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フリーランスで活躍できる管理栄養士になるには?│管理栄養士・棚橋伸子

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管理栄養士の棚橋伸子です。フリーランスの管理栄養士として活動を始め、現在12年目となりました。リケラボでは「理系すぎるお料理レシピ」シリーズの記事監修などを担当しています。

フリーランスで仕事をしていると、企業や施設にお勤めの管理栄養士の方や、資格を持ちつつも現在は休職中の方、就職活動中の管理栄養士養成校の学生などから「棚橋さんのようにフリーランスの管理栄養士として生計を立てられるようになるにはどうしたらよいでしょう?」といった相談を受けることが少なくありません。そこで今回はこの場を借りて、私なりに考えるフリーランスの管理栄養士として活躍するためのポイントや大切な心構えについてお伝えしたいと思います。

△講師を務める子ども向け料理教室の様子。その他にフリーペーパーの連載、大学教員、企業の商品開発など携わる仕事は多様です。

 

これまでのキャリア

はじめに私自身のキャリアについてもう少し詳しくご紹介させていただきます。大学卒業後、管理栄養士および栄養士の養成大学・短期大学の助手として6年勤務しました。また、社会人数年目になると、管理栄養士の資格を持っているという事で、知人から様々な仕事の相談をされる機会も増えてきました。個人的な栄養相談から料理教室の開催依頼、あるいは食品・飲食関係の方からの商品開発の相談などをいただくなかで、普段の学校業務とは違う自分の知識の活かし方ができるチャンスが世の中に数多くある事を知りました。

一方でこの頃は、研究教育活動にも取り組んでおり、時間的な余裕は全くなく、上記のような仕事の依頼を受けることはほとんどできませんでした。さらには同じ頃、同居していた祖母の病気が進行し、介護が必要な状態になりました。体の弱い母のサポートも必要で、介護の手伝いも行いながらの凄まじく忙しい日常の中で「とにかくもっと時間が欲しい!」「もう少し幅広い仕事にチャレンジしてみたい!」という気持ちが芽生え、学生時代から強く持っていた海外への憧れもあり、30歳になる前にやってみたい事にチャレンジしてみようという思いから思い切って大学助手の仕事を辞めました。

辞めた後「1年間は、祖母の介護の手伝いをしながら、自分の好きな事にチャレンジする!」とだけ決めていました。この決断が今の自分の仕事のスタイルを作る原点となりました。具体的には短期留学をしたり、好きな料理の勉強をしたり…ということを考えていたのですが、当初の予定は早々に変更になります。

変更のひとつ目は、偶然にもちょうど同じタイミングで親友も仕事を辞めていたため、こんな貴重なタイミングは二度とないとばかりに二人でできるだけたくさん海外旅行に行こうと決めたこと。もうひとつは、恩師の紹介で、立ち上げたばかりの食品系のベンチャー企業のお手伝いをすることになったことです。やりたいことだけやるはずがなぜすぐに企業での仕事を始めることにしたのか…? 頼まれると断れない性格、というのもありますが、この時に出会ったベンチャー企業の創業メンバーに惹かれたからというのが一番の理由です。今まで自分がいた世界では出会う機会がなかった経歴や考え方をもつメンバーにとても魅力を感じ「面白い事が経験できそう!」という直感が働きました。そこから始まったのが、常にPCを持って海外へ出かけ、日本と連絡をとり、仕事をこなしながら旅行も楽しむ日々。今まで決まった場所に出勤し働いていた自分にとって、リモートワークは新しい感覚で、働き方の可能性が広がる経験でした。

また、当時の所属先のベンチャー企業では副業も認めてもらえたため、管理栄養士の養成校で非常勤講師として週に数日勤務するようにもなりました。学生時代、真面目に勉強に取り組むタイプの学生ではなかったので、大学助手を辞めて以降、また教員として働くとは思っていませんでしたが、この仕事は今でも続けており、現在も大学・専門学校の非常勤講師として「調理学実習」や「フードスペシャリスト論」を担当しています。

残念ながら所属していたベンチャー企業では事業を成功させる事は出来ず、立ち上げから3年で解散してしまいました。ですが振り返るとあの頃が今までの人生の中で一番働き、多くの経験ができた期間でした。

