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フローサイトメトリーの概要および原理について│リケラボ

フローサイトメトリー(1/2)概要と原理編

リケラボ実験レシピシリーズ

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はじめるまえに −フローサイトメトリーの概要および原理について−

生命は複数種類の細胞が整然と寄せ集まることで構成されています。これらの細胞のひとつひとつについて、その特徴や機能を調べたいと思ったら、どのように解析することができるでしょうか?

フローサイトメトリー(Flow Cytometry)は、細胞などの粒子状の物体の物理的・化学的な特徴を迅速に測定する技術の一つです。例えば、細胞懸濁液試料の中に含まれる細胞に対してフローサイトメトリー解析を行うと、個々の細胞それぞれに対して、細胞の大きさ、形状、内部構造、表面にどのようなタンパク質があるかなどを明らかにすることができます。本稿では、細胞のフローサイトメトリー解析について、ご紹介します。

フローサイトメトリーの概要

  1. 細胞の個別化:試料中に存在する多数の細胞は、シース液と呼ばれる液体の流れによって細い流路に誘導され、一列に並べられます。これによって、列の先頭の細胞から順に、全ての細胞を個々に計測することができます。
  2. レーザー照射:流路に沿って並んだ細胞に対し、先頭の細胞から順に細胞1個ずつにレーザー光を照射します。レーザー光を細胞に当てることで、細胞の特徴を反映した、散乱光や蛍光が細胞から生じます。
  3. 散乱光の検出:おもに次の2種類の散乱光を検出します。
    • 前方散乱光(FSC: Forward Scatter):細胞の前方に散乱した光を計測することで、細胞の大きさを知ることができます。
    • 側方散乱光(SSC: Side Scatter):細胞の側方に散乱した光を計測することで、細胞の内部構造の複雑さ(顆粒の存在の有無など)を知ることができます。
  4. 蛍光の検出:細胞をあらかじめ蛍光核染色や蛍光免疫染色処理しておくことで、細胞へのレーザー光の照射により、細胞に発現する特定のタンパク質の存在や細胞内部の構造を明らかにすることができます。
  5. データ解析:収集された散乱光や蛍光の強度や時間変化率を指標として、細胞の大きさ、内部の複雑さ、特定のマーカーの発現量などを個々の細胞に対して、定量的に解析します。これにより、個々の細胞の特性が評価できます。また、試料中に存在する異なる細胞集団・細胞種を識別することができます。

このような特性を活かし、フローサイトメトリーは、免疫学研究における免疫細胞の分類や機能評価、がん研究におけるがん細胞の特性解析や治療効果のモニタリング、幹細胞研究における幹細胞の識別や分離、臨床診断における血液疾患の診断や感染症のモニタリングなどの現場で広く用いられています。フローサイトメトリーは、多数の細胞を迅速かつ高精度に解析する特長をもちます。

また、フローサイトメトリーの特性を生かした応用例として、培養細胞の細胞周期を解析したり、生きている細胞の集団の中から任意の細胞だけを傷をつけずに選び取ることもできてしまいます。これらについては、後日別項にてご紹介します。

図:フローサイトメトリーの概要(リケラボ編集部作成)

*監修
パーソルテンプスタッフ株式会社
研究開発事業本部(Chall-edge/チャレッジ)
研修講師(理学博士)

この記事は、理系研究職の方のキャリア支援を行うパーソルテンプスタッフ研究開発事業本部(Chall-edge/チャレッジ)がお届けする、実験ノウハウシリーズです。

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リケラボ編集部

リケラボ編集部

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