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理系就活Q&A 公務員理系職種 選考や面接で準備すべきことは?

「理系職種の公務員就職、選考や面接で準備すべきことは?」:理系就活Q&A 第5回

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こんにちは。サインキャリアデザイン研究所の篠原です。フリーランスのキャリアコンサルタント(国家資格)として学生向けのキャリア支援を行っており、理系大学を含む複数の大学でキャリア科目・就職支援講師として活動しています。人材業界でも17年間、企業の新卒採用支援や自社の採用業務、新入社員の教育担当などを行っていましたので、採用企業が新入社員に求めているもの、新入社員が会社に求めているもの両方を知っていることを強みとしています。

ある理系大学では長年にわたって、多くの学生の皆さんの就職活動における迷い、悩み、頑張りに触れてきました。また企業の方たちと協力して理系向け就職セミナーや、技術職社員の方たちとの座談会などの運営経験もあります。そうした活動を通じて実感してきたのは、就職活動という場そのものが、学生さんそれぞれの気付きや見直し、成長のステージになり、いかにそこから逃げずに向き合っていくことが大切であるかということです。

このシリーズでは、そんなこれまでの実際の先輩たちの就職活動における成功や失敗の事例も多く取り上げながら、よりリアルに理系の就職活動の進め方をイメージしていただける記事を発信できればと考えています。

第5回目の今回は、公務員面接・選考のコツをお届けします!

理系職種での公務員就職を考えていますが、企業での面接と違う点はありますか?また公務員の選考だからこそ特に見られている点や、面接に向けて準備しておいた方がいいことがあれば教えてください。

公務員面接の一つの特徴とは?

読者の皆さんの中には、理系職としての公務員就職を目指している方もいらっしゃるかと思います。国家公務員であれば各省庁の技術系職員(技官)や国立研究所などの研究員、地方公務員であれば自治体の技術系職員や地方公共団体の試験研究機関などの研究員、また理系職に限らず、一般行政の職種を目指している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回は、前回の面接対策に続き、公務員面接特有のポイントについて触れていきたいと思います。公務員の面接試験は、先にエントリーシートなどの書類選考がなく、エントリーシートに代わる「面接カード」を作成し、それを使って面接が行われるケースが多いのが特徴です。先に志望動機などの評価を得た後で面接に進むわけではないため、企業就職の面接以上に、面接当日の審査度合いが高くなるといえます。

面接での姿勢や伝え方の基本については前回の記事を参考にしていただき、本記事では、面接カードや面接において特に意識したいことに焦点を当てていきたいと思います。また、近年の公務員採用試験では集団討論も多く実施されているため、集団討論のポイントについても後半で触れていきます。

理系公務員の働き方を理解しよう

理系職としての仕事に就く公務員を一般的に理系公務員といい、技術的な知見から行政に携わる公務員を指します。理系公務員の採用は、土木、建築、機械、電気・電子・情報、化学、農学などの職種区分が設けられており、各分野の技術的観点から行政の政策立案や運営を支えるスタッフとして幅広い場面で活躍しています。理系職種は専門分野ごとに細かく分類されており、どこの公務員(国家、地方等)でどの職種区分を募集しているかをしっかりと調べ、自分で選択していくことが大切になります。応募先や職種区分などによって難易度や競争率も異なってきますので、その点も同時に調べていくと良いかと思います。

理系公務員の仕事全般におけるキーワードは「計画・管理」です。理系公務員は製品を作る側ではなく、製品や技術を上手に「使う」側に立ち、自治体や国全体の将来を見据えた政策を考える職業であるといえます。そのため、さまざまな区分の基本的な知識を有する職員として、施工を担う民間企業と協力しながら、計画と管理を中心とした仕事を行います。したがって、大学で設計やプログラミングなどの技術が得意だからそれを活かせるということではなく、それぞれの専攻をいかに社会作りに活かし、国民や住民の生活を支えていけるかを考えていくことが大切です。

