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理系すぎるお料理レシピ:第23回「ふわとろオムレツ」

理系すぎるお料理レシピ:第23回「ふわとろオムレツ」

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私たちが日ごろ口にするあらゆる料理は、さまざまな化学反応によって生まれています。調理とは科学であり、レシピとはある料理を再現するための"実験手順書"でもあるのです。

今回ご紹介する「理系すぎるお料理レシピ」は、「オムレツ」。卵料理の定番ですが、ホテルのレストランで食べられるようなふわふわとろとろのオムレツを自宅で再現するのはなかなか難しいイメージがあります。今回は、ナイフを入れると半熟の卵がとろけ出すふわとろオムレツに仕上げるコツをご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください!

ふわとろオムレツの再現方法とその考察

目的

ふわふわとろとろのおいしいオムレツを作る。

方法

〈材料〉(1人分)

・卵 2個(卵白が多い方がふわっとしたオムレツに仕上がるため、Lサイズの卵がおすすめ)
・生クリーム(牛乳でも可) 大さじ2
・塩 少々(約1.1g。卵+生クリームの重量の0.7%程度が目安)
・コショウ(見た目に影響せず風味もやさしい白コショウがおすすめ) 少々(約0.2g〜)
・バター 10g


〈手順〉

  1. ボウルに卵を割り入れ、泡立て器を使ってしっかりと溶きほぐす。卵白の塊がなくなり、なめらかになるまで溶きほぐしたら生クリーム、塩コショウを加えてさらに混ぜる。

  2. [1]の卵液をザルで漉す。

  3. フライパンにバターを入れて中火で熱し、焦がさないようにバターを溶かす。(バターが焦げそうで心配な場合は、半量をサラダ油に変更してもよい。仕上がりのコク、風味はやや落ちるが、バターのみ使用する場合より焦げにくくなる)

  4. [2]の卵液をすべて流し入れ、へらや菜箸で大きく混ぜながら半熟状になるまで火を通す。

  5. フライパンを火から下ろし、濡れ布巾の上に置く。

  6. 卵の端をヘラや菜箸でやさしく剥がし、手前から中心に向かって少しずつ寄せるようにしながら卵を3/4ほどまで折りたたむ。

  7. 反対側の卵も折りたたみ、フライパンのヘリを使って形を整える。

  8. ひっくり返して巻き終わりを下にし、フライパンを5秒ほど強火にかけて表面を固めたら完成! フライパンからすべらせるようにして器に盛り付け、お好みでケチャップをかけて召し上がれ。(お皿に盛る際に形が崩れてしまったら、熱いうちにキッチンペパーや清潔な布巾をかぶせ、やさしく手で形を整えるとよい)

タップして全体を表示

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結果

ナイフを入れると半熟卵がとろけ出る、ホテルのレストランで食べるようなふわふわとろとろのおいしいオムレツが完成した。

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考察

オムレツをふわふわとろとろに仕上げるためには、以下を心がけるとよい。

■生クリームや牛乳の使用

今回のレシピでは生クリームを使用した。生クリームには、風味を良くし、コクを出し、オムレツを濃厚な仕上がりにしてくれる役割がある。牛乳の方が手軽に使用できるため、濃厚さは生クリームより劣るものの、牛乳を使用してもよい。

また、生クリームや牛乳の水分によって卵のたんぱく質が希釈されるため、卵液はゆっくりと凝固するようになる。これにより、とろとろでしっとりとしたオムレツに仕上がりやすくなるという利点がある。

卵には希釈性、起泡性、乳化性、熱凝固性といった調理特性があり、オムレツはこのうち熱凝固性を利用した調理である。卵は加熱によってタンパク質が熱変性・熱凝固し、固まる。凝固温度は加熱の強さや速度、加えられる材料によって変化するが、食塩や牛乳、生クリームに含まれるカルシウムやナトリウムなどのミネラルは、タンパク質の凝固を促進する方向に作用する。

一方で、前述の通り牛乳や生クリームの添加には、水分や脂肪による希釈効果もあるため、凝固を促す要素と緩やかにする要素が拮抗することが、ふわとろオムレツの独特の仕上がりを生む要因の一つと言える。

なお、今回のレシピでは砂糖は使用しないが、好みに応じて加えても差し支えない。砂糖には卵タンパク質の熱凝固を抑制する作用があり、加えることで火の入り方が穏やかになり、とろみが保たれやすくなる。一方で、卵液の粘性や起泡性にも影響を及ぼすため、加える量や混ぜ方によっては、かえって「ふわっと感」を損なうこともある。とはいえ、砂糖がふわとろの質感に与える影響は総じて限定的であり、あくまで補助的な変数として位置づけられるためである。

■焼く前に卵液を漉す工程

焼く前に卵液をザルで濾すことで、卵のキメが細かくなり、仕上がりがきれいになる。卵の卵白には水様卵白と濃厚卵白があり、うまく混ざっていないと濃厚卵白のドロッとしたかたまりが残り、食感が損なわれたり、焼きムラにつながったりする。卵液を濾すというひと手間が、美しくおいしいオムレツを仕上げるポイントになる。

■フライパンの選び方

フライパンは直径1822㎝程度、油が染み込んだもので、表面はなめらか、厚手のものがおすすめ。フッ素樹脂加工したフライパンを用いると焼きやすい。鉄製の場合、油焼き(あらかじめ焼く前に油を入れて火にかけ、熱したら油をふきとる)をしてから使用するとよい。

フライパンのヘリを使って形を整えていくため、ヘリの高さが極端に低いタイプは避けた方がよい。フライパンの柄の部分は、素材、形などさまざまなものがあるが、実際に握ってみて自分の手にフィットするものを選ぶことが望ましい。

■加熱時の注意

卵液を流し入れるタイミングは、温めたフライパンに卵液を数滴たらし確認する。卵液をたらしたときに、ジュッと焼き音がして卵液がすぐに固まる程度までフライパンを温めてから卵液を入れて素早く混ぜ、全体を半熟状態にしてまとめていく。外側から内側へ素早く円を描くようにかき混ぜるとよい。ここで時間をかけてしまうとフライパンの余熱で卵液が凝固してしまうので、フライパンの熱を冷ますために、レシピでは濡れ布巾を活用している(手早く行えるのであれば濡れ布巾は不要)。火をつけていないコンロの上に移してから[6][7]の工程を行ってもよい。この時、仕上げに火力が必要になるため、火を消してしまうのはタイムロスになるためおすすめできない。

結論として、ふわとろのおいしいオムレツを再現するには

  1. 生クリームや牛乳を使用する
  2. 焼く前に卵液を漉す
  3. 直径18~22㎝程度、表面がなめらかで厚手の、フッ素樹脂加工されたフライパンを使用する
  4. 加熱時はフライパンをあらかじめしっかりと熱してから卵液を流し入れ、手早く半熟状態でまとめる

ことが重要である。


卵料理の定番「オムレツ」。ホテルで食べられるような、きれいでふわふわとろとろのオムレツを自宅で作るのは難しそうに思いますが、ポイントをおさえれば誰でも作ることができますよ。卵液を濾したり、フライパンを火から下ろしたりと、ちょっとしたひと手間はありますが、手間をかけるからこそうまく作れたときに感じられる喜びもひとしおです。休日の朝食やブランチに、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

フローチャート作成参考:
『応用自在な調理の基礎 フローチャートによる系統的実習書 西洋料理編』
河内一行ほか/家政教育社

(記事監修/管理栄養士 棚橋伸子)

リケラボ編集部

リケラボ編集部

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