資格キャリアコンサルタント、薬剤師。資格:データサイエンティスト(リテラシーレベル)

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