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使用済み食用油がクルマ、飛行機の燃料に!バイオディーゼル燃料開発に取り組む元自衛官 −理系のキャリア図鑑vol.26 レボインターナショナル 東裕一郎さん

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多種多様な理系のキャリア。世の中には、面白い仕事ができる企業や意外な経歴を持って活躍している理系人が大勢います。この「理系のキャリア図鑑」シリーズでは、理系ならではのさまざまな仕事や、キャリアストーリーをご紹介。ときには悩み、迷いながらも自分の道を見つけてイキイキとはたらく理系人の姿を通じて、あなたらしい“理系のはたらき方”のヒント、見つけてください!

今回ご登場いただくのは、環境にやさしいバイオディーゼル燃料の日本におけるパイオニア、株式会社レボインターナショナルで技術開発を担当されている東裕一郎さんです。

どのような経緯で今の仕事をすることになったのでしょうか。
また、今の仕事にどのようなやりがいを感じていらっしゃるのでしょうか?
バイオディーゼル燃料の作り方や気になる今後の動向についても教えていただきました!

株式会社レボインターナショナル
1995年にボランティアでの使用済み食用油の引き取り活動から始まり、1999年に株式会社レボインターナショナルとして事業を開始。
環境リサイクルシステムの構築を推進し、バイオディーゼル燃料「C-FUEL」の製造・販売からプラント販売など、幅広い事業を行っている。
https://www.e-revo.jp/

 

使用済みの天ぷら油から作った燃料「C-FUEL」


──レボインターナショナルは、使用済みの天ぷら油から燃料をつくっていらっしゃるんですよね。

 はい、一般家庭や飲食店などから使用済みの天ぷら油をお引き取りし、自社工場で精製、バイオディーゼル燃料「C-FUEL」というブランド名で販売しています。

 

画像提供:株式会社レボインターナショナル

 

──東さんはどのような役割を担われていらっしゃるのでしょうか。

生産と技術開発を任されています。生産では自社工場の管理管轄、技術開発としては燃料の開発や改良、システム設計、製造方法の検討から触媒の作成、プラント設計まで幅広く担っています。

──バイオディーゼルとは、そもそもなんでしょうか。

一般的に生物資源からつくられた軽油(ディーゼル)をバイオディーゼルと呼びます。ですが厳密には軽油と全く同じというわけではないため、軽油代替燃料という言い方が妥当かもしれません。

──どんな特徴をもつ燃料なのですか?

軽油と比べて黒煙が発生しにくい性質があります。また、酸性雨の原因と呼ばれている硫黄酸化物が排ガスの中にほとんど含まれていません。植物性油から精製していることもあり、大気中の二酸化炭素量は増えない(カーボンニュートラル)とも言われていますね。さらに、当社の「C-FUEL」は使用済みの天ぷら油を活用しているため、油の廃棄による河川汚染の防止にも貢献しています。地球温暖化対策の一つとして期待されている燃料です。

──「C-FUEL」の製造方法を教えてください。

会社設立は1999年ですが、それ以前の1995年から、C-FUELの生みの親である京都大学名誉教授故清水剛夫先生の指導ならびに㈱KRI の協力の下、エステル交換反応によるバイオディーゼル燃料化技術の研究開発を行ってきました。

使用済み天ぷら油にメタノールと触媒を加えて、エステル交換反応を起こし、使用済み天ぷら油の主成分となっているグリセリンと脂肪酸アルキルエステルに分解させます。その後グリセリンやメタノールを取り除き純度を高めます。

同じ原理でつくられているものに、脂肪酸メチルエステルがあり(Fatty Acid Methyl Ester、FAME)、第一世代のバイオディーゼル燃料と言われています。

 

画像提供:株式会社レボインターナショナル

 

──「C-FUEL」は、どんなところに販売しているのですか?

2011年よりヨーロッパへの輸出を開始しました。

──バイオディーゼルは日本よりもヨーロッパのほうが普及しているのでしたね。国内での状況はいかがですか?

「C-FUEL」は、当時の運輸省、現在の国土国交省から公道走行が日本で初めて認められた燃料です。2002年に京都市のごみ収集車へ供給を開始し、同年京都市バスにも採用されました。その後、多くの企業、地方自治体でご使用いただいています。

 

画像提供:株式会社レボインターナショナル

 

──国内初のバイオディーゼル燃料なのですね!すごいです。

当社の蓄積したデータを基に、2002年「京都市バイオディーゼル燃料化事業技術検討会」により国内で最初となる「京都スタンダード規格」を制定。現在の「FAME」の品質規格JISK2390のモデルにもなっています。
 

──高品質の決め手は何でしょうか。

前処理と後処理を丁寧に行うことです。

「C-FUEL」の原料は、使用済みの天ぷら油です。水、醤油、砂糖、天ぷらの衣、食品の添加剤などの不純物が混じっています。これらを丁寧に処理しないと、製造過程の途中で反応が止まったり、燃料として使用する時にディーゼルエンジンを傷つけてしまう可能性があります。また、後処理においてもただ不純物を取り除いているわけではありません。長持ちする方が商品価値は高まりますから、添加物をいれて劣化しにくいようにするなど、一般的に言われているディーゼル燃料の課題をクリアしています。

世界初、ダカールラリー完走で見せた実力!


