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最先端のピペット、その驚きの使用感とは? ニチリョー「Nichipet Air」誕生秘話とマイクロピペットの進化の歴史に迫る

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リケラボ読者のみなさんは、これまでにどんなピペットを使ってきましたか? ひとくちにピペットといっても様々な種類がありますが、今現在研究室で単にピペットとだけ呼んだ場合にはほとんどの方が「マイクロピペット」をイメージされるのではないでしょうか。

▼ピペットのいろいろ

パスツールピペット

先端が細い薄いガラス製のピペットです。プラスチック製のものもあります。いずれもコンタミネーションを防ぐためにディスポーザブルとして使われる事が多く、液体培地の移動やサンプリングなど、正確な計量が不要で少量の液体を移動したい場合に適しています。駒込ピペットと同様に、主に上部に取り付けたゴム球により液体を吸引吐出します。
駒込ピペット

ガラス製もしくはプラスチック製で、ピペット本体の上部に球状のふくらみがあり、泡立ちやすい液体も安心して計量できるピペットです。主に上部に取り付けたゴム球により液体を吸引吐出します。2mL5mLの容量タイプが一般的です。
メスピペット

ガラス製もしくはプラスチック製で目盛がついており、液体を正確に測りとることが可能なピペットです。以前はメスピペット上端に口を直接つけて液体を吸引するという使われ方でしたが、有害な試薬や菌液を扱う時に危険なため、現在はオートピペッター(ピペットコントローラー)やゴム製吸引装置(安全ピペッター)を取り付けて使用するのが一般的です。
ホールピペット

ガラス製で、膨らんだ部分に目盛が一箇所だけ設けられたピペットです。液体を測る精度がメスピペットよりも優れていますが、正確な計量にはある程度の技量を要します。以前はピペット上端に口を直接つけて液体を吸引していましたが、現在では安全性を考慮してオートピペッター(ピペットコントローラー)やゴム製吸引装置(安全ピペッター)を取り付けて使用するのが一般的です。液体の排出後に先端に液体が残っている場合は、膨らんだ部分を手で暖めるなどして押し出します。
マイクロピペット

μL単位での液体の計量が可能で、主に生命科学分野の研究および分析において最も一般的に利用されているピペットです。内部ピストンの上下動による空気の体積移動によって液体の吸引と排出を行います。接液部として、主に使い捨てのプラスチック製チップを先端に取り付けて使用します。容量は、設定範囲内で自由に設定変更できる可変式とあらかじめ決められている固定式があります。精度および再現性を保つために、定期的な容量点検やメンテナンスが必要です。なお、容量が1mLまたは5mL以上のものを便宜的にマクロピペットと呼ぶ場合があります。

資料・画像提供:株式会社ニチリョー

そんなおなじみのピペットの世界に、2020年、新風を巻き起こす製品が誕生しました。その名も「Nichipet Air(ニチペット エアー)」

ニチペット エアーくん(Illustrated by うえたに夫婦)

 

今回は株式会社ニチリョーさんに伺い、Nichipet Airの特徴や、驚きの軽さについてインタビューしてきました。お話を伺ってみると、いまピペット界では軽量化が一大トレンドとのこと。しかしこうしたトレンドにはこれまでにも時代ごとの波があり、時代背景や技術の進化に合わせてピペットに求められることも変化してきたそう。インタビューの後半では、これまでのピペットの進化の歴史にもフォーカスします!

お話を聞かせてくださったのは、株式会社ニチリョーの高野さん、徳地さん、高橋さんです。よろしくお願いします!

ニチリョーの髙野さん(写真左)と高橋さん(写真中央)。徳地さん(写真右下)はオンラインでお話を聞かせてくださいました。

 

世界最軽量級!驚きの軽さと押しやすさを実現した新しいマイクロピペット

──まずは早速「Nichipet Air」のイチ押しポイントを教えてください!

