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博士課程修了後に困らないためにすべきこと:理学博士KOTORAのキャリア相談室vol.10

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理学博士でありキャリアコンサルタントであるKOTORA先生のキャリア相談室。
今回は、博士課程に進学された方、進学を検討中の方へのメッセージです!


こんにちはKOTORAです。

博士のキャリア支援をしていると、博士課程に進学する人の中にも将来のキャリアについて漠然としたイメージや希望を持っているだけで、具体的な準備をしていない人が多いと感じています。研究が楽しくて忙しくて、将来のことまで気が回らないという人もいれば、逆に研究がうまくいっていなくて、将来のことを考えたくないから目を逸らしているように見える人もいます。

でも、研究職を目指す場合にも、博士の新卒で企業への就職活動をする予定でも、進学の前後など、できるだけ早いタイミングで自分がどう行動していくのか考えておいた方が良いと思います。博士課程へ進学して3年で学位を取得する。そのために必要な論文数は大学院や専攻によって規定があるはずなので、ますは学位取得に必要な最低限の数の論文を出せるように研究計画を立てることになると思います。でも、それは最低限なので、もう1歩進んで計画を深めておきましょう。

今回は博士課程修了後のことをどう考え、そのために何をすべきなのか、整理してみたいと思います。

 

アカデミアでの研究職を目指すなら・・・

学位取得後、大学や研究機関などアカデミアでの研究職を目指すなら、職を得るために何が必要でしょうか。まずは自分が専門とする分野周辺、研究室の先輩や学会で会った人、自分がこういう研究・活動をしたいと思うような仕事をしている人に、その職を得たときにどのくらいの業績(論文数)や経験があったのか、どういう経緯で職を得たのか、詳しく聞いてみてください。分野によってポスドクや雇用期間の定めのない職を得るのに必要な論文数の目安は大きく異なります。また、論文の第一著者に対する考え方も変わってきます。つまり第一著者としての論文でなければあまり評価されない分野もあれば、第一著者でなくても評価される場合もありますし、かかわった論文のインパクト・ファクター(IF)が重要視されることもあります。

自分が進もうとしている道で必要な経験を詳しく具体的に知ることで、博士課程在学中に博士号取得に必要な研究や論文数に加えてどんな活動をしていくのか考えることができます。第一著者の論文を何本以上受理まで持っていく、共著でいいから何本以上はあったほうがいい、IFの高い雑誌への掲載を目指す、IFよりも紀要でもいいからとにかくたくさん書く、人脈作りのために複数の学会で発表する、海外でポスドク就業するために国際学会での発表を目指す、共同研究を立案してかかわる分野や領域を広げる、博士号取得後の研究につながるような研究の種を見つける、本を1冊書く…具体的にどんな活動をしたら良いか見えてきたら、指導教員や先輩とも相談しながら、博士課程1年、2年、3年など区切りのタイミングでの到達目標について具体的にしておきましょう。

可能であれば、「ここまでできてたらいいな」というプランAと「最低限ここまではできてないといけない」というプランBを考えて、そこへ到達するための行動計画を立てましょう。メインの研究テーマで実験終了、論文案を共同研究者と固める、論文を仕上げて投稿など区切りのタイミングをいつまでにやるのか考えていきます。もし、そこまで細かく行動計画を立てるのが難しい場合、例えば、研究内容が天候に左右されやすい、指導教員と詳しい相談ができない等の理由で行動計画を立てることが難しい場合には、学年ごとなど区切りのタイミングでの到達目標だけでも考えておくと良いと思います。

 

新卒で企業へ就職したいなら・・・

博士の新卒として企業へ就職したいと考えているなら、新卒の就職活動について情報を集める必要があります。いつどんなタイミングで行動を起こさなければいけないでしょうか。博士の採用活動は学部・修士と比較して早いタイミングから始まります。最近増えているインターンシップは博士課程2年の夏頃までにおこなわれることも多く、その評価次第で内定を出している企業もあります。インターンシップに参加しない場合にも新卒の就職活動はできるだけ早く準備を始めた方が良いでしょう。博士課程3年間を通じて、いつなら就職活動をする時間が取れるのか、研究の進捗との兼ね合いはどうか、博士課程での研究計画を立てる段階でよく考えて、指導教員や先輩の理解を得られるようにあらかじめ相談しておきましょう。

また、キャリアセンターのような就職活動を支援する部署があれば、ぜひ一度は訪問してどんなサポートを得られるのか知っておきましょう。企業からの求人情報を閲覧できるだけでなく、新卒の就職活動に必要なことを学ぶセミナーを開催していたり、卒業生が選考を受けたときの面接の様子を記録した資料が企業ごとにファイリングされていたり・・・新卒の就職活動をするなら知っておいた方が良い情報がたくさんあります。さらに専門資格を持った相談員が予約制でキャリア相談、応募書類添削、面接対策など個別の相談に応じている場合も多いです。支援セミナーや企業と実際に会えるイベント等については、近隣の大学・大学院・研究機関に所属する学生・院生も対象にしている場合があるので、もし、自身の所属機関で興味のあるイベントが開催されていない場合には、地理的に近い大学・大学院や、自身の専門分野・専攻と近い学部・研究室のある大学・大学院等で開かれているイベントについても調べてみましょう。新型コロナウィルス感染症の流行によって、多くのイベントがオンライン開催になっている昨今では、地理的に遠い大学・大学院主催のイベントでも参加可能な場合があります。