企業が解散となった後も、新たに就職活動をしようという気持ちはありませんでした。同じ頃、母が大病を患い、他界した祖母に続き祖父の介護も必要になったことや、自分自身の結婚という環境の変化、また、上述のとおり講師の副業もしていたので、そのタイミングで再び企業勤めというのはあまり適切な選択肢には思えなかったのです。

そこから結果的にフリーランスでの活動が始まるのですが、幸いなことにベンチャー企業時代のご縁が色々あり、今までこれといった営業活動をすることなく、様々なお仕事のお声がけをいただいてきました。

このように私自身のフリーランスという道を進むことになった背景には、自分の意志のほかにも家族の事や周囲の環境変化が大きく影響しています。

 

仕事のリアル ~苦労は? 収入の安定は?~

現在の仕事のメインは週2日の教員とフリーペーパーでのレシピ連載です。このレシピ連載は今年で11年目になり、スタート時よりページ数も増え、スタッフにも恵まれ、毎月楽しく撮影をさせていただいています。ベンチャー企業時代に、BSのテレビ番組に1年間レギュラー出演していたご縁もあり、TV、雑誌等メディアのお仕事にも時々声をかけていただき、貴重な経験をさせていただいています。また、料理教室講師、商品開発等、自分の得意分野を生かした仕事も多数いただいています。

△商品開発分野の仕事例。日本薬科大学特命講師として産学連携商品の開発にも参画しており「花粉症対策ラーメン」「日焼け対策ラーメン」などの「薬膳ラーメン」を開発中です。写真はその第5弾「『ぷるぷる麺疫力』コロナに負けるな!医療者応援冷やし麺」。横浜市内の新型コロナ軽症者受け入れ施設に無償で提供されたのち、好評につき東京都内の有名店での期間限定販売も決まりました。

フリーランスというと「マイペースに気ままに働けそう」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。もちろん、それぞれのスキルや志向によって仕事の量や進め方を自分で調整できる面はありますが、私個人の意見としてはフリーランスでそれなりに稼ごうとするならば、一番必要だと感じるのはとにかく体力!! 体が資本です。自分自身の健康管理は怠ることなく、しっかり行う事が重要です。

そして、一番大変なのがスケジュール管理です。いくつも仕事を抱え、同時進行している事が多いので、効率よく仕事をこなしていくために、常に数日先、来週、その先を考えながら行動しなければなりません。長年担当させていただいているレシピ連載のお仕事でも、常にスケジュールを頭の中に描きながら日々行動をしています。今店頭に置いてあるのが7月号の誌面だとしたら、約4か月前の3月頃から実際は作業が始まっています。レシピの連載=レシピ作成、撮影だけではなく、様々な仕事が付随しているのです。

例えば、

・レシピ案の作成
・撮影の打ち合わせに向けてレシピ試作・レシピ作成
・撮影用コーディネートの検討・資料作成
・撮影用コーディネート資材の購入・レンタル
・クライアント、制作スタッフとのレシピ打ち合わせ
(打ち合わせ内容により変更が出た場合は対応)
・誌面のコラム原稿提出
・レシピ撮影
・撮影後の資料提出
(レシピデータ・栄養計算データ・Webサイト用データ等)
・校正作業(数回)

上記の流れを経て、入稿→印刷→誌面が店頭に並ぶことになります。店頭に並んだ誌面の読者の方から、時々レシピの質問が入ることもあり、そうしたことにも対応します。

△メインの仕事のひとつ、毎月20万部発行のフリーペーパー「バリュープラス」。

このように、1冊の誌面の制作に数か月かかるため、毎月連載をしているので常に数号分のお仕事が同時に進んでいます。頭の中にはいつも仕事のことがあるようで、プライベートで出かけても、食器や雑貨売り場に足が向いてしまったり、食品売り場で新しいものを見かけると直ぐに試してみようとしたり、仕事目線になってしまうのが日常です。

