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7割が任期性雇用、4割が地方へ。文科省発表の博士課程修了後のキャリア調査結果をリケラボ編集部が解説 | リケラボ

「博士人材の4割は地方圏在住」文科省の調査であきらかに

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「博士人材追跡調査」2016年調査結果<速報>

大学院の博士課程を修了するのは、毎年約15,000人。しかし、研究環境や雇用情勢等の影響により、専門性を活かしたキャリアの構築は簡単ではありません。

その解決策などを探るべく、2014年から文部科学省によって始まったのが、「博士人材追跡調査」。科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が、大学院博士課程を修了した人材に対して、その後の就業状況などを調べたレポートです。

2016年11月に実施した調査結果の速報版が今年(2017年)8月に公開されました。大学院博士課程への進学理由や現在の雇用状況、地域間移動について、暫定の調査結果がまとめられています。

調査は、博士課程修了の半年後と3年半後に実施。今回のデータは、2015年度に博士課程を修了した4,922名と、2012年度に修了した2,614名の実情です。

アカデミアから他セクターへの流動性は低い

リケラボ編集部が注目したのは、博士課程終了後の雇用先。

博士課程修了1年半後の調査では、大学などが50.9%、公的研究機関は11%、民間企業が27.7%でした。その2年後にあたる修了3年半後の数字と比較しても、大勢としては分布に大きな変化はありません(図表4-1)。

雇用先を「アカデミア」「民間企業」「その他(非営利団体、個人事業主など)」の3つのセクターに分類して、各セクター間の具体的な人の移動を見た統計(図表4-2)では、博士課程修了1.5年後に「アカデミア」に雇用されている人の約9割(89%)が3年半後も継続して「アカデミア」に雇用されていることがわかります。

他のセクターから「アカデミア」への移動が「民間企業」から8%、「その他」から23%あるのに対し、「アカデミア」から他セクターは「民間企業」へ3%、「その他」へ8%と、いずれも流入が流出を上回っています。図表4-1のとおり全体に流動性がそれほど高くない博士人材の雇用状況にあって、とりわけ「アカデミア」は、一度就職するとそのままとどまる人が多いといえそうです。

インターンシップの経験の有無はキャリアに影響あり

在学中のインターンシップの経験が、その後のキャリアに一定の影響を与えているという興味深い結果も出ています(図表4-3)。2012年と2015年のいずれのデータでも、インターンシップ経験者はインターンシップ未経験者よりも博士課程修了直後から民間企業を雇用先に選択する傾向が強いことがわかります。

もちろん、もともと民間企業への就職志向が強い人がインターンシップを経験することが多いということもあるでしょうが、インターンシップの経験を通じて民間企業で働くイメージが具体的に湧いたという人も少なからずいるでしょう。キャリアの視野や選択肢を広げるという意味で、インターンシップはひとつのよい機会になっている様子が、データからもうかがえます。

アカデミアでは7割以上が「任期制雇用」

「アカデミア」内の雇用状況も、もう少し深掘りして見てみましょう。

修了半年後の調査では、ポスドクが27.8%、助教が24.1%で、全体の半数以上を占めています。そのあとに、特任助教(5.6%)や研究助手・実験助手・技術支援員(5.5%)、非常勤講師(5.4%)などが続きます。全体として、任期制の雇用が7割を超えています(図表5-1、5-2)。

修了3年半後の調査では、アカデミアに任期制で雇用されている人に、今後のキャリア展望を尋ねています。全体の56.3%が「大学や研究機関で、研究者として安定的なポジションを得たい」と回答。しかし、年齢が高い人はアカデミアや研究者にこだわらず、「研究経験が活かせる仕事に就きたい」というフレキシブルな考えを持つ傾向にありました。

一方で現実には、年齢が高くなってから民間企業へのキャリア転換することは容易なことではありません。早め早めの情報収集や、アカデミアに閉じない幅の広い人脈づくりを行っていくことなど、日ごろからキャリアの選択肢の視野を広くもっておくことが重要かもしれません。

博士人材は三大都市圏外への移住傾向が高まっている?

出身大学院と現在の所在から、博士人材の地域間移動比率を示したデータも出ています。

東京・千葉・埼玉・神奈川・愛知・京都・大阪・兵庫を「三大都市圏」とし、これ以外の都道府県を「地方圏」とした場合、最も多いのは「三大都市圏→三大都市圏」で約半数。

しかし「地方圏→地方圏」が29%、「三大都市圏→地方圏」も11%をマークしました。地方の国立大学に雇用枠を求めるなど、全体では約4割が地方圏に在住していることがわかります。ジャンル別に見てみると、社会科学系や理学系は三大都市圏在住者が多いよう。反対に地方圏在住者が多いのが、農学系の58.9%、工学系の41.3%など

地方創生が叫ばれるなか、高度な研究能力や知見を持った博士が日本各地で地域のイノベーションに大きく貢献していく姿を想像したくなる結果です。

では、三大都市圏外にいる博士は、具体的にどんな仕事に就いているのでしょうか。実はそうした詳しいデータや専門分野別の傾向は、2017年末に公開される最終報告版に収録予定とのことです。

また、リケラボでも続報をお伝えしたいと思います!

取材協力:科学技術・学術政策研究所(NISTEP)

リケラボ編集部

リケラボ編集部

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