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理系すぎるお料理レシピ:第9回「濃厚な甘さの干し柿」 | リケラボ

理系すぎるお料理レシピ:第9回「濃厚な甘さの干し柿」

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私たちが日ごろ口にするあらゆる料理は、さまざまな化学反応によって生まれています。調理とは科学であり、レシピとはある料理を再現するための“実験手順書”でもあるのです。

今回ご紹介する「理系すぎるお料理レシピ」は、「干し柿」。渋い柿を干すことで甘くなる理由も解説しているので、ぜひ読んでみてください。


濃厚な甘さの干し柿の再現方法とその考察

目的

柿の濃厚な甘さがギュッと詰まった干し柿を作る。

方法

〈材料〉

・渋柿…8個
・麻ひも…280cm

〈手順〉

    1. 柿を洗い、ヘタの周りの葉を手でむしり取る。
    2. 包丁を使い、軸を残しヘタの周りが平らになるよう皮を剥く。
    3. 全体の皮を剥く。(ピーラーを使ってもよい)
    4. 70cmの長さに切った麻ひもの両端に柿をくくりつける。(ヘタに残った軸の部分に結びつけるようにする)
    5. 鍋に湯を沸かし、柿を5秒入れ煮沸消毒する。
    6. 軒下などの、日当たりと風通しが良い場所に干す。このとき、柿同士が触れ合わないようずらすとカビが生えにくくなる。
    7. 1週間経過したら柿を手で揉んでおく。
    8. 2週間経過したら完成。

結果

濃厚な甘さの、おいしい干し柿が完成した。

ポイント/考察

■渋柿が渋い理由
柿に含まれる渋み成分は「タンニン」だ。渋みを感じるのは、可溶性のタンニンが唾液によって溶け、口内のタンパク質を変性させることによると言われる。干し柿は、このタンニン(カキタンニン)を不溶化させることによって、渋みを感じないようにしたものである。

■柿を干すことで渋くなくなる理由
可溶性タンニンは、アセトアルデヒドと結合することにより不溶化される。
柿の皮を剥くと果実の表面に皮膜ができ、細胞が呼吸できなくなる。呼吸が妨げられると果実内部にアセトアルデヒドが蓄積されタンニンと結合し、渋みを感じなくなるのだ。

■干し柿を揉む理由
干している途中で柿を揉むと、水分が表面に出てくるため内部と表面の乾燥度合いや味のムラを抑えることができる。また糖分も表出するため、市販の干し柿のように表面に白い粉が出てくる。

結論として、濃厚な甘みのある干し柿を再現するには、

    1. 皮を残さないようしっかりと剥き、果実内でアセトアルデヒドが生成されるようにする
    2. 乾燥や味のムラを防ぐため、1週間経過時に柿をしっかりと揉んでおく

ことが重要である。


ねっとりと濃厚な甘みが癖になる「干し柿」。渋い柿の皮を剥いて干すことによって、渋みを感じなくなるという知恵には、科学現象が詰まっているのでした。みなさんもぜひ挑戦してみてくださいね。
理系・文系を問わずレシピに潜む科学現象を理解することは、料理上達への一歩。次回もお楽しみに!

フローチャート作成参考:
『応用自在な調理の基礎 フローチャートによる系統的実習書 日本料理編』
河内一行ほか/家政教育社

(記事監修/管理栄養士 棚橋伸子)

リケラボ編集部

リケラボ編集部

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