ちなみに、月1回ペースで行っている撮影当日の流れはこんな感じです。

7:30~ 準備(食材下ごしらえ等)
9:00~ スタッフ集合(機材搬入〜撮影機材のセッティング)
10:00~ 撮影開始 料理撮影8品程度

お昼休憩30分程度

18:00~ 手元カット撮影
19:00 撮影終了
19:30 撤収作業終了
〜23:00 その後片付け

△多い時は9名もの人数で行う商品撮影。細かな調整を行いながら、より美味しくみえるように工夫していくのも仕事のひとつです。

当日の撮影に加えて前日にも、撮影に使用する食材の調達、食器や小道具、器具の準備等の作業に1日かかるため、多くの場合、撮影には丸2日費やしているイメージです。

この雑誌連載の撮影は、11年間、毎月行っていても、楽しさの中にも毎回緊張感があるためとても疲れます。歳を重ね体力なくなってきたのかも…? と感じたりもします。

このような感じでレシピ連載の仕事をこなしながら、教員としての仕事、料理教室、商品開発、単発でのお仕事依頼を上手にスケジュールに入れ込み対応しています。

△料理教室でのひとコマ。

また、フリーランスというと「収入が不安定なのでは?」というイメージを抱く方もいるでしょう。実際のところ、たとえば昨今の新型コロナウイルスの影響は、私の仕事にもありました。大人数が集まる料理教室が軒並み中止になり、学校の授業もスタート時期が大幅に延期になったなどです。ですが私の場合、仕事の種類が1分野だけでなかったことが、収入面でのダメージを少なくしてくれました。全ての仕事がキャンセルになったわけではなく、緊急事態宣言中も、STAYHOMEしながら仕事をすることができました。

これからフリーランスとして仕事をしようと考えている方には、是非、リスク分散を考え、多方面で仕事ができるような力を身に着けて欲しいと思います。1つの分野を極める事は大切ですが、それだけでは、何かあった時に潰れてしまう可能性があるという事です。また、フリーランスで、1本の仕事だけで生計を立てるのは、かなり難しい事でもあると思うからです。

私は、管理栄養士以外にいくつも資格を取得しました。それは、自分の興味ある事を勉強し、肩書を増やす事で、自分のアピールポイントをわかりやすくするためです。連載レシピの仕事内容を見て気が付いた方がいるかもしれませんが、フードコーディネーターやフードスタイリストが本来行う仕事も私が担当しています。管理栄養士以外の肩書がきっかけとなり、仕事の幅も広がり、収入アップにも繋がっています。

 

フリーランスとして働く事を目指す為に心がけて欲しい事まとめ

最後に、これからフリーランスとして働く事を目指す方に、心がけて欲しい事を3つお伝えします。

 
①コミュニケーション能力を磨く!

コミュニケーション能力の豊かさは、仕事の幅を広げる事に繋がります! フリーランスの場合、営業活動、交渉事も基本的には自分で行う事になります。人に何かを伝える、人の話を受け取る、この両方の力を是非磨いてください。言葉使いや態度、表情、声のトーンやスピード等は、人に何かを伝える時に受け手の方があなたの印象を決めるポイントになります。話を受け取る場合には、話し手に対する態度や目線、相手の気持ちを汲み取ろうとしているかどうかという姿勢がポイントになると思います。印象の悪い人と一緒に仕事がしたいと思う人は少ないですよね? 良い人間関係を構築し、仕事の幅をひろげてくためにも、自分自身の事をしっかり理解し、相手の事も理解しようとする姿勢を持ってください。そして、相手の事を思いやる気持ちを持つ事、それがコミュニケーション能力を磨く第一歩になると思います。

△薬膳ラーメンの商品開発チームと。仲の良いメンバーと一緒に、現在第5弾を開発中。

私は、人に対する興味が深いタイプなので、人の話を聞くのが好きです。その中から、自分との共通部分を見つけ出し、そこから話題を広げ、自分を知ってもらい安心感を持ってもらう、相手との一体感を作り出すという流れができるようになりました。安心感を持ってもらうというのは、仕事を任せるパートナーを選ぶうえで、重要なポイントになると思います。その時に、仕事に直結しなかったとしても、相手に印象を残す事ができれば、何かの時に思い出してもらえるかもしれません。次の仕事のご縁に繋がる可能性もあります。何が仕事に繋がるかわかりませんので、日々の人との出会いは大切に過ごしてください。

 
②自分の引き出しを増やす!