徳地さん:今回の開発でいちばん力を入れたのは、やはり軽量化です。ピペットには二種類の「軽さ」があります。ひとつは物自体の重さ。もうひとつは、ピストンを押す力の軽さです。「Nichipet Air」では、たとえ0.1gでも他社を越えトップを目指そうということで、10年ほどかけてこの両方の軽さで世界最軽量級を実現しました。

 

──使ってみると本体だけでなく押し心地も本当に軽くて、繰り返し操作しても疲れにくそうだと感じました。

高橋さん:ピペットは60個前後の部品によって構成されています。従来は、その部品の8割ほどが樹脂で、それ以外には金属部品などが使われていました。「Nichipet Air」は、この金属部品を極限まで減らしたことで、軽さを実現しました。実に95%以上が樹脂パーツで構成されています。もちろん、ただ軽ければいいというわけではなく、強度を保つことも重要なので代替材料の選定にはかなりこだわりましたね。パーツごとにさまざまな樹脂を使い分け、軽さと耐久性を両立しています。それに加えて、高性能であることが見た目で分かるように、樹脂でも安っぽく見えないという点も大切にしました。

高橋さん:また、ピストンの軽さについてはグリス(潤滑剤)の進化がカギになっています。本体の内部ではピストンで空気を出し入れすることによって液体を吸い上げるのですが、気密性を保ちながらピストンをなめらかに動かすためにグリスを塗っています。この性能がアップしたことによってストロークの軽さを実現できたとともに、オートクレーブにかけても洗い落とされにくくなり、メンテナンスの頻度も大きく下げることができました。

 

軽さだけでなく、スペックも自己ベストを更新

徳地さん:気になるスペックについても、もちろんこだわりました。従来のピペットのなかでいちばんのスペックを実現しています。ピペットで求められるのは、絶対精度(安定性)と、繰り返し精度(再現性)です。0.1μLという微細な量でも、いかに正確にとれるか、そして安定して繰り返し作業ができるかというのがピペットの一番重要な機能です。

 

──「Nichipet Air」ならではの工夫したポイントはありますか?

高野さん:基本設計を大幅に見直しています。ピペットは空気を利用して液体を吸いますが、空気というのはご存知のとおり温度で膨張します。握っている手の体温でピペット内の空気が膨張すると容量の誤差につながってしまうことがあるため、できるだけ体温が伝わらない位置にシリンダーを設置しているんですよ。

徳地さん:ほかにも、容量が表示されるカウンターの位置を使用中にも見やすい位置に変更していたり、ロックをしなくても容量設定のハンドルがきちんと固定される構造にしたり……これまでいただいてきたユーザーさんの意見をすべて反映することを目指しました。

徳地さん:今回の「Nichipet Air」は、いわばフルモデルチェンジ。金型も1から作る必要があり、まるごと作り変えるうえでの苦労はもちろんありましたが、せっかくベースから一新するからこそ、今までのモデルではできなかったことをどんどん取り入れています。

そのため、いちばんのアピールポイントとしては「軽さ」を謳っているものの、性能と操作性も合わせて、非常にバランスの良いものに仕上がっています。「すべての面において一番のものを作ろう」といったコンセプトのもと、重さや精度、操作性のさまざまなポイントで常にトップを目指すよう開発を進めた結果、高い性能と操作性、そして世界最軽量級を実現することができました。

 

マイクロピペットのトレンド今昔。ターニングポイントは「オートクレーブ対応」

──ここまでマイクロピペットの最先端製品について伺ってきましたが、新製品誕生の裏側には歴史的な紆余曲折もあったはず。今回はぜひそちらについてもお話を伺いたいです。そもそも、軽さを追求しようとされたきっかけには、どのような経緯や背景があるのでしょう?

高野さん:ピペット業界で製品に軽さが求められるようになってきたのは、ここ10年ほどの話なんですね。いわばひとつのトレンドのようなものですが、その背景には2つの要素があると思います。ひとつは、技術の進歩によりどのメーカーさんも精度や機能性の高さにおいては一定水準を満たすのがある程度当たり前になってきたこと。それによって、今度はいかに軽さを求めていくかという流れが生まれました。もうひとつが、近年、女性の研究従事者の方が増加していることですね。

 

──なるほど。では、さらに昔をさかのぼればそれぞれの時代ごとに異なるトレンドがあったということしょうか?

