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機能性とデザイン性が融合し広がる、素材の新しい可能性──MATERIAL DESIGN EXHIBITION 2017レポート

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2017年10月16日(月)〜12月22日(金)まで『MATERIAL DESIGN EXHIBITION 2017』が開催されています。この企画展は、デザイナーの視点で素材の可能性と魅力を引き出し、新たな用途への道筋を紹介するというもの。日本のモノづくりから生まれた様々な素材を「新たな用途につなぐ」という意味合いを込めた“BYPASS(バイパス)”をテーマに8組の企業とデザイナーが参加しています。素材の活用法を確立するまでのプロセスも展示されていて、試作段階の不完全なプロダクトや、使用した道具など、試行錯誤の過程をリアルに感じることができます。

開発途中では想定されなかったであろう活用方法が、デザイナーならではの視点で提案されていて、発想に目からウロコが落ちること間違いなしです!

【主催】
Material ConneXion Tokyohttp://jp.materialconnexion.com/
製品開発及び製造における素材選択のサポートや、革新的な製品提案を行う。運営するオンラインデーターベースには、世界中から集めた製品化可能な素材を7,500点以上掲載。技術的解説やメーカーの連絡先一覧を6ヶ国語で閲覧でき、建築、インテリア、自動車、家電、スポーツ用品、パッケージ、ファッションなど幅広い業界で利用されている。

MATERIAL×DESIGNER
板ガラス(AGC旭硝子)×伊藤 聡一
産業用穴あけ加工(エヌシー産業株式会社)×馬渕 晃
機能性メッシュ(株式会社NBCメッシュテック)×安藤 北斗・林 登志也 / we+
発泡ポリエチレン(三和化工株式会社)×トラフ建築設計事務所
メタリック顔料(東洋アルミニウム株式会社)×SPREAD
積層強化木素材(株式会社ニッタクス)×小関 隆一
工業用研磨剤(株式会社フジミインコーポレーテッド)×早川和彦デザイン事務所
オレフィン系新素材(三井化学株式会社)×DRILL DESIGN

 

AGC旭硝子×伊藤 聡一
薄くて軽量な板ガラスが生み出す興味深い奥行き

日本で初めて板ガラスの工業化に成功した世界最大手のガラスメーカーAGC旭硝子と伊藤聡一氏のコラボレーションによって生まれたのは、薄くて軽量なガラス板と天然木材を貼り合わせた掛け軸のインスタレーション。まるで“龍の鱗”のようです。

ガラスを通すことで木の質感や木目の美しさが際立ち、見る角度によって表情も変化します。薄いガラスパネルを1枚隔てることで、ぐんと奥行きが増すのが面白くも不思議です。

▲特殊な技術でガラスと木を貼り合わせることで、模様が浮き上がったように見える。

ガラスの形状や厚さ、木材の種類や色、柄などは、用途に合わせて作成可能とのこと。建築用や自動車用、液晶ディスプレイ用などとして、大きく透明な状態で使用されることが多い板ガラスですが、今後は木と組み合わせたお洒落なアイテムがいろいろ生まれそうですね。

 

エヌシー産業株式会社×馬渕 晃
穴を開けることで素材が柔軟に変化する

穴開け加工に特化した国内有数の会社、エヌシー産業株式会社と馬渕晃氏のコラボレーションでは、ユニークなプロダクトが複数展示されました。用いられた技術は“多軸ドリリング加工”。穴あけ加工専用機によって、樹脂素材や金属、ゴムなど、柔らかいものから硬いものまでさまざまな素材を加工することができ、身近なところで言うと、スマホやタブレットのカバーのカメラ・スピーカー部分の穴や、PCや半導体の基板の穴あけなどに用いられています。(上写真は穴あけ加工に使用するドリル部品)

▲穴の直径が大きくなるほど素材に柔軟性が生まれる。

▲目盛り部分に定規の側面からドリリング加工が施されている。そのため、経年劣化により目盛りが薄れてしまう心配もない。

▲穴開け加工することで、素材の表情も重量もガラリと変化する。

穴開けによって、素材の重量や重心が変化したり、柔軟性や可変性が生まれたり、透過性を持った素材に濁りが生じたり……。穴を開けることで素材にさまざまな変化が生まれ、用途やデザインの幅が大きく広がることを示してくれました。

 

株式会社NBCメッシュテック×安藤 北斗・林 登志也 / we+
メッシュを通して見える新たな世界

世界最先端のメッシュテクノロジーを用いて開発された機能性メッシュを提供する株式会社NBCメッシュテックは、コンテンポラリーデザインスタジオのwe+とコラボレーション。

機能性メッシュは、殺菌や消臭、超親水などの性能を持つものもあり、医療用フィルターなどに用いられています。またエレクトロニクス分野では、高精細なスクリーン印刷に不可欠な材料です。展示では、線径24μ〜33μのモノフィラメント糸を高密度に織り込んだ機能性メッシュに光を照らし、不思議な世界を演出していました。

▲メッシュを通すことで光の見え方がユニークな形に変化。

▲薄いメッシュの向こう側に異世界を体感できる。

今回のインスタレーションでは、“メッシュを通して見る”というユニークな体験ができます。

 

三和化工株式会社×トラフ建築設計事務所
発泡ポリエチレンから生まれたポップなプロダクト

発泡ポリエチレンの専業メーカーとして1965年に創業した三和化工株式会社は、建築設計から空間インスタレーションの制作まで多岐にわたり取り組むトラフ建築設計事務所とコラボレーション。