──レボインターナショナルはどうして使用済み食用油の燃料化に取り組もうと思われたのですか?どのような歴史を持つ企業なのでしょう?

もともとの母体はボランティア団体です。ふるさとの川や湖を環境汚染から守ろうという趣旨で使用済みの食用油の引き取りをしていて、取扱量も1日1軒など個人の負担のない範囲で活動していたようです。次第に活動が広がるにつれて人も増え、人の善意に頼るには限界があるし、今後さらに活動を広めていくために会社組織にしよう、ということで、レボインターナショナルが設立されました。

──地域の環境保護活動から始まったのですね。創業者は化学関係の方だったのですか?

いえ、代表の越川は建設業界やレース業界出身です。

──では、どのように「C-FUEL」は誕生したのでしょう?

越川はバイオディーゼルの生みの親とも言われている故・清水剛夫京都大学名誉教授と面識があり、そのときに使用済みの天ぷら油から燃料をつくれると聞いたのがきっかけで、「自分でもつくってみよう」と考えたそうです。

──とても行動力がある方なんですね。

今でこそ燃料製造には関わっていませんが、当時は実験室にこもってビーカーを振りながら試行錯誤していたようです。燃料製造の知識ゼロからスタートして、清水先生の多大なるご尽力もあり国内トップシェアになったのは、自社のことながらすごいなと思います。ただ、簡単な道のりではなかったようです。

──どんな困難があったのですか?

バイオディーゼルは軽油ではなく、軽油代替燃料です。世の中に広めようとしたときに、認知度も低いこともあいまって、乗用車に入れたら壊れるんじゃないか、など不安の声もたくさんありました。もちろん「C-FUEL」の品質には自信があります。そこで、どうしようかと思案したときに、越川が思いついたんです。「レースに出よう」と。

──レース業界にいた越川さんらしいアイデアですね。 

2005年から参戦をはじめ、「2005ツインリンクもてぎEnjoy耐久レース」「K4-GP富士1000km耐久レース」はいずれも完走。2006年の「アジアクロスカントリーラリー」は、バイオ燃料100%では世界初となる完走もやりとげました。そして、2007年には「ダカールラリー」、いわゆるパリダカに参戦。片山企画・大阪産業大学と大阪TOYOTAとタッグを組み、こちらも無事完走。高品質を証明する実績になったと思います。

 

画像提供:株式会社レボインターナショナル

 

使用済み天ぷら油は、飛行機の燃料になれるか


──ところで東さんは、もともとのご専攻は何ですか。

大学では錯体化学と界面化学の2種類を学んでいました。錯体化学はX線解析や構造解析をしていましたね。界面化学は気体、個体、液体の面に作用する力の研究です。

──いまのお仕事は大学時代の専攻を活かせる分野ですね。研究職として入社されたのですか?

最初は使用済み食用油の引取業務でした。トラックに乗って飲食店やお弁当屋さんから油を集める仕事です。


──研究職ではなかったんですね。

燃料開発への興味はありましたが、会社の事業内容に惹かれて入ったので、自分にできることは何でもやろうと思っていました。前職で危険物タンクローリーの免許を取っていたこともあり、燃料の配送も担当しました。

──レボインターナショナルの出会いはどのような形だったのですか?

大学を卒業してすぐ自衛隊に入りました。自衛隊では、退職者および希望者に向けて定期的に就職説明会を開いています。転職を考えていたわけではなく、ほんの軽い気持ちで、民間企業ではたらくとはどのようなものなのかと参加したところにレボインターナショナルが出展していました。「リサイクル」と書かれた赤い三角コーンが目に留まり、話を聞いてみると、使用済みの天ぷら油を燃料にする事業をしていて、実際にバイオディーゼルを燃料にしたバスが京都市で走り回っている。今後は大阪や兵庫、日本全国に広めていきたいんだと、当時の採用担当者の方がかなり熱意を持って話してくれたんです。事業の面白さとその熱意に触れて、転職の気持ちがどんどん大きくなるのを感じました。

──研究職に配属になったのはどういう経緯ですか。

2年ほどタンクローリーの仕事をしたあと、今度は燃料研究に力を入れていくので研究補助を探している、という話が持ち上がったんですね。大学で学んでいたことを活かせそうですし「ぜひ自分にやらせてください」と。

──そこから研究職のキャリアが始まるんですね。

初めは指示された実験を繰り返し行い、データをまとめていましたが、続けていくうちにいろいろと任せてもらえるようになりました。事業拡大に伴い自社工場を建設することになった際はプラント設計も担当しました。研究と兼務で8年ほど工場長も務めました。現在は本社に戻り研究一本となっています。

──どんな研究に取り組んでいるのですか?

