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カフェイン抽出してみた│ヘルドクターくられの1万円実験室│リケラボ

カフェインを抽出してみた│ヘルドクターくられの1万円実験室

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科学を愛する読者のみなさま、ごきげんよう。くられです。

使える予算は1万円以内。「高価な実験機器は使えない」という制約のなかで知恵と工夫を凝らして実行可能なおもしろ実験を紹介する本企画。

第24回目のお題は「カフェイン」です。今回も、私が主宰する秘密結社「薬理凶室」のメンバーであり化学に造詣の深いレイユール氏の協力のもと、お届けします。それではお楽しみください!


皆さんこんにちは。レイユールです。

今回は、普段の生活でもよく耳にする「カフェイン」を紅茶から抽出してみる実験です。

カフェインとは

カフェインは誰もが聞いたことのある物質だと思いますが、それがいったいどんな物質であるか説明することはできるでしょうか。お茶やコーヒーに含まれ、目を覚ます効果があるという程度の認識ではないでしょうか?

紅茶のティーバッグ よく見る紅茶のバッグにもカフェインが含まれている

カフェインは、アルカロイドと呼ばれる植物由来の生理活性物質です。生理活性物質というのはヒトの体に対して何らかの影響を及ぼす物質のことで、毒や薬になるものです。

カフェインの持つ生理活性は、覚醒作用(目が覚めるような作用)や利尿作用といったものが代表的ですが、それ以外にも様々な生理活性を持っています。

では、カフェインを化学的に見てみましょう。純粋なカフェインは白色の針状結晶で匂いはなく、苦みがあります。そして、昇華することが知られています。昇華とは、固体から直接気体に状態変化することで、昇華性の物質としてはドライアスなどが代表例です。

ドライアイス ドライアイスは二酸化炭素を冷やして固めたもの。固体から直接気体になるため、濡らさずに保温ができるので、食品などの保冷に使われる。

カフェイン抽出は大変

紅茶やコーヒーにはカフェインが含まれていますが、カフェインが体質的に合わない方や、睡眠前でも飲めるように、カフェインを取り除いた紅茶やコーヒーというものもあります。これは通常、超臨界二酸化炭素という超高圧に圧縮された二酸化炭素を利用して行われます。これは溶媒残留問題や味、香りを損ないにくいというメリットがある反面、超高圧の二酸化炭素を発生させる分、設備は大がかりなものとなってしまいます。

大学などで行われる授業では、溶媒抽出法を使ってカフェインを分離する実験が度々行われます。これは、熱水で濃いお茶を煮出して、ジクロロメタンのようなカフェインを溶かす有機溶媒で抽出し、精製を行うというものです。これは超臨界流体を使う方法に比べて簡単ではありますが、それでも大量の溶媒と多くの器具・設備が必要です。

昇華性に注目

この企画では、1万円を超える器具や材料は使えないので、超臨界流体や溶媒抽出法などでカフェインを分離することは難しいです。そこで、カフェインの持つ昇華性に注目してみましょう。昇華性というのは比較的珍しい性質で、これを上手に使うことで、一発でカフェインを分離することができてしまうのです。今回は紅茶茶葉からカフェインの直接分離に挑戦します。

