リケラボ理系の理想のはたらき方を
考える研究所

化学実験、バイオ実験のノウハウなど、毎日の実験・分析に役立つ情報をお届け。

ウェスタンブロットによるタンパク質の発現解析(3/3)ウェスタンブロットによるタンパク質の検出|リケラボ

ウェスタンブロットによるタンパク質の発現解析(3/3)ウェスタンブロットによるタンパク質の検出

リケラボ実験レシピシリーズ

Twitterでシェアする Facebookでシェアする LINEでシェアする

前項ではSDS-PAGEでタンパク質を分離する方法をご紹介しました。ここでは、SDS-PAGEゲル内で分離されたタンパク質をメンブレンに転写し、抗体を用いてそのタンパク質を検出するウェスタンブロット法を概説します。抗体はものによって抗体価や特異性に大きな差があり、事前に抗体液の希釈率(抗体の最適濃度)を予備実験で検討することがとても大切です。

ウェスタンブロットの結果、目的タンパク質の分子量と合致する泳動位置にバンドが検出されることが予想されますが、翻訳後修飾やタンパク質分解を受けた結果、推定される分子量と異なる位置にバンドが検出されることも珍しくありません。逆に、目的タンパク質と同程度の分子量をもつタンパク質が、抗体の非特異的結合によりノイズとして検出されることもあります。得られたバンドが、目的タンパク質に由来するか検証を求められることもあります(遺伝子ノックアウト実験など)。

(1)メンブレンへのタンパク質の転写

ブロット装置を用いて、SDS-PAGEゲル中からメンブレン上にタンパク質を移しとります。標準的に用いられているセミドライ式のブロット法は、転写に要する時間が短く、バッファー使用量が少ないといった利点があります。PVDFやニトロセルロースのメンブレンが広く用いられ、特にPVDFメンブレンはタンパク質との吸着力が強く、破れにくい特徴をもちます。転写には中性域バッファー(pH 8付近)が標準的に用いられる一方で、120-150 kDa以上の高分子量タンパク質の転写には、アルカリ性の転写バッファーが推奨されます。ここでは、主に120 kDa以下のタンパク質を対象とした、セミドライ式ブロットのプロトコール例をご紹介します。

試薬・器具の準備

  • セミドライ式ブロット装置
  • 電源装置
  • プラスチックトレイ
  • 濾紙(ゲルと同等サイズ, 6枚, Whatman 3MMなど)
  • メンブレン(PVDF, ゲルと同等サイズ, 1枚)
  • 転写バッファー(pH 8)192 mM グリシン, 25 mM Tris, 20% メタノール)
  • メタノール
  • PBS-Tween(137 mM NaCl, 2.7 mM KCl, 8.1 mM Na2HPO4, 1.5 mM KH2PO4, 0.1% Tween 20
  • ピンセット

 

実験プロトコール

  1. SDS-PAGEゲルと同様の形・サイズのPVDFメンブレン(1)と濾紙(6)を用意する。
  2. メンブレンをプラスチックケース内でメタノールに1分間ほど浸したのちに、転写バッファーに10分間ほど浸けておく。
  3. プラスチックケース内で3枚の濾紙を転写バッファーに浸す。ブロット装置の陽極板上にこの3枚の濾紙を重ねて置く(気泡が入らないように注意!)[下図参照]
  4. メンブレンをこの3枚の濾紙の上に重ねて置き、その上にSDS-PAGEゲルを乗せる[下図参照]
  5. 新たに3枚の濾紙を転写バッファーに浸して、ゲルの上に重ねて置く[下図参照]
  6. ブロット装置の陰極板を最上部の3枚の濾紙の上に乗せ[下図参照]、一定電流 (50~100 mA) で1時間ほど通電する。
  7. 電源を切り、分子量マーカーのバンドがメンブレンに転写されたことを確認する。
  8. メンブレンを取り出して、PBS-Tweenに浸ける。

BioRenderを用いて作図


(2)抗体反応による目的タンパク質の検出

メンブレン上に転写されたタンパク質に対して、抗原-抗体反応を行う。抗体の非特異的な吸着を防ぐために、スキムミルク(1~10%)BSA(1~3%)あるいはゼラチン(1~3%)を用いたブロッキング処理を行う。過剰なブロッキングは、特異的な抗体反応まで阻害してしまうので注意する。

ブロッキング処理後の1次抗体反応では、抗体の濃度が高すぎると、目的タンパク質とは異なるタンパク質やメンブレン自体に抗体の非特異的結合が生じてしまい、検出時のノイズになります。逆に、抗体濃度が低すぎると、目的タンパク質の検出が困難になります。

