高校・大学受験や理系の仕事解説など、中学生・高校生の進路選びに役立つ情報をお届け。
大学で研究している先生や、企業で技術職や研究職として働く人たちは、理系の専門知識を生かして第一線で活躍しています。しかし、そうした方たちは理系科目のすべてが得意だったのでしょうか?実はそうでもありません。「理科は好きだけど数学が苦手」、「物理のテストの点数はいいけど特別好きではない」など、高校時代には皆さんと同じ悩みをもっていたようです。理系分野の第一線で活躍する人たちは、苦手科目をどう克服して、得意科目をどう伸ばしていったのでしょうか。また、今勉強していることが将来やりたいこととどうつながっているのかがわかれば、勉強するモチベーションも上がるはず!研究や仕事の内容も教えてもらいながら、得意科目の伸ばし方、苦手科目の克服法などを伺いました。ぜひ、参考にしてみてくださいね!
(お話を聞いた方) 勝義直(かつよしなお)先生 北海道大学大学院理学研究院・生物科学部門・教授。1982年に山口大学理学部生物学科卒業、1995年に総合研究大学院大学生命科学研究科分子生物機構論専攻博士課程修了。2015年より現職。専門は比較内分泌学でホルモンの受容体について研究。 |
進化の中でホルモンの受け皿がどう変わったのかを研究
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まずは先生の研究を教えてください!
——今日はよろしくお願いします。先生は何の研究をしているのですか?
いろいろな動物の内分泌系を比べて、進化の過程の中でどう変わってきたのか、どう適応してきたのかを調べています。
——内分泌系ってホルモンが出てくるものですよね?生物基礎で習いました。
そうです。アドレナリンや成長ホルモンは聞いたことがあるかもしれませんね。私の研究室では、女性ホルモンであるエストロゲンや男性ホルモンであるアンドロゲンなどが含まれるステロイドホルモンに着目しています。そして、ホルモン自体ではなくホルモンを受け取る受容体というものを調べて、進化の中でいつからステロイドホルモン受容体ができたのか、どう変わってきたのか、ということについて研究しています。
——今生きている動物を調べて進化がわかるのですか?
いろいろな動物で比べると、ステロイドホルモン受容体が進化の過程でどう変わってきたのかわかります。原始的な脊椎動物である無顎類のヤツメウナギや軟骨魚類のゾウギンザメなどで調べているんですよ。
——人間にとっても、その受容体が大事なのですか?
とても大事です。ステロイドホルモンやその受容体が正しく働かないといろいろな病気につながることがわかっています。私自身は人間の病気について直接調べていないのですが、自分の研究が人間の病気の解明や薬作りに役立つかもしれないと考えながら研究をしています。
——どんなときに研究のやりがいを感じますか?
やはり、新しい発見をすることが何よりの楽しみですね。発見をまとめて、論文として世界に先駆けて発信できることが大きなやりがいになっています。
——先生の研究室では、卒業後は生物の研究者になる人が多いのですか?
もちろん大学で研究を続ける人もいますが、製薬会社や食品メーカーの研究職、他にも公務員やシステムエンジニアとして活躍している卒業生も多くいます。ここでやっている研究内容と結びつけずに就職先を決めることも多いですよ。
生き物の研究をしたくて理系へ
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理系を目指したきっかけを教えてください!
——子どもの頃から生き物が好きだったのですか?
そうですね。小さい頃から虫や魚などと接することが多くて、生き物は好きでした。小学生のときに『生きものばんざい』というテレビ番組があって、いろいろな生き物の生態と人間との関わりを紹介しているのを見て、生き物の研究をしたいと思うようになりました。中学生、高校生になってもその思いは変わらず、大学の理学部生物学科に入れば生き物の研究ができることを知って、理系に進みました。
苦手だった数学、あるきっかけで目の前が明るくなって成績アップ!
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高校生のときに得意だった科目を教えてください!