自分の中の引き出しを増やしてください。経験が自信を生みます! どんな方法でも良いと思います。人生に無駄な経験はないと思います。私は学生時代から「百聞は一見に如かず」という信念を持ち、趣味の旅行を通して食文化を学んできました。旅先で、その土地のものを実際に食す事により感じられる事が沢山あります。風土を感じながら食す事で体験型学習をしてきました。学校勤務時代に取り組んでいた研究教育活動では、主として調理学、調理科学的な研究を行っており、その時は研究が苦痛に感じる事も多々ありましたが、研究を通して、食べ物に対して様々な角度から分析しようとする力が身についていたので、食べるという1つの行為を通して、常に多くの知識を得ていたと思います。

△時には2泊3日で10数杯も同じ料理を食べることも。

1つの料理や食材から学べる事は、見方次第で無限にあります。様々な事を連想し、疑問を持つ、そして調べてみる…この繰り返しで知識を増やしていくのです。例えば、1つの料理が目の前にあれば、その料理の作り方やレシピ、料理の起源や歴史、どんな時に何故食べるのか、栄養はあるのか、何でこの組み合わせなのか、どうしてこのタイミングで加熱を止めるのか等の疑問を持ち、それを紐解いていくような作業を常に行い、自分の知識として蓄積させていけば、いつのまにか知識の引き出しが沢山増えますよね。自分が興味を盛った事、実際に経験した体験は、机上で学んだものとは違う感覚で人に伝えることができるようになると思います。

「食す」という行為を例にお話ししましたが、これはどんなテーマでも良いと思います。日常の中で興味や疑問を持った事はしっかりと追及し、納得し自分のものにしていく事を繰り返し、経験、知識という自分の引き出しを増やしてください。

 
③どんな勉強、仕事に対しても真面目に取り組むこと

何が次の仕事に繋がるかわかりません。いつでも真剣に、どんな勉強、仕事でも全力で真面目に取り組む姿勢を忘れないでください。

社会に出て管理栄養士として仕事をする中で、学生時代、真面目に勉強に取り組まなかった事を後悔する場面に何度もぶち当たりました。学生時代の教科書をめくり、勉強し直した事も沢山あります。学生時代に「栄養士になるのにこれ関係あるの?? あまり好きな科目じゃない…」という理由でしっかり取り組まなかった微生物学の知識が、レトルト食品の商品開発時に必要になり、必死に教科書や専門書を見返した思い出があります。この時に、学生時代の事を本当に後悔しました。もし頭の柔らかい学生時代にこの時と同じ必死さで勉強をしていたら、今頃どれだけ知識が増えていたことか、どれだけ仕事の幅が広がっていたことか…と、そう思います。

今は、あの時自分が経験した学生時代への後悔をして欲しくないという思いから、学生にもこの話をしています。もちろん既に社会人の方でも、必死になるのに遅すぎるということはありません。学校の勉強に限らず、社会での出来事も、どんな経験、勉強も無駄になる事はないと思っています。今、目の前にある事には真剣に取り組み、知識、経験値を増やしていきましょう。


自分が描く将来の働き方に向かって、今できることからコツコツ始めてみてください。私がフリーランスとして働き始めた10年以上前は、あまり周りにフリーランス管理栄養士はいませんでした。これからは働き方の多様化も進み、活躍できる分野も更に広がってくると思います。皆さんの未来が輝かしいものになることを祈っています。

著者プロフィール:

棚橋 伸子

管理栄養士/フードスタイリスト

国際薬膳師、中医薬膳専門栄養士、日本野菜ソムリエ協会 野菜ソムリエ、日本ニュートリション協会公認 ビジネスサプリメントアドバイザー 。管理栄養士養成施設非常勤講師。 栄養バランスを考慮したヘルシー料理を得意とし、企業の商品開発業務等にも携わる。中医学理論に基づいた薬膳料理の提案も得意とする。

facebookページ:管理栄養士棚橋伸子のすまいるきっちん
https://www.facebook.com/smilekitchen

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