2次抗体反応では、西洋ワサビ・ペルオキシダーゼ (HRP) や蛍光分子などで標識された2次抗体を使用します。反応に用いた1次抗体がどの動物種から産生されたものかを確認し、その1次抗体を抗原として認識できる標識抗体を2次抗体として選択しなければなりません[下図 左を参照]。例えば、使用した1次抗体がウサギ由来のIgGの場合には、標識された抗ウサギIgG抗体を2次抗体として選びます。

HRP標識2次抗体を用いた場合には、抗体反応を終えたメンブレンを基質溶液で処理することで、HRP活性による化学発光が得られます。得られた2次抗体由来のシグナルは、CCDカメラで検出します。シグナルの定量的な解析は、直線性が保持されたダイナミックレンジ内で行うことを原則とします。

試薬・器具の準備

  • プラスチックトレイ
  • PBS-Tween
  • 振盪機
  • ブロッキング溶液(5% スキムミルク, 0.5% BSA, PBS-Tween
  • ピンセット
  • プラスチックバッグ(ハイブリダイゼーション用)
  • ホットシーラー
  • 1次抗体液(ブロッキング溶液をPBS-Tween10倍希釈した液中に、アジ化ナトリウム(0.05%)と適当量の抗体原液を加える)
  • 2次抗体液(ブロッキング溶液をPBS-Tween100倍希釈した液中に、適当量の抗体原液を加える)
  • 化学発光検出試薬
  • CCDカメラ付き化学発光検出装置

実験プロトコール

  1. プラスチックトレイ中のブロッキング溶液(50~100 mL)に、タンパク質が転写されたメンブレンを浸して振盪する(室温で1時間または4度で一晩)。
  2. メンブレンを取り出し、PBS-Tweenに浸けて、室温で3分間振盪する。
  3. 新しいPBS-Tweenにメンブレンを浸けて、室温で3分間振盪する。この操作をもう1回繰り返す。
  4. ホットシーラーを用いて、メンブレンを1次抗体液とともにプラスチックバッグ内に封入し、室温で90分間または4度で一晩振盪する。
  5. メンブレンを取り出して、プラスチックトレイ中のPBS-Tweenに浸す。室温で5分間振盪する。
  6. 新しいPBS-Tweenにメンブレンを浸けて、室温で3分間振盪する。この操作をあと3回繰り返す。
  7. ホットシーラーを用いて、メンブレンを2次抗体液とともにプラスチックバッグ内に封入し、室温で45分間振盪する。
  8. メンブレンを取り出し、プラスチックトレイ中のPBS-Tweenに浸す。室温で5分間振盪する。
  9. 新しいPBS-Tweenにメンブレンを浸けて、室温で3分間振盪する。この操作をあと2回繰り返す。
  10. 化学発光検出装置のCCDカメラを事前に冷却する。
  11. 化学発光検出試薬をマニュアルに従って調製する。
  12. 空のプラスチックトレイなどにメンブレンを置き、調製した化学発光検出試薬をメンブレンの全面に1分間ほどマウントする。
  13. メンブレンを乗せたトレイを化学発光検出装置内に置き、化学発光を検出する[下図 右を参照]。シグナルの定量解析は、目的のバンドから生じる発光シグナルの積算値が露光時間に対して直線的に増加するタイムポイントを選択して行う。

BioRenderを用いて作図

  • 目的タンパク質に加えて、内部対照タンパク質(アクチンやGAPDHなど)のウェスタンブロットを並行して行うと、目的タンパク質の発現量を内部対照の発現量で標準化でき、目的タンパク質の発現量を試料間で比較することが可能になります。
  • 同様に、目的タンパク質の翻訳後修飾に対する特異抗体(抗リン酸化抗体など)を用いたウェスタンブロットを、目的タンパク質のウェスタンブロットと並行して行うと、目的タンパク質におけるその修飾の程度を試料間で定量的に比較できます。

→ タンパク質の発現量や翻訳後修飾の状態は、そのタンパク質の機能や活性化状態、ひいては細胞内でのはたらきの度合いを示す重要な生命情報です。適切にデザインされたウェスタンブロット解析は、これらの生命情報を次々と明らかにすることができます。

*監修
パーソルテンプスタッフ株式会社
研究開発事業本部(Chall-edge/チャレッジ)
研修講師(理学博士)

この記事は、理系研究職の方のキャリア支援を行うパーソルテンプスタッフ研究開発事業本部(Chall-edge/チャレッジ)がお届けする、実験ノウハウシリーズです。

過去の記事一覧:実験レシピシリーズ

リケラボ編集部

リケラボ編集部

理系の学生/社会人の方が、ハッピーなキャリアを描(えが)けるように、色々な情報を収集して発信していきます!
こんな情報が知りたい!この記事についてもっと深く知りたい!といったリクエストがありましたら、お問い合わせボタンからどしどしご連絡ください!

関連記事Recommend