「なぜ企業就職ではなく公務員なのですか?」

これは、公務員の面接試験での定番の質問です。さて、皆さんはどんな答えを用意しますか?一般的に、「なぜ✗✗ではなく〇〇なのか?」という質問に対しては、つい前者を否定する回答をしがちです。先の質問に対しても、企業就職や企業の事業活動そのものを否定し、公務員志望をいかに素晴らしいものかを伝えようとする回答が目立ちます。例えば「企業は自社の利益を優先しなければなりませんが、公務員は・・・」などは、あまりにも多く耳にする回答です。しかし、収益活動を行っている企業やそこで働く人たちからの税収があってこそ活動できるのが公務員であり、企業の利益活動を否定するということは税収を否定するということにもなってしまいます。もちろん、企業就職と公務員就職で在り方が異なるからこそ「なぜ企業就職ではなく公務員なのか?」という質問があるわけですので、ぜひお互いの支え合いの関係性を理解した上での回答を期待したいところです。

社会を知り課題意識を持つことの大切さ

2018年7月に日本を襲った「西日本豪雨」は、中国、四国地方を中心とした西日本各地に多くの被害を与えました。私の就任先の大学の一つがその地域にあるのですが、ちょうどその時期に、被害地域に該当する県庁で土木区分の職員採用面接が行われました。土木区分で受験した学生たちが面接カードを作成し、送付したのは西日本豪雨前。そして面接はその後でした。

本番の面接に向けて模擬面接を行った際、西日本豪雨前の面接カードに書いた志望動機のままの学生と、西日本豪雨を受けて、即座に自分たちがやるべきことにしっかりと触れることができた学生とに分かれました。もちろん本番でも避けては通れない質問材料になったことは言うまでもありません。国のために、地域のために自分がやるべきことがあるから公務員を志望するのか?それとも景気の影響を受けない安定した仕事であるからと志望するのか?面接カードを見ても、模擬面接をしていても、その意識の差をいつも感じます。公務員は自分の安定どころか、自分の身を挺してでも国や地域に尽くし、国民の安全を守る立場にあります。面接カードの志望動機で感じる意識の差はここにあるように思います。

受験する先の仕事をしっかりと理解し、今そこにある課題をしっかりと研究すること。そして何のために自分は志望するのかということを明確にしていきたいですね。

問題意識・目的意識こそ公務員志望の原点

前述した通り、公務員を目指す皆さんにとっては、まず応募先の業務領域に対する問題意識を持つことに期待したいところです。少子高齢化、人口減少化といったキーワードを筆頭に、公務においても見逃せないさまざまな社会の現状や先行きがあります。まずは応募先における課題は何かをしっかり把握すること。そして自分はその課題に対して何をするために志望するのかを明確にすることが大切です。それが、企業志望に多く見られる興味止まりの志望動機ではなく、目的や目標をベースとした本当の意味での志望動機になることでしょう。

公務員試験といえば、筆記試験の対策ばかりに躍起になっている応募者も目立ち、新聞を読むこと、ニュースを目にすることを疎かにしている姿も見られます。しかし、公務員試験でも評価ウェイトが高いのは面接であり、その面接の核となるのが志望動機です。社会でいま何が起きているのか?そして応募先に視点を移すとどういうことがいえるのか?など、世の中の動きを大局的に理解することで見えてくる応募先それぞれの課題があるのではないでしょうか?その課題を捉え、応募先で自分は何をすべきなのか?胸を張って志望動機に落とし込めることを期待します。

参考になる?選挙の時の立候補者の演説

公務員としての志望動機を考えていく際に参考になると私が思うのは、自治体や国会などの議員選挙の立候補者の演説です。立候補者にとってその演説はまさに志望動機を有権者に聞いてもらうことだと思いますが、いかに議員になりたかったかという気持ちや、ましてや議員に興味がある理由を訴えているわけではありません。立候補者は議員になった際の「公約」を訴えており、その公約に対して有権者が期待をするから投票するのではないでしょうか。さらにその公約の前提にあるのは、今そこにある課題です。例えば地方選挙であれば、その地域が抱える課題や今後起こりうる問題を掲げ、自分が議員としてその課題や問題にどう取り組むかを訴えているはずです。課題に対する解決姿勢。これこそ公務員試験において最も期待されていることであり、志望動機を構成する重要な要素だといえます。

集団討論とは?