高橋さん:もちろんありました。端的な例でいえば、今では連続的に容量の設定ができるデジタルマイクロピペットが主流になっていますが、私が学生だった頃なんかはそれこそ口で液体を吸い上げるホールピペットを使っていました。

 

──現在では口で液体を吸うのはほぼ見かけない光景ですが…「懐かしい!」と思う読者の方もいると思います。

高橋さん:マイクロピペットの登場以降でも、時代に合わせてピペットは様々な進化を遂げてきました。ここからはあくまで弊社製品の歴史ということにはなりますが、ニチリョー初のマイクロピペットは1975年に誕生した「JUSTOR U&V」で、こちらは単容量のUタイプと5段可変タイプのVタイプになります。この当時はまだチップエジェクト機構がなく、血液など採取したチップは手で外していました。

1980年に発売された「JUSTOR 1100 F&V」ではチップエジェクター機構を備えた形で新たに登場しました。さらにその後、1983年発売の「JUSTOR 1100DG」で、容量を連続的に変えられるようになっています。チップがワンタッチでエジェクトできるようになったのもこの頃。ちなみに「JUSTOR 1100DG」は、2020年3月まで製造されていたベストセラーモデルです。このように、まずは柔軟に容量設定できる機能が広まっていきました。

高野さん:その後、1988年には現在の当社のスタンダードモデルである「Nichipet」シリーズの元になった「MODEL 5000」が登場します。

ニチリョー「MODEL 5000」

 

──手になじみそうな、見慣れたデザインです。

高野さん:そして「MODEL 5000」の発売から数年を経て、これまでのピペットの進化の歴史のなかでも重要なターニングポイントが訪れます。オートクレーブにかけられるようになったのです。弊社の製品でいうところの1993年に登場した「AUTOCLAVABLE BenchMate」から、まるごと蒸気滅菌できるようになりました。背景には、1980年代後半ごろから遺伝子に関する研究が盛んになったこと、それにともない滅菌できる検査機器へのニーズが高まったことが挙げられます。

高橋さん:以前はピペットを滅菌する手段がなく、次亜塩素酸などで表面を拭き取るしかありませんでした。そのため、メンテナンスで当社にピペットを預けてもらう際、薬品や血液が付着したままのことも珍しくなかったんです。それではメンテナンス作業に危険が伴うので、もともとは当社の作業者をそういった危険から守るためにも、オートクレーブ対応の製品を開発することになりました。すると、時を同じくして遺伝子に関する研究が盛んになり、滅菌できる検査機器へのニーズが高まって、当社の製品がさらに浸透する後押しにもなったのです。

 

──社員の方を守るためにつけた機能が、その後の研究トレンドに見事合致したとは、タイミングの妙ですね!

高橋さん:そして2000年に「Nichipet」シリーズが登場します。ちなみに、以前の「JUSTOR」シリーズは丸い筒のような形をしていますが、「Nichipet」シリーズ誕生以降は形状が少し複雑なものになっています。これは、CADなどの設計に関わるテクノロジーが普及したから。CADが使えなかった時代は頭のなかで想像しながら手書きで図面を描いていました。60個近い部品ひとつひとつの図面ももちろんすべて手書きです。それがすべてコンピュータ上でできるようになったことで緻密な計算も可能になり、複雑な形状や微妙な曲線の表現もできるようになったのです。

CADの活用によってより複雑な形状が実現可能に

 

──CADの普及が、実験器具の進化にも大きな影響を与えたんですね。でも、CADがなかった頃の設計士の方々の技術の高さにも頭が下がりますね…!

