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ライフサイエンスの先端技術を社会実装へ!異分野連携と産業育成を強力に推進する神奈川県の想いを聞いてきた! ~新規参入企業向け「細胞培養」セミナー 12/7開催~

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神奈川県といえば、近年特にライフサイエンス研究の盛んな地域として認知されています。リケラボでも、これまでにいくつかのライフサイエンス関連企業を取材してきました。県がライフサイエンス、特に再生医療、細胞医療といった先端医療分野の研究と産業育成に力を入れており、研究者だけでなく、これからこの分野への新規参入を検討している「モノづくり企業」にとっても、チャンスが多い魅力的な地域のひとつです。

そこで今回は、ライフサイエンスの重要拠点としての神奈川県の魅力に迫るべく、長年にわたり県の科学技術イノベーションを強力に推進してこられたキーマン、神奈川県政策局 いのち・未来戦略本部室 科学技術イノベーション担当課長 牧野義之様に、神奈川県における科学技術政策の考え方や、具体的な取り組みについてお話を伺いました。

神奈川県政策局 いのち・未来戦略本部室 科学技術イノベーション担当課長 牧野義之さん
「ラスト侍」の異名を持ち、長年、県の科学技術振興に携わり、科学技術で産業を盛り上げ、人々が心も体も健康に暮らせる社会を目指して精力的に活動されておられます。

12月にはライフサイエンス業界への新規参入に関心のあるものづくり企業向けの、オンラインセミナーも開催予定。自社技術をライフサイエンス分野にどう生かせるのかがイメージしやすい内容になっているとのこと。「細胞培養とは?」という基礎的なレクチャーも用意されているので、再生医療、細胞医療分野に興味をお持ちの企業の方は、是非チェックしてください!(記事の最後に案内を掲載しております)

 

30年以上も科学技術振興に取り組んできた神奈川県

 
──神奈川県は、ここ数年でかなりライフサイエンス研究が盛んになってきたというイメージがありますが、どういう背景があるのでしょうか?

神奈川県は実は、30年以上前から県の政策として科学技術政策に力を入れてきておりまして、ライフサイエンスに限らず様々な分野の科学技術の推進から産業化に取り組んできました。1970年頃のオイルショック以降、産業の空洞化が進むにつれ、日本の産業の先行きが懸念されるようになりました。当時の通商産業省(現在の経済産業省)が、科学技術で新産業を作っていこうとしていましたが、自治体として全国で初めて独自の科学技術政策に取り組んだのが神奈川県です。それまでの重厚長大産業から知識集約型産業への転換を目指し、神奈川県を研究開発のメッカにし、科学技術によって産業を興していこうと考えたのです。地方自治体レベルの取り組みとしては非常に画期的なことでした。

 
──県として、早くから科学技術による産業振興に取り組まれてこられたのですね。

1989年には、アジア発のインキュベート施設「かながわサイエンスパーク」(KSP)を設立しています。
東京と神奈川の間の武蔵溝ノ口というロケーションで、地の利を生かした形です。

 
──ライフサイエンス分野にはいつから注力されているのですか?

時代の要請に合わせて材料やITなど、色々な分野に注力してきましたが、ライフサイエンス分野を重点領域としたのは、2011年に現在の黒岩知事が誕生したことが大きいですね。ライフサイエンスは私たちの生活の基本となる分野ですし、知事が掲げるスローガン「いのち輝く神奈川」は、科学技術政策に取り組んできた私たちの考えとも合致しました。

 
──それが、2014年に始まり現在も続いている、ヘルスケア・ニューフロンティア構想となったのですね。

 
科学技術によって産業の活性化を果たし、社会を豊かにしていきたい想いが、ライフサイエンスやヘルスケアに取り組む根っこの部分にありますね。2011年に京浜臨海部にライフイノベーション国際戦略総合特区ができ、2014年には私の所属する県のヘルスケア・ニューフロンティア推進本部室(現・いのち・未来戦略推進本部室)が設立されました。科学技術・産業・保健医療の政策を融合した横断的組織で、最先端の医療技術の社会実装と個人のライフスタイルの見直しという二つのアプローチから、健康寿命を伸ばし、新たな市場・産業を創出することを目指しています。