▼下は北海道大学の大学院生のキャリア支援アカウント。院生向けキャリアイベントの告知や博士の採用企業情報をお知らせしてくれている。北大生以外にも役立つ情報が多い。

▼博士課程学生向けのキャリアコンテンツ(動画)。
北大所属の人向けの案内も一部ありますが、所属大学にかかわらず誰にでも視聴できるように公開されており、博士課程での就職活動についてわかりやすい情報が得られます。

画像提供:北海道大学人材育成本部 上級人材育成ステーション S-cubic

https://cofre.synfoster.hokudai.ac.jp/cgi-bin/video/video.cgi/view/?id=1379

 
▼上記動画だけでなく、博士課程学生に役に立つコンテンツが公開されているので、こちらもぜひチェックしてみてください。

連携型博士研究人材総合育成システムが提供する助教とDC・PDのための動画配信サイト
https://cofre.synfoster.hokudai.ac.jp/cgi-bin/video/video.cgi

 

新卒の就職活動に時間を取れなくてもあきらめないで!

インターンシップ参加や新卒の就職活動に時間を取られることを良く思わない教員もいるかもしれません。また、博士課程の研究途中で実験を失敗したり研究テーマを変更することになったりして博士号を取得できる見込みが立たず、それでも3年で学位取得するために全力疾走で研究しているから就職活動なんてする時間がないという人もいるでしょう。もし、どうしても就職活動をするのが難しい場合には企業への就職を諦めなくてはならないのか、と言えばそうではありません。次善の策ではありますが、学位取得の目処が立ってから人材会社経由で企業へ就職するという手段もあります。新卒として通常の時期に就職活動をするよりは応募先企業が少なくなってしまいますが、中途採用枠で求人を探して応募することができます。中途採用は応募書類提出から採用まで早ければ2週間、時間がかかる場合でも1〜2ヶ月で採否が決まります。つまり博士課程修了直前の3月初旬から応募し始めても4月入社に間に合う人もいるのです。

3月末での学位取得・博士課程修了を目指す場合、スケジュールは大学院によってさまざまですが、最初の手続きである学位審査の申請は半年以上前に提出する大学院が多いでしょう。その後、博士論文提出、口頭試問、修正・製本と進んでいきますが、私が勤めていた人材会社では、学位審査の申請が無事に終わって学位取得の目処が立った時点で登録に来る博士課程の大学院生の相談を受け付けていました。学位取得までのスケジュールを確認した上で登録・相談して、口頭試問、論文修正が終わった段階で応募し始めます。多くの企業では新卒の採用活動は終わっている時期なので、応募できる企業・求人は少ないですが、人材会社だからこそ企業の社風や求めている人材像をよく知っているので、的を射た求人を提案してくれます。私も人材会社時代には、ご相談者の研究内容や将来の希望、性格的なことまで考慮に入れて応募できる企業・求人を探して提案していました。通常どおりの新卒の就職活動がどうしてもできない場合に、最終手段として学位の目処が立ってから中途採用枠を検討する方法もあると知っておいてもらえればと思います。

 

まだ決めていない進学前後の人はまずは情報収集!

博士課程進学前や進学後間もない時期で、将来についてまだ具体的に考えていない状況であれば、進学や研究の準備と並行して、その分野の博士号取得者が大学院修了後にどのような進路へ進んでいるのか周囲の人から情報を集めていきましょう。特に大学院博士課程で所属する研究室の先輩の進路については情報を得やすく、自身の将来を考える上でとても大事な情報です。もちろん、進学を考える前に情報収集して、進学するかどうかを考える材料にしたり、どの分野・研究室へ進むかを考える材料にするのも良いと思います。タイミングはいつでも良いのですが、博士課程の研究や論文執筆が忙しくなる前に一度、大学院修了後の進路について情報をしっかり集めて考える時間をとりましょう。

 

研究がうまく行かないときこそ、キャリアについて相談しよう

博士課程での研究や修了後のキャリアについて、具体的に考えて計画を立てて行動していくことと同じくらい大事なことは、計画や目標を適切なタイミングで見直すことです。実験がうまくいかなかったり、思わぬ結果が出て新たな研究テーマが出てきたり。何事も当初考えていたとおりに進むとは限りません。もし、計画通りに順調に進んでいるなら、その後の目標をもっと高くしたり行動計画を早めることもできるでしょう。一方で計画通りに進まず遅れている場合には、その後の目標自体を見直す必要があります。研究がうまくいかない、思うように論文が出ないという人こそ、博士課程修了後の進路についても見直しが必要です。