紅茶茶葉 今回使用する茶葉。カフェインレスのものは使用できない。

カフェインの抽出

それでは、実際にカフェインを抽出してみましょう。今回は紅茶茶葉を使いますが、緑茶茶葉でも大丈夫です。コーヒー類や煎茶は使えません。

注意:ホットプレートを使用します。やけどには十分に注意してください。

1.ホットプレート(温度調節機能があると望ましい)に茶葉を薄く均一に乗せる

ホットプレート上の茶葉 アルミ箔を敷いておくと片付けが容易。

茶葉 茶葉は2‐3㎜程度を目安に薄く延ばしてください。今回は4gを使いました。

2.ホットプレートを140℃に設定し、10分間乾燥させる

シャーレが曇る様子 茶葉の水分が残っていると、シャーレに水滴がついて曇る。カフェインが回収できなくなるので、十分に乾燥させよう。

3.シャーレを被せて曇らないことを確認する

乾燥後の茶葉 乾燥が十分ならばシャーレを被せても曇らない

4.ホットプレートを150‐160℃に加熱する

5.5分程度でシャーレが再び曇ってくるのでやけどに注意してホットプレートから降ろす

6.常温まで冷えたら虫眼鏡やルーペで結晶を観察する

カフェインが付着したシャーレ カフェインが付着し白く見える。

結晶の拡大像 結晶を拡大すると針状のカフェインがびっしりと張り付いているのが見える。画像は顕微鏡で40倍に拡大されている。

得られる結晶は極わずかですが、拡大すればカフェインの針状の結晶を見ることができます。

カフェインは昇華性を持っており、約150℃付近から昇華し始めます。茶葉に含まれる物質のうち、150℃付近で蒸発する成分はカフェイン以外にほとんど含まれておらず、これによって分離することができます。しかし、150℃では茶葉中の水分なども蒸発するため、昇華の始まる温度よりも低い温度で脱水を行う必要があります。また、温度が160℃を超えてくると、茶葉が焦げてカフェインに色が付き始めてしまうので、温度の調製は慎重に行ってください。

本当にカフェインか?

さて、カフェインが分離できたわけですが、これが本当にカフェインであるか確かめてみましょう。カフェインかどうかを手軽に確かめるには、ムレキシド反応が有効です。ムレキシド反応は、尿酸やその誘導体を塩酸・過酸化水素水と共に加熱し、最後にアンモニア水を加えると、ムレキシドという紫色の物質に変化するため定性的な試験を行うことができます。

1.シャーレをエタノールで洗って蒸発皿に移す

カフェインを洗う できるだけ少量のエタノールでシャーレを洗ってカフェインを蒸発皿に移す。

2.自然乾燥してエタノールを除く

乾燥後の蒸発皿 写真では見えにくいがカフェインが再度結晶化する。少し黄色い色があるが、これは焦げた茶葉から出たタール質。

3.塩酸を含むトイレ洗剤2滴とオキシドール4滴を加える

4.アルコールランプなどで焦げないように熱して蒸発乾固する(黄色や赤の物質に変化する)

加熱 焦がさないように注意しながら水分をすべて蒸発させる

蒸発後 水分がすべて蒸発すると赤色や黄色の物質が残る。茶色や黒くなった場合は焦げているので、最初からやり直そう。

5.10%アンモニア水を数滴加えて紫色を呈すればカフェイン(尿酸誘導体)であることが分かる

アンモニア水の滴下 匂いが強いので換気に注意しよう。3滴を目安に加える。

呈色 アンモニア水に溶かすと全体が鮮やかな紫色となる。これは尿酸誘導体に共通する呈色反応。

得られるカフェインはわずかなので、一回エタノールで溶かして蒸発皿に移します。 また、加熱中は塩酸を含むトイレ洗剤が蒸発するので、換気の良い場所で行いましょう。

実験にかかった費用

・紅茶 100円程度
・ホットプレート 5,000円程度
・シャーレ 1,000円程度
・エタノール 1,500円程度
・トイレ洗剤 200円程度
・オキシドール 300円程度
・アンモニア水 300円程度

その他、安全メガネや適切な保護具を必要に応じて用意してください。

掲載写真,図全てレイユール氏提供

レイユール
薬理凶室怪人。専門は有機合成化学。薬理凶室では化学分野を担当している。

薬理凶室のYouTubeチャンネルでは、化学実験をコミカルな動画で紹介する「ガチ実験シリーズ」を不定期更新している。

くられ with 薬理凶室

くられ with 薬理凶室

くられ。自称、不良科学者。作家/科学監修、大学講師なども兼任する。近著では「アリエナクナイ科学ノ教科書」で2018年第49回 SF大会にて星雲賞ノンフィクション部門を受賞(続きの連載をDiscoveryチャンネル公式WEBにて掲載、好評を博し終了。現在単行本化作業中)。週刊少年ジャンプで連載中の人気漫画『Dr.STONE』の科学監修を務める。人気Youtuber動画チーム「〜の主役は我々だ!」とのコラボによる「科学はすべてを解決する」はコミック化されるなど好評を博している。
公式サイトはこちら

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