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実験レシピ 逆転写(RT)-PCR法によるRNAの解析 2/2 逆転写産物を鋳型としたPCR(RT-PCR)

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逆転写反応~1stストランドcDNAの合成

細胞内で起こるあらゆる生命現象は、「ゲノムDNAから転写されたRNAの情報を頼りに、機能をもったタンパク質が作られる」ことで生じます。セントラルドグマと呼ばれる、この「DNA→RNA→タンパク質」の一方向性の連続した合成反応系は、生命/生物を規定する大原則のひとつとして考えられています。

一方で、「RNAをもとにDNAを合成する細胞内反応(逆転写反応:Reverse transcription (RT))」が発見され、その責任分子として、ウイルスを由来とする「逆転写酵素(Reverse transcriptase)」が単離されました。このセントラルドグマと逆行する反応の発見を機に、試験管内の逆転写反応が可能となり、化学的に不安定なRNA分子中に刻まれている遺伝/配列情報が、安定的なDNA 分子にコピー(逆転写)できるようになりました。逆転写技術は、トータルRNAやmRNAをもとにした「cDNAライブラリーの作成」や「遺伝子発現の定量的な解析」などで広く応用されています。

ここでは、細胞から抽出・精製したトータルRNAを鋳型とした「逆転写反応」をご紹介します。逆転写酵素を用いて、鋳型RNAと相補的な配列をもつ1本鎖のDNA(1stストランドcDNA)を合成します。

逆転写反応に用いるDNAプライマーの種類は、以降のRT-PCR解析の目的によって、以下から1つ選択します。

●ランダムヘキサマー
A/G/C/Tからなるランダム6塩基配列をもった、46種類のヘキサマーの混合液。各ヘキサマーが、RNAのあらゆる部位にアニーリングするため、全てのRNA種が逆転写反応の鋳型となる。得られるcDNAの鎖長は、鋳型RNAに対するランダムヘキサマーの相対量比によって決まる。

※解析対象の特異性は、以降のPCRで用いるプライマーによって付与することが多い。

●オリゴ(dT)プライマー
連続した12〜18個のデオキシチミジン(dT)からなるプライマー。真核生物のmRNAの3’末端にあるポリ(A)配列と特異的にアニールするため、トータルRNA中のポリ(A)をもつ全てのmRNAが逆転写反応の鋳型となる。
※長鎖のmRNAやG/Cリッチ配列をもつmRNAは、逆転写反応の途中停止により、完全長cDNAの合成が達成されないことがある。

●遺伝子特異的プライマー
解析対象RNAの特定の部位に配列特異的にアニールするプライマー。

※このプライマーで得られるcDNAは、ランダムヘキサマーやオリゴ(dT)プライマーの場合とは対照的に、トータルRNA中の他のRNA/遺伝子/配列の検出には使えない。
→ 1つの検体で複数の遺伝子をスクリーニングするような解析には不適である。

※逆転写反応は50℃前後で行われるため、プライマー3’末端部の部分的なホモロジーによりミスアニーリングが生じることがある。
→逆転写反応産物中に、ミスアニーリング由来の産物が混在することがある。

 

<実験の手順>

* SuperScript III 1stストランド合成キット(invitrogen社)を用いた例をもとに解説します。

1. キット内の試薬のうち逆転写酵素以外のものを室温で融解する。
※逆転写酵素は使用する直前まで冷凍庫内で保管しておく。

2. PCRチューブ中で、以下の4種の試薬を混合して、A液(RNA/プライマー混合液)を調製する。目的に適したプライマー種を1つ選択し、反応系に加える。

A液(2反応分)
○トータルRNA溶液…n μL(5 μg 未満)
○プライマー溶液(以下から1種を選択)…2 μL
・50 ng/μL ランダムヘキサマー
・50 μM オリゴ(dT)プライマー
・2 μM 遺伝子特異的プライマー
○10 mM dNTP混合液…2 μL
○DEPC 水(RNaseフリー水)…to 20 μL