研究がうまくいかない状況では投稿論文の準備や執筆が進まず、博士号取得申請の時期が迫ってくるほど精神的に厳しくなってきます。精神的に厳しい状況で将来のことを考えても、客観的な状況の把握や冷静な判断ができません。特にアカデミアでの研究職を目指している人にとっては、研究がうまくいかないことがつらくて、心のどこかでアカデミアで研究職に就くのは難しいかもしれないと感じながらも、向き合うことを避けてしまっている人がいるように思います。

向き合うのは怖いかもしれませんが、不安というものは状況がわからないことで大きくなる側面があるので、状況をはっきりさせることで少し気持ちが軽くなるかもしれません。自分の状況や将来の希望を整理してから、できれば誰かに相談しましょう。教員や先輩、学会で知り合った同じ分野の人など安心して話せる人、信頼できる人に状況を伝えて意見をもらうことで、視野を広げて将来の可能性について考えていくのが良いと思います。研究がうまくいかない状況を周囲に相談したら、外部の研究者から共同研究をしようと提案されて、その研究がうまくいって博士号取得できてポスドクまで決まった、という話もあります。うまくいかないときに1人で考えているとネガティブな思考になりがちですから、ぜひ周囲の人に相談をしてみてほしいと思います。

 

博士課程3年間で博士号取得が間に合いそうにないとき

研究の進み具合が良くないのであれば、あまり気が進まないかもしれませんが、博士号取得に必要な論文数の受理が間に合わない場合についても具体的に想定し、必要なことを調べておくのが得策です。いつの時点で何本投稿論文が出ていなければ、博士号取得時期について考え直すのか。留年するのか、3年で単位取得退学をしてその後に博士号取得を目指すのか。学費や生活費など経済的な面をどうするのか。単位取得退学後に博士号取得を目指す場合には、その際の所属について教員と相談してどのような可能性があるのかについても情報を集めましょう。企業で就職したいと考えているならば、博士号の学位が取れない可能性があることを就職活動の中で応募先企業の担当者に相談した方が良いでしょう。

博士号取得を諦めて企業へ就職する場合には、新卒の就活に間に合うのか大学のキャリアセンター等就職活動を支援している部署へ相談に行ってみましょう。もし、経済的に学費の支払いや生活費に苦慮する状況であれば、年度の終わりを待たずに退学することを検討しても良いかもしれません。ただ、その際には必ず大学院の事務に単位の考え方について問い合わせて、どのタイミングの退学であれば単位取得退学の扱いになるのか、中途退学の扱いになるのか確認してから決めましょう。履歴書での学歴の表記が異なります。新卒の就職活動では応募する求人が見つからない場合には、人材会社へ登録して中途採用求人に応募することも検討してください。

絶対に間に合わせる!と心に決めて、間に合わなかったときのことを考えない方が強い気持ちでがんばれる、という人は考えない方が良いかもしれませんが、もし、不安な気持ちが心の中にあるのであれば、その不安に向き合って具体的な方針やスケジュールを決めた方が良いと思います。

 

納得してキャリアを歩むために

大学院進学前後は研究が楽しく、忙しい時期と思いますが、いつ、どのタイミングからでもいいので、自身の将来やキャリアをどうしていくのか考えていきましょう。こんなことを書いている私は大学に入学したときにはすでに漠然と「将来は研究者になりたい」と思っていました。でも、具体的なことをあまり考えないまま修士課程、博士課程へと進学し、博士号取得後、ポスドク研究員として研究しているときに「自分にはアカデミアでの研究職は無理だ」と理解しました。同じ分野の後輩が自分よりもたくさんの論文を出していたからです。もっと早くに将来アカデミアで研究職に就くために必要なことと自分に足りないことについて考えて、例えば苦手な英語の論文執筆についてどうやって上達を目指すのか、具体的な目標を立てて必要なことに取り組んでおけばよかったと思いました。そんな経験があるからこそ、博士課程前後での情報収集がとても大事だと考えています。キャリアには正解がないので、自分が納得できる道を作っていくしかありません。少しずつでも時間をとって、人の話を聞いて、思い通りにならなくて悩む時期があったとしても、最終的には「この選択でよかったな」と思えるような道を歩んでいけるよう、応援しています。

著者プロフィール:

KOTORA

キャリアコンサルタント。博士(理学)。生物系で博士号取得後、ポスドク、大学非常勤講師などの職を経てから民間企業の非研究職へキャリアチェンジし、人材会社の中の人10年超。主に理系求職者のキャリア相談・求人紹介を担当。現在はメーカー人事に勤務。これまでに自身も派遣社員・契約社員・正社員と多様な雇用形態を経験し、担当した業務は大学での生物学の講義・実験補助・就活生向けキャリアセミナー、人材会社でのキャリアアドバイザー・人材育成など幅広い。「人材会社の中の人」「人材サービスの利用者」の両方の立場を経験した人として、文系理系問わずキャリア選択をサポートする活動をしている。 twitter:@KOTORA_CC

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