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理系すぎるお料理レシピ:第15回「豚の角煮」 | リケラボ

理系すぎるお料理レシピ:第15回「豚の角煮」

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私たちが日ごろ口にするあらゆる料理は、さまざまな化学反応によって生まれています。調理とは科学であり、レシピとはある料理を再現するための“実験手順書”でもあるのです。

今回ご紹介する「理系すぎるお料理レシピ」は、「豚の角煮」。味をしっかりと染み込ませ、やわらかくジューシーに仕上げるコツを詳しくご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください!


豚の角煮の再現方法とその考察

目的

味がしみしみで柔らかくジューシーな豚の角煮をつくる。

方法

〈材料〉3〜4人分

・豚バラ ブロック肉…800g(400gほどのものを2本用意する)
・生姜…スライスしたものを5枚
・酒…200ml
・しょうゆ…大さじ3
・みりん…大さじ4
・砂糖…大さじ2


〈手順〉

■下準備

  1. 豚肉にはフォークで数カ所穴をあけておく。

■下茹で

  1. 鍋に水をたっぷりと入れて加熱し、水温が50℃に達したら豚肉を入れて茹でる。
  2. 煮立って肉の表面の色が変わり、アクが浮いてきたら一度湯を捨てて豚肉を水で洗う。
  3. 鍋を洗ってから再び豚肉を入れて、肉がかぶるくらいの量の水を入れて中火で加熱する。
  4. 煮立ったら弱火にして落し蓋をし、90分茹でる。
  5. 茹で終えたら落し蓋をしたまま冷めるまで置く。
  6. 肉を茹で汁から取り出し4cm角に切る。(茹で汁はこのあと使うため捨てない)

■味付け

  1. 新しい鍋に豚肉と酒を入れる。肉がひたるくらいの茹で汁を入れ、生姜を加えて中火で加熱する。
  2. 煮立ったら弱火にして落し蓋をし、30分煮る。
  3. しょうゆ、みりんを加え落し蓋をして弱火で20分煮る。
  4. 砂糖を加えて落し蓋をし弱火で10分煮る。火を止めて冷めるまで置く。
  5. 中弱火で再び加熱し温めてから器に盛り付け、煮汁をかけて完成。

結果

味がしみしみで、柔らかくジューシーな豚の角煮が完成した。

ポイント/考察

よく味のしみたジューシーな豚の角煮を作るには、以下を心がけるとよい。

■味をしみこませるコツ
豚肉は調理前にフォークで穴をあけておくことで味がしみやすくなる。また、煮たあと一度冷ます工程も味をしみこませるうえで重要なポイントだ。角煮のような煮物では、調味料が調理素材へ移動する拡散という現象により味がしみ込む。拡散による味のしみ込みは温度が高い方がしみ込む時間も早いのだが、長時間煮続けると食味や食感が落ちてしまう。

反面、調理後に冷ますという工程にはある程度の時間が必要であり、この冷ます工程がそのまま「長時間つけ込む」ことにつながる。この状態では、煮汁に豚肉を長時間つけ込むことになるので、食味や食感を損ねることなく味をしみこませることができるのである。つまり、浸けている時間が長いということが、味のしみ込みに影響するということだ。

■ジューシーに仕上げるコツ
下茹での際、豚肉を水から加熱するよりも50〜60℃の湯に入れて加熱をスタートするほうが旨味成分の流出が少ないとされているため、今回は水温が50℃に達した時点で豚肉を茹で始めた。下茹でを終えたら、冷めるまで置いてから肉を取り出すとよい。

また、肉を柔らかく仕上げるための処理として、今回はたっぷりの酒を使用している。酒で調理水のpH値を下げることにより肉の保水性を高め、ジューシーに柔らかく仕上げることが可能になる。

肉はpH5である。保水性はpH5で最低値を示し、それより酸性もしくはアルカリ性に傾くと増大する。酒で調理水のpHを下げることにより、イオン同士の静電気的な反発が起こり筋繊維がほぐれる。これにより、筋繊維の間に隙間が生じ、筋タンパク質の網目構造の組織の中に水分が入り込むことにより保水性が高まる。

結論として、おいしい豚の角煮を再現するには、

  1. 豚肉には調理前に穴をあけておき、下茹では50℃の湯でスタートする
  2. 煮込む工程ではたっぷりの酒を使用する
  3. 完成後はしばらく置くことで味をしみ込ませる

ことが重要である。


自宅で作るとパサパサになってしまいそうで、少しハードルの高さを感じる角煮ですが、調理工程はシンプルです。ポイントを押さえれば、自宅でもジューシーで味のよくしみた角煮を作ることができますよ。ぜひ試してみてくださいね。

フローチャート作成参考:
『応用自在な調理の基礎 フローチャートによる系統的実習書 日本料理編』
河内一行ほか/家政教育社

(記事監修/管理栄養士 棚橋伸子)

リケラボ編集部

リケラボ編集部

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