3. 混合液を65°Cで5分間インキュベートし、氷上で1分間以上静置する。

4.以下の5種の試薬を上から順に混合し、B液(酵素混合液)を調製する。
※逆転写酵素の代わりにDEPC水を加えた対照試料(BΔRT液)を同様に調製する。

B液(1反応分)
○10X RT バッファー…2μL
○25mMMgCl2溶液…4μL
○0.1MDTT溶液…2μL
○RNaseOUTTM (40 U/μL)…1μL
○SuperScriptTM III RT 逆転写酵素(200 U/μL)…1μL

5.A液(10 μL)とB液(10 μL)を穏やかに混和する。
※BΔRT液も同様に混和し、反応させる。

6. プライマー種に応じた反応条件で、インキュベートを行う。(逆転写反応)

・ランダムヘキサマー:①25℃で10分間 → ②50℃で50分間
・オリゴ(dT)/遺伝子特異的プライマー:50℃で50分間

7. 85℃、5分間のインキュベートを行い、氷上で冷却する。(逆転写反応の停止)

●RNase HによるcDNA-RNAハイブリッド鎖の分解
逆転写反応産物の1stストランドcDNAは、鋳型RNAと安定的にDNA-RNAハイブリッド鎖を形成します。このヘテロ2本鎖は、以降のPCRの熱変性(94℃)でも十分に乖離しないことがあり、PCRの感度を低下させます。DNA-RNA鎖中のRNA鎖を分解する活性をもつRNase Hを用いることで、1本鎖状態の1stストランドcDNAを得ることができます。

8. 逆転写反応産物に 1 μL のRNase H(2 U/μL)を加えて、37°Cで20分間インキュベートする。
※BΔRT液由来の対照産物も同様に処理する。

9. 処理後のcDNA溶液は、-20℃で数ヶ月間以上、保存することができる。

 

逆転写産物を鋳型としたPCR(RT-PCR)

1stストランドcDNAを鋳型として、TaqDNAポリメラーゼを用いた通常のPCRを行います[参照:PCR3/4の項]。PCR産物をアガロースゲル電気泳動などで検出することで、もとの細胞試料に目的のRNAが存在していたかを知ることができます[参照:アガロース電気泳動の項]。

※得られた1本鎖cDNAのうち約10%(2 μL)をPCRに用いる。BΔRT液由来の対照産物も同様にPCRに供する。

<実験のポイント>
●PCR産物が、混入ゲノムDNA由来の増幅断片ではない(cDNAを鋳型とした増幅産物である)ことを示す。

○B液由来のPCR産物で得られた増幅産物が、BΔRT液由来の対照PCR産物では得られないことを示す。
→B液由来の産物が逆転写反応/cDNAを介したPCR増幅産物、すなわちRT-PCR産物であることが明らかになる。

○mRNA発現解析を目的としたRT-PCRでは、イントロンを挟む2つのエクソンの各々にアニールするプライマー対を設計し、これを用いてPCRを行う。
→cDNAを鋳型としたmRNA由来のRT-PCR産物は、混入ゲノムDNA由来の増幅産物よりもイントロンの分だけ鎖長が短くなり、両者が容易に判別できる。

●1本鎖の鋳型DNAへのミスアニーリングから生じる非特異的な増幅を防ぐ。

○1本鎖DNAを鋳型としたPCRでは、最初の熱変性の前にプライマーのミスアニーリングが生じ、伸長反応が開始されてしまうことがある。
→変性温度に達するまでは、伸長反応が開始されないPCR反応系をデザインする。
→ホットスタート法(Taqポリメラーゼを熱変性時に添加するプロトコルならびに抗Taqポリメラーゼ抗体の使用など)を検討する。


RT-PCR法の開発によって、細胞内に僅かに存在するRNAが、間接的に、検出可能なコピー数まで増幅できるようになりました。細胞内の特定のRNA分子の発現動態はもちろんのこと、細胞に感染した微生物由来のRNAまでもが検出可能となり、RT-PCRは今や細胞の生命活動をスナップショットで捉えるために、最も汎用されている代表的な技術になっています。

 
*監修
パーソルテンプスタッフ株式会社
研究開発事業本部(Chall-edge/チャレッジ)
研修講師(理学博士)

この記事は、理系研究職の方のキャリア支援を行うパーソルテンプスタッフ研究開発事業本部(Chall-edge/チャレッジ)がお届けする、実験ノウハウシリーズです。

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著者プロフィール:

リケラボ編集部

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