公務員試験には集団討論と呼ばれる選考があります。通常、受験者を510名程度に分けてグループを作り、45分~60分程度の設定時間の中で意見交換を通じて、1つのテーマに対するグループとしての結論を出すというものになります。テーマは事前に通知される場合と、直前に通知される場合があります。テーマには、社会全体の動向における課題や、地方では自治体単位での課題などが取り上げられますが、公務員試験特有の傾向としては、それらの課題に対して「どうすればいいか?」をグループの解決案としてまとめるというものが多いです。そのため、日頃から社会動向や、地方であれば自治体の課題や取り組みの情報収集に努め、解決策についても参考になる事例などの情報収集に取り組む姿勢が大切になってきます。

想定は「同じ組織内での会議」 全員合意のゴールを目指そう

討論と聞くと、ついそれぞれの意見を戦わせて競うものというイメージを持ちがちですが、集団討論は競合の集まりではなく組織内での会議を想定しており、時間内で全員の協力と全員の同意による結論を出すことが期待されています。そこで落第してしまう原因は、グループの中から誰かが選ばれるのだと勘違いした結果、他のメンバーをライバル視して、とにかく自分が優位に立とうとする姿勢です。もちろん評価においてはグループの中から選考通過者を選ぶということもありますが、その場合も、あくまで仲間として全員並んでのゴールを目指すべく力を発揮した受験者が選ばれています。

誰かの意見を選ぶわけではない。集団討論の落とし穴

公務員の集団討論では事前にテーマが提示されるケースや、討論開始前に一旦、各メンバーがそれぞれの意見を述べてから始めるという流れを取るケースも多くあります。そうなると、一度、全員がそれぞれの意見を述べることで、その後の進行が単に「誰の意見が良いか?」を選ぶだけの討論になってしまうことが多くあります。しかし、選ぶだけの集団討論ほど単純で意味のないものはありません。集団討論はグループとしての最良の結論を見出すものですので、「選ぶ」のではなく、メンバーから出た意見を基にしながら新しく「生み出す」という意識を持って臨みたいところです。結果的に、グループとしての結論が先にメンバーの誰かが発言した意見ではないこともあります。しかし、それこそ皆の意見を材料にしながら、新たにグループとしての最良の結論を生み出したといえるでしょう。

まとめ

今回は理系公務員の面接と集団討論についてのコツをお伝えしました。面接で重要なのは、やはり「問題意識」と「目的意識」です。集団討論では、グループの中で最良の結論を「生み出すこと」を意識することが重要です。

皆さんの健闘を祈ります!

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※ご自身の志望分野での課題を世の中の動きから大局的に把握するためには、「PSET」と呼ばれるフレームワークが有効です。過去記事にてご紹介していますのでご参照ください。
就活を成功に導く企業研究の方法【後編】-理系のための就活講座(5) 

※記事内の画像はすべて著者作成

篠原功治

篠原功治

キャリアコンサルタント
サインキャリアデザイン研究所代表・国家資格キャリアコンサルタント・JCDA 日本キャリア開発協会会員
2009年に学生・若年者を対象としたキャリア支援活動を事業とするサインキャリアデザイン研究所を立ち上げる。理系向け就職セミナーや技術職社員との座談会・パネルディスカッションをはじめとする理系大学生向けのキャリア支援にも長年携わっており、現在は大学でのキャリアデザイン科目・就職支援プログラム講師、企業・就職支援機関とコラボレーションした学生向けキャリア・就職支援プログラムの企画・実施、企業における営業研修などを務める。

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