 
──最先端医療技術のひとつとして、再生・細胞医療にとても力を入れていらっしゃいますね。

再生・細胞医療への取り組みは、疾患を抱える方に、希望を提供できるということが大きな理由です。生まれつき、あるいは病気を発症して組織や機能を失った場合、従来の医療がカバーできるのは、医薬品や医療機器を用いる対症療法です。一方、再生細胞医療は、培養した細胞や組織を用いて機能そのものを修復し、回復させるというもの。麻痺が残ったり、薬が手放せなくなったりすると、負担が大きくQOLも低下しますが、疾患そのものを根治させることができるとしたらどうでしょう?再生細胞医療のような生きる希望を与える技術革新が、実用されるものになっていけばインパクトの大きさは計り知れません。こうした技術を社会実装し、人々に勇気を与え、前向きに生きられる世の中になっていくことを心から願っているんです。

 

企業や大学、多彩な技術や頭脳が集まるサイエンスパーク

 
──全国各地にバイオクラスターが存在しますが、神奈川県の取り組みの大きな特徴は何でしょうか?

地域のサイエンスパークを充実させることに重点を置いています。大学と民間企業と公的機関の産学公が出会い、立場や分野を超えて異分野融合する中でイノベーションを促進していくことが狙いです。大学の知識をサイエンスパークというフィールドに出すことで、地域社会で一緒に育てようというコンセプトです。サイエンスパークでベンチャーを起こす、あるいは企業との共同研究を行うことによって、社会で勝負できる仕組みを作り上げていきたいと考えています。

そして、産業界においても、各企業が自社だけで製品を開発する時代から、それぞれが様々な強みを持ち寄ったオープンイノベーションによって研究開発を進展させていくことが求められてきていますよね。企業の研究者が会社の外に出て自由な雰囲気の中で研究できる場所、産学公が連携しながら、既存の組織の枠にははまらない新しい活動を、新しい組織で、さまざまなメンバーたちと行っていくことのできる場所が、サイエンスパークなのです。

 
──川崎市の殿町ライフイノベーションセンターを開設したり、湘南ヘルスイノベーションパーク(以下、湘南アイパーク)といった拠点と連携されてこられたのもそういう背景からなのですね。

川崎市殿町(キングスカイフロント)にあるライフイノベーションセンターは、再生細胞医療の産業化拠点として、2016年の4月に使用が始まりました。2022年春には川を隔てた羽田空港に直結する「多摩川スカイブリッジ」も完成予定で、利便性が一気に高まります。医療機器から創薬、再生医療の分野で、グローバルな活動をしている企業が集まる国際戦略拠点としてますますの発展が期待できます。

画像提供:神奈川県

殿町ライフイノベーションセンター 画像提供:神奈川県

湘南アイパーク 画像提供:神奈川県

湘南アイパークは武田薬品が湘南研究所の一部を開放し、運用してきたもので、大企業のポテンシャルを活用した、民間主導のオープンイノベーション拠点です。2018年に開所し、2021年11月現在では入居者90社、メンバーシップ会員35社、2,000人を超える方々がここで最先端研究や細胞培養に取り組んでいます。

科学技術を地域で育て、そして活用して、どういう社会を創っていくのか、「科学技術と共に歩みながらの新しい社会づくり」という視点を、我々は自治体として非常に大切にしています。湘南地区は大船駅と藤沢駅間の新駅計画や、JR跡地の大規模開発もあるため、周辺のまちづくりも含め、湘南地域の活性化をしていくためにも重要な拠点となっていくでしょう。

画像提供:神奈川県

 

再生医療技術を社会実装するのに欠かせない、モノづくり企業の力

 
──再生・細胞医療分野は、希望の医療として期待大の技術ですが、実用化までには、まだまだいろんなハードルがあるといわれています。社会実装のためのカギは何だとお考えですか?