軽油の代替燃料ではなく、軽油やナフサ、ジェット燃料などを使用済みの天ぷら油からつくろうとしています。

 

画像提供:株式会社レボインターナショナル

 

──使用済みの天ぷら油が、飛行機の燃料になるんですね!

原油や石油は、炭化水素です。一方油も、分子的には長い鎖列をもった炭化水素で、含酸素化合物が含まれた燃料と言えるので、そこから酸素を引き抜いてしまえば理論上はつくることが可能です。もちろん簡単にはつくれないのですが。

──実用化の先行事例はあるのですか?

日本ではまだだと思います。欧米であれば、使用済みかどうかはわかりませんが、油脂から軽油などが製造されて、実際に販売されています。弊社としても商業化を目指して取り組んでいる真っ最中ですね。

──新たな燃料開発は夢がありますね。

新燃料は、海外にある石油化学製品をつくる設備でも、高温高圧環境で触媒さえつくってしまえば出来てしまうものなんです。しかし我々は、より低圧で温和な条件でつくれるものを開発しています。誰でも知っている処理方法は真似をすればいいので簡単ですが、誰も知らないものは、なかなか成功しません。だからといって辛いと感じるわけでもないですね。研究、とくに基礎研究などは、ほとんど日の目を見ないものだと思いますが、1000試して1つでも発見があれば、続けられる仕事だと思っています。

自分の夢も、地球環境も、諦めないことがなにより大切


──これから取り組んでいく研究について教えてください。

使用済み天ぷら油を原料とするバイオジェット燃料製造は、NEDO事業に採択されました。助成金をもとに商業化を加速させていきます。この取り組みは日揮ホールディングスさんとコスモ石油さんとの共同開発で、バイオジェット燃料の利用拡大に貢献できると期待しています。船にもバイオ系の燃料を使っていこうという動きもあり、環境に対する意識の広がりをブームで終わらせないようにしたいですね。

また、会社としては天ぷら油以外の新たな原料による燃料製造も進めています。たとえば、川に流れている廃プラスチックや、需要のない間伐材からも燃料は精製できるんです。ベトナムでは新たな油脂原料をつくるための栽培も始まっています。

──今のお仕事にはどういうお気持ちで取り組まれているのでしょうか?

「負の遺産を子孫に残したくない。」そんな気持ちで取り組んでいます。

人間が生活を営んでいくうえで、環境を全く破壊しないということは不可能だとしても、少しでもマシな状態へと修正するくらいのことはできるのではないか、とそんな想いですね。

頭や机上で考える「環境問題」と実践の中でわかる「環境問題」にはギャップがあります。

自分もリサイクル活動の現場の仕事から燃料開発、プラントの運営などいろいろと実践していく中で、実感として理解が深まってきました。特に油の引き取りや営業を経験したことは大きかったです。

──最後に、将来研究者を目指す読者のみなさんにメッセージをお願いします。

諦めないでください、と伝えたいです。私自身、紆余曲折あって今の仕事に就いています。

学校を出てそのまま企業なり大学なりでストレートに研究者になるのも一つの幸せなキャリアであるけれど、私のように回り道しても、こうしてやりがいのある研究の仕事にたどり着くこともある。

ですから、ちょっとでも新しいことをしてみたいと考えていて、何かチャンスに出会ったら思い切って飛び込んでみたらいいと思います。

また、努力は報われる、ということもあります。研究から離れていた時期も得意分野の読書はしていましたし、仕事も、来たものをなんでもやってみて、しがみついていたのを誰かが見てくれていたというのもあるかもしれません。諦める必要は全くないと思います。

<編集部より>

廃棄していたものを燃料として活用する技術の開発――。
地球がこれからも長く住みよい場所であり続けるために、科学技術が果たす役割は本当に大きいです。実用化し社会に普及させていくことも含めて、理系人がすべきこと・できることはたくさんあると感じました。

レボインターナショナル様の益々のご発展を心から応援しております!貴重なお話をありがとうございました。

著者プロフィール:

リケラボ編集部

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