ポリエチレン発泡素材は水や音を通さず熱も遮断するすぐれた緩衝材。ビート板などにも使われている身近な素材ですが、三和化工独自の発泡技術で得られた気泡は極めて細かく、ソフトな感触と明るい色彩を実現しています。

今回は、リサイクル素材の端材をチップ状に粉砕してからカラフルな色のものを押し固めて成形しています。これまで、さまざまな色の端材を混ぜて使用するといった発想はなかったそう。ビジュアルの斬新さはもちろん、実用性も兼ね備えたプロダクトアイテムでした。

 

東洋アルミニウム株式会社×SPREAD
光で色づく顔料が見せるさまざまな表情

箔やペースト、塗料など、さまざまなアルミニウム製品を生産する東洋アルミニウム株式会社は、クリエイティブユニットのSPREADとコラボレーションしました。今回使用されたのは、自動車塗装などに使用される顔料『クロマシャイン®』。アルミニウムフレークを基材にし、フレーク表層にシリカ層を被覆し、更に金属粒子をメッキした、全く新しいタイプのメタリック顔料です。着色剤が使われておらず、光の干渉によって色彩を帯びる顔料です。

紙や樹脂をクロマシャイン®で彩色した美しい作品の数々。上の写真のオレンジ色と緑色が鮮やかな作品と、下の写真の水色と金色が美しい作品は、なんとまったく同じ顔料が使われているのだそう。上の作品は白い紙、下の作品は黒い紙に着色することで、違った色に見えるのです。

折り目によってがらりと表情が変わるのも、光によって色づく顔料ならでは。今後、ギフトペーパーや折り紙などとして、デザインの可能性を新たに広げてくれるのではないでしょうか。

 

株式会社ニッタクス×小関 隆一
木の風合いはそのままに、より自由に活用できる加工木材

日本で初めて合板を製造した株式会社ニッタクスは、小関隆一氏とコラボレーション。

コムプライト®は、単板に樹脂を含浸させ重ね合わせて圧縮した積層強化木素材です。絶縁という特性を生かして工業用部材に使われるほか、通常の木材の2~3倍の強度と撥水性・加工のしやすさから、建築用意匠材、学童用お箸まで幅広く使用されています。今回は、その可能性をさらに広げるために今までにないデザインのプロダクトが展示されました。

▲アクリルと組み合わせることで、ツルツルと心地よい手触りや高いデザイン性を実現。展示を通して、さまざまな場面で意匠性の高い活用ができることを提案している。

▲こちらの椅子は大人が座っても耐えられる強度がきちんと備わっているプロトタイプ。強度の高い素材ならではの活用法。

木の風合いはそのままに機能性を高めたコムプライト®は、天然木の代替品として注目されています。これからの幅広い活用法を示してくれる展示でした。

 

株式会社フジミインコーポレーテッド×早川和彦デザイン事務所
工業用研磨技術で創るアート

1950年創業の研磨剤メーカーのパイオニア・株式会社フジミインコーポレーテッドは、早川和彦デザイン事務所とコラボレーション。半導体基板やハードディスクの研磨など先端技術に欠かせない高精度な研磨加工を得意としていますが、今回は、逆転の発想で、ザラつきやサビといったノイズを溶け込ませた新しい表現が提案されました。

Photo by kenta hasegawa
▲高精度な研磨加工技術で、ここまでピカピカにすることができる。

▲薬品を使用してあえてアルミ材の表面を腐食させてから、高い研磨技術で磨き上げられている。見た目からはデコボコ・ザラザラした手触りを想像するが、実際に触れてみると非常になめらかな触り心地。

曇りなく磨きあげることが目的とされてきた研磨加工ですが、ノイズが溶け込むことで素材に違った奥行きを感じることができました。この“不完全な美”が、新しい表現方法として定着していくかもしれません。

 

三井化学株式会社×DRILL DESIGN
独自開発ポリマーの特性を生かした楽しい生活用品

100年以上にわたって世界初・日本初の新素材を生み出してきた三井化学株式会社は、デザインスタジオDRILL DESIGNとコラボ。オレフィン系新素材の『アブソートマー®』を用いたプロダクトを展示しました。

アブソートマー®は、ナノレベルで分子構造を制御した素材。ポリマーの粘性的な性質を最大化させることにより、温度によって感触が変化するのが特徴です。低温状態では硬く、温めるとしなやかに形状を変えます。この特性を利用したユニークなコップが展示されていました。

ヒトの体温で変形するため、持っていると手にフィットするような独特の感触で、ずっと触っていたくなるような不思議さを感じられました。変形させた状態で冷やすとそのままの形で硬化するのも面白いポイント。ユニークな特性を活かして生活用品を例に落とし込むことで、新素材の魅力が引き出されていました。

 

素材の可能性を広げ、新しい用途をつなぐ

デザイナーの視点で引き出された、素材の可能性。機能性の高い素材にデザイン性の高さを掛け合わせることで、今までにない斬新なプロダクトの数々が生みだされていました。『MATERIAL DESIGN EXHIBITION 2017』は、素材開発に携わっている方にも多くの刺激をもたらしてくれるのではないでしょうか。企画展は12月22日まで開催中。みなさんも、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?

 

【MATERIAL DESIGN EXHIBITION 2017 概要】
テーマ:BYPASS
〜素材と新しい用途をつなぐBYPASSを創る・見せる〜

会期:2017年10月16日(月)〜12月22日(金)
時間:10:00〜18:00
休館日:土・日・祝
入場料:無料
会場:Material ConneXion Tokyo ショールーム(東京都港区南青山2-11-16 METLIFE青山ビル4F)
公式サイト:http://www.mcx-mde.com/

著者プロフィール:

リケラボ編集部

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