幾つか課題があります。大学等の研究から治験着手をいかにスムーズに移行できるようにするか、細胞という生ものを扱うので品質評価が重要であること。そして、一番の課題は「コスト」ですね。再生・細胞医療の製品もすでにいくつか製品化されていますが、まだまだ高価で、社会全体に普及可能な金額とは言い難いですよね。性能と品質を高く維持したまま、圧倒的なコストダウンを実現してはじめて、みんながその恩恵を受けられるようになります。大学の基礎研究から生まれた有望なシーズも、臨床試験で安全性と有効性を確認して国から承認を得ただけでは、社会実装には程遠くて、スケールアップ、つまり低コストで高品質なものを安定的かつ大量に作る技術と、それを安全に届ける流通の仕組みが整っていなければなりません。それって、日本のモノづくり企業がまさに得意としていることですよね。細胞再生医療の社会実装には、異分野との連携、モノづくり企業の力が絶対的に必要なのです。生きた細胞という、まったく新しい製品なので、異分野融合で知恵を出し合うことが重要です。神奈川県としては、殿町のライフイノベーションセンターに、患者さんに希望の医療をとどけるための産学公融合のバリューチェーンを構築させていきます。

画像提供:神奈川県

 

新規参入を検討中のモノづくり企業集まれ!細胞培養や異分野融合の魅力を伝える研修を開催!

 
──モノづくり企業からの関心は高いのでしょうか?

希望の新技術であると同時にものすごく成長が見込まれているマーケットとして、関心をお持ちの企業さんは多いと感じますね。ですが、非常に専門的な分野なので、興味を持っていてもなにから相談したらいいかわからず、気軽に専門家に相談、となりにくいのも無理はないと思います。そうした異分野の企業が参入しやすくなるような活動も、神奈川県としての大事なミッションだととらえています。2020年から始めた再生医療や細胞培養技術に関する研修もその一環です。

第二回となる今年は、再生医療の世界にモノづくり企業が入ってくることによってどんな社会が実現していくのか、といったことをお伝えしたいと企画しました。

異分野融合の研究事例、異分野参入したモノづくり企業様にご登場いただきます。「自社の技術をどのように活用できるだろう?」「そもそも細胞培養ってどんなもの?」とお考えの企業にとって具体的にイメージが湧く内容になっています。

登壇者は、細胞技術を社会実装するために異分野の知見を積極的に取り入れ連携しながら研究を進めてきた「志を同じくする大切な仲間たち」です。ワクワクするような研究成果とともに、異分野融合を実践するためのヒントが満載です。ご期待ください。

 

当日登壇される方々の中から、異分野融合の実践をご紹介くださる4名を簡単にご紹介します!

培養基板の加工と毛髪の再生医療 (横浜国立大学教授/KISTEC 福田淳二教授)

福田先生が取り組んでいるのは、抗がん剤治療の副作用による脱毛症や男性型脱毛症によって失った毛髪を再生する研究です。患者の後頭部から採取した数十本から百本程度の毛髪の根本から、もととなる2種類の細胞を取り出し300倍程度に増殖させた後、開発した培養器に2種類の細胞をいれると、数日たつと自動的に一台で5千個(5千本分の毛髪)の毛包を有する組織(毛包原基)になります。これを頭皮に移植すれば、毛髪が再生するというわけです。植毛で黒々とした状態にするには1万本ほど必要と言われており、毛包原基を手作業で作成するのは大変です。先生は工学の発想によってこの技術を完成させました。自分の細胞から毛髪を再生できるという点も患者さんの希望になりますね。

再生細胞医療支援に向けたリアルハプティクス(横浜国立大学准教授/KISTEC 下野誠通准教授)