——理系に進んだということは、理科や数学が得意だったのですか?
確かに高校時代で得意だったのは数学です。でも、小学校と中学校の頃はそれほど得意ではなかったんですよ。
——数学のどこが苦手だったのですか?
方程式の移行が全然できませんでした。例えば「a + 2 = 5」という式があったとき、左辺の2を右辺に移すときにはプラスとマイナスを入れ替えて「a = 5 - 2」とやりますよね?ほとんどの人ができるはずのこの計算が、中学生だったときの自分はできなかったんです。
でも、あるとき友達に教えてもらってプラスとマイナスを入れ替える意味が理解できて、一気に目の前が明るくなったことを覚えています。それからテストの点数も上がって、そのまま高校でも数学が得意科目になりました。
——急にわかる、なんてことがあるんですね!
苦手科目でも、あるとき急にわかるようになって得意科目になることもあるんですよ。苦手科目だからって諦めないことが大事だと思います。
——おすすめの勉強法があれば教えてください。
入試問題を作る立場から話すと、教科書の範囲を超えた問題を出すことはないので、成績が伸びないときは原点となる教科書をじっくり読み直すことです。おすすめの方法があるとすれば、自分が使っている教科書とは違う出版社の教科書を読むのもいいと思います。
——教科書で内容やレベルって違うのですか?
内容やレベルはどの教科書も同じです。でも、図表や言い回しが違うことがあって、他の教科書のほうが自分にしっくりくる書き方になっている、ということもありえます。読み比べることで、書いてある内容をより深く理解できるようになると思います。
面白いと思えると勉強するモチベーションが上がる
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苦手だった科目も知りたいです!
——先生が高校生だったときに苦手だった科目は何ですか?
理系科目はひと通り得意だったのですが、文系科目の日本史は最後まで苦手でした。ですが、大学に入った後で、テレビの『年末時代劇スペシャル』という番組を見て幕末に興味をもって、それからは日本史全体が好きになりました。
今では歴史小説を休日だけでなく、実験途中の空き時間にもよく読んでいます。歴史の先人たちの生き様に胸が躍って、自分の研究も歴史の1ページになる日は来るのかなと、ふと考えることもあります。
——大学の研究室って、結構自由なんですね(笑)。
そんなところもありますね。さっきも数学で急にわかるようになったと言いましたけど、何かのきっかけで好きになったり得意になったりするのは文系理系関係なくあると思います。私の場合はテレビでしたけど、本でもいいし、今ならYouTubeでもいいので、科目に関係する内容で面白そうなものが見つかってくると、勉強するモチベーションも上がると思います。
——あと、先生が高校生のときにもっとがんばればよかったと思う科目は何ですか?
研究で使う英語ですね。英語のスキルがもっと高ければと常に思っています。生きた英語を身につけるために、観光に来た外国人と会話をするなど、積極的に「使う」ことを実践すると身につくと思います。
自分の興味が進路につながる
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学部選択に迷っています。
どのように進路を決めたらいいでしょうか?
——最後に、理系進学を目指す高校生に応援メッセージをお願いします。
科学技術の発展は、人類が豊かな生活を行うためには欠かせません。研究から得られるさまざまな成果を利用できる技術へ応用するには長い時間を必要としますが、最初は小さな基礎研究からの発見が元となります。地道な基礎研究と、それから派生する応用技術の両方が、科学技術を私たちの生活に役立てるまでに大切となります。
そして、基礎研究も応用技術も、多くの人のアイデアや技を必要とします。理系進学を志す高校生の皆さんは、いろいろな可能性を秘めた一人一人ですから、さまざまな現象に興味をもってください。その興味が自分自身の進路につながるでしょう。
理系は、医学・理学・工学・農学などいろいろな分野があります。自分自身の可能性を狭めることなく、常に目標をもって、そしてチャレンジ精神を失わず日々の生活を送ってください。
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