高野さん:容量的にも、それまでは小さいものでも10μLくらいまでだったのが、DNAを扱う研究でさらに微細な量を取る必要が出てきたことで、より小さな容量に対応したピペットが増えていきました。そして、ここ数年でさらにプラスアルファで軽さが求められるようになってきた、という現在地に至ります。

耐久性、軽量化、ストローク荷重など、使い手の様々な声に対応するために常に進化を重ねてきたニチリョーピペットの歩み。

 

──なるほど…「Nichipet Air」誕生までの歴史がよくわかりました。その時代時代にいろいろな改良が加えられてきたのが、とても興味深かったです。それでは最後に、現在地のその先は何を目指すのか、今後の意気込みをひと言お聞かせください!

高野さん:我々の事業は納入した製品のメンテナンスを通じてお客さまの声を直接聞くことができる機会も多く、これは製品開発において大きな強みだと思っています。今後も実際に製品を使用される皆さんのご意見やご要望と向き合い、世界の競合他社さんたちとも切磋琢磨しながら時代のニーズに合ったピペットを生み出していけたらと考えています。

その一方で新しい製品を生み出すことだけではなく「愛用のピペットをできるだけ永く使いたい」という声にも応えたいと思っています。国内メーカーならではの丁寧なアフターケア、熟練の技術者によるリペアサービスも当社の強みであり、これからも変わらずこだわり続けたい部分です。

 

──ピペットは研究の相棒と言ってもいいほど思い入れの強い実験器具。メーカーの方々が、こんなに一生懸命ユーザーのことを考えて作ってくださっているということを知る機会があり本当によかったです。今まで以上に大事に使います。高野さん、徳地さん、高橋さん、貴重なお話をありがとうございました!

 

最後に期間限定のお知らせです。なんと今回、ニチリョーさんのご厚意で期間限定のコラボレーション企画を実施させていただくことになりました! 

うえたに夫婦さんのイラスト表紙が印象的な、ニチリョー(@NICHIRYO_JP)社オリジナル『ピペットガイドブック』を抽選で20名様にプレゼントいたします! 今までありそうでなかった、マイクロピペットの正しい使い方をわかりやすく解説したハンドブックです。キャンペーンの詳細は、以下をご覧ください。

たくさんのご応募お待ちしております!

 

♪ニチリョーオリジナル『ピペットガイドブック』プレゼントキャンペーン♪


■キャンペーン概要
・賞品:ニチリョー(@NICHIRYO_JP)オリジナル『ピペットガイドブック』
・当選人数:計20名様(抽選)
・応募期間:2020年11月13日(金)〜2020年11月30日(月)

■応募方法
【STEP1】「リケラボ」公式アカウント(@rikelab)をフォロー。
※当選のご連絡はTwitterのダイレクトメッセージ(以下DM)にて行いますので、公式アカウント「@rikelab」のフォローが必須となります。
※既に公式アカウント「@rikelab」をフォロー済みの方は、そのままご応募いただけます。

【STEP2】公式アカウント(@rikelab)が発信した「#ニチリョーRTキャンペーン」のついたツイートをリツイートすれば応募完了!

■注意事項
キャンペーンにご応募いただくにあたり、下記の注意事項をよくお読みくださいますようお願い申し上げます。

・株式会社ニチリョー(@NICHIRYO_JP)オリジナル『ピペットガイドブック』プレゼントキャンペーン(以下、本キャンペーン)の内容は、予告なく変更されることがありますのでご了承ください。
・本キャンペーンの賞品は、2021年1月末日までに順次発送予定です。
・抽選の詳細や結果については公表いたしません。抽選結果に関する個別のお問い合わせにはお答えできません。
・賞品の発送は日本国内のみとさせていただきます。あしからずご了承ください。
・当選した賞品の権利の譲渡はできません。
・Twitterの操作方法に関するご質問にはお答えできません。
・複数のアカウントを使用して重複当選したことが判明した場合には応募を無効とさせていただきます。
・当選者の方にはTwitterのダイレクトメッセージ(以下DM)を利用して当選のご連絡をお送りいたします。リケラボ公式アカウント(@rikelab)では、当選連絡のDMに記載の入力フォーム以外で賞品のお届け先に関する個人情報を聞き出すようなことはいたしません。公式アカウントを装った偽アカウントからのご連絡にご注意ください。
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著者プロフィール:

リケラボ編集部

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