福田先生と連携するのが、同じく横浜国立大学やKISTECで研究活動されている下野先生の研究です。リアルハプティクスといって、人が触っているかのような優しい触覚を再現したロボットの開発です。福田先生が開発した毛髪再生組織を患者さんに移植する際に、職人のように繊細な技術を持っている人が常にいればいいのですが、例えばそうした匠の技をデータにしてロボットに伝送することができれば、離れた場所でも、また誰でも匠の技術で植毛を受けられるようになります。ロボットの専門家の下野先生と毛髪再生の培養技術を持つ福田先生の異分野連携によって、グローバル規模で毛髪再生医療にイノベーションが起きることが将来的には期待されます。

超分子ペプチドを用いた亜急性期脳梗塞の再生医療(東京医科歯科大学統合研究機構准教授/KISTEC 味岡逸樹准教授)

味岡先生はご自身がScience(理学)、Engineering(工学)、Medicine(医学)、Enterprise(事業)と、多彩なバックグラウンドをお持ちで、先生自身の中で異分野融合が起きているのが興味深い研究者です。先生が開発しているのは、脳損傷を起こした患者さんに、細胞再生を促す人工の足場材料をいれることで機能の回復を図る画期的な治療方法です。発症から数日間であれば脳細胞は生きていることが研究から分かっていて、先生が開発した足場を起点に細胞が育ち、損傷した部位に新たな血管を誘引することで、麻痺を回避できます。人間の生命力を最大限に生かした治療法です。

食品機器製造業から再生細胞医療産業へ(大阪サニタリー 柿崎良哉様)

大阪サニタリーは食品工場で使う機器を色々と作ってきた会社ですが、再生医療の世界で自社の技術が使えるのではないかと社内ベンチャーを起こし、再生医療に使う製品の製造事業に携わっておられます。異分野参入として象徴的な存在であり、参入する際のポイントや取り組み、イノベーターとして必要な志についての話は、多くの企業様のご参考にしていただけるのではないかと思います。

 
──ありがとうございました。どの方からも興味深いお話が聞けそうですね!

細胞を扱うのが初めての企業様向けには、世界的なバイオ企業グライナー・ジャパン様の細胞培養の事例紹介(基礎から応用まで)や、株式会社バイオテック・ラボ様による細胞培養研修サポートプログラムもご案内いたします。

再生医療の魅力というのは、技術分野における希望、科学技術が進展することによって、いかに未来に夢を見せられるかということだと思います。失われた臓器や機能の回復というところに注目が集まっていますが、それ以外にも幅広い分野で活用が期待されており、例えば、培養した細胞を実験に活用することで動物実験を減らせます。他にも創薬のスクリーニングや、環境化学物質の評価、食品の中に入れる化合物の評価といった評価系でも大きなニーズがあると思います。

多くの企業にライフサイエンス分野の魅力を知っていただき、社会実装に向けて共に歩んでいただければ幸いです。今後も神奈川県の取り組みにご期待ください!

 

<研修インフォメーション>

 
モノづくり企業のための細胞培養研修

12月7日(火)14:00〜17:00
参加費:無料
対象:ライフサイエンス業界への新規参入を考えているモノづくり企業、
細胞培養の基礎について学びたい方など
形式:Microsoft Teamsによるオンライン(事前登録が必要です)

主催:神奈川県
共催:株式会社グライナー・ジャパン、株式会社バイオテック・ラボ、パーソルテンプスタッフ株式会社、株式会社日本バイオセラピー研究所

申込方法:下記アドレスまで①貴社名②ご担当者様名③所属部署④電話番号⑤メールアドレスを記入し、メールにてお申し込みください。後日、招待メールを送信いたします。
research-kws@bioteclab.co.jp
申込締切:2021年11月30日(火)
定員:250名

詳細はコチラ
https://www.pref.kanagawa.jp/docs/mv4/advanced/kenshu2021.html

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著者プロフィール:

リケラボ編集部

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