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あの製品はこうして生まれた! ライオン「Magica 速乾+」研究開発エピソード

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理系の知識を活かして、多くの人の役に立つ商品を世に送り出してみたい──そう考えているあなた。本シリーズでは、実際に定番商品や画期的な新製品の開発に携わる研究員の方に、製品の特性や、仕事の様子、開発職を目指す方へのアドバイスなどを伺っていきます!

第一回目の今回はライオン株式会社にお邪魔し、食器用洗剤「Magica 速乾+」開発チームの服部 昂さん(院卒・入社6年目)にお話を聞きました。

Magica 速乾+
高い洗浄力が人気の「Magica」シリーズから、2017年9月に新発売された製品。Magicaの特徴である油汚れが「サラサラ落ちる」“ナノ洗浄”に、すすいだ後に食器の水がすばやく切れる機能が加わった。
http://magica.lion.co.jp/product/sokkan.htm

 

乾かして片づけるまでが“食器洗い”だった

──まずは、Magicaシリーズの高い洗浄力の仕組みについて教えてください。

Magicaで油汚れが「サラサラ落ちる」のは、“ナノ洗浄”という当社独自の洗浄メカニズムによるもの。独自処方の界面活性剤が、油にすばやく吸着して包み込み、柔らかく浮き上がらせて細かく分解します。この“自発的乳化”作用によって、強くこすらなくても、油汚れが「サラサラ落ちる」ように感じられるんです。

<自発的乳化>
自発的乳化とは、こするなどの機械力に頼らなくても、界面活性剤のはたらきだけですみやかに乳化が始まる作用。この現象を活用できれば食器洗いの負担を軽減できるが、従来から報告されている自発的乳化では、加熱などの特殊な条件が必要で、一般家庭での使用には不適だった。ライオンでは長年蓄積した界面科学の技術をベースに、食器洗いという日常の条件でも自発的乳化作用を発現することを発見。Magicaの開発につながった。

 

──“速乾”というテーマに着目するようになったのは、どんな経緯だったのですか?

きっかけは、生活者の方たちの声でした。当社では、製品の使用感や食器洗いに関する意見をモニター調査することが度々あります。あるときの調査で、「水切りカゴである程度乾かして、ふきんで拭いてから棚にしまう」ところまでが“食器洗い”だという声が多く上がったんです。これまでの食器用洗剤は、「食器を洗う」行程に重点を置き、主に洗浄力の向上を図ってきました。でも、我々が考えていたよりも後の行程までもが食器洗いだと認識されていたわけです。私たちにとっては新しい発見で、純粋に驚かされましたね。このことから、“ナノ洗浄”と「速乾機能」を両立させた製品をつくろうと、「Magica 速乾+」の開発がスタートしました。

本来、お皿の表面は水が吸着しやすい状態になっているため、なかなか乾きづらいのです。そこで、水が吸着しやすい状態を弱める働きを持つ、独自処方の植物繊維由来成分を配合し、水切れのよさを実現させています。従来のMagicaと比較した結果、水切れの速度を20倍以上短縮することができました。


(▲左が従来の「Magica」、右が「Magica 速乾+」で洗った皿。水にくっつくビーズを使って、乾くスピードの違いを見せてもらった。「速乾+」のほうは、一瞬で滑り落ちるように水が切れていく。)

水切れ性能のテストは、5%濃度の洗剤液を含ませ10回揉んだスポンジで直径19cmの陶器皿を10回こすり、流水ですすぎます。そして、80°に立てかけて、残存水分面積が約1%になるまでの時間を測定しました。(実験に用いた皿はあらかじめクレンザーで洗浄)
▼下記は水切れ実験の動画。

 

──開発を進めるうえで、大変だったことはありましたか?

製品に新たな機能を加えるには、本当にたくさんの配合パターンを試す必要があります。組み合わせは無限にあるため、前もって仮説を立て、ある程度成功の可能性が高いと想定されるパターンで検証を繰り返していきます。今回の開発では「30秒で水が切れる」といった目標のもと、相当数の組成を試しながら、「Magica 速乾+」を完成させました。


(▲実際に食器を手洗いし、評価を重ねる。食器の表面で指を滑らせたときの感触を確かめて、汚れが落ちているか確認。このように、洗浄力の評価には人間の手の感覚がとても重要なのだとか。最終的には数値化するものの、まずは研究員たちの手で確かめていく。)

また、ひとつの製品を生み出すために、想像以上にたくさんの人が関わっています。マーケティング部門と、どんな製品にしていくか試行錯誤したり、基礎研究のチームや分析に特化したチームと連携しながら実験を進めたり……さらに、最終的には工場で生産をすることになるので、大きなスケールで大量に洗剤をつくるべく生産プロセスのチームとも連携をしたり。部署を越えて多くの人と意見を交わしながら開発を進めていくことには大変さも感じましたが、同時に大きなやりがいでもありました。

こうやって、いろいろな部署の人と関わるうちに、経営やマーケティング、財務など、製品以外のあらゆる知識を得たいとも考えるように。当社で働くようになってからは「こんな仕事もあるんだ」と気づかされることが多く、興味の対象が広がりましたね。これからも、そういった周辺知識を研究に活用していけたらと思っています。

 

──製品が完成したときは、どんなよろこびを感じましたか?

仕事が一区切りついたという面で、達成感や、ほっとする気持ちが大きかったです。でも私は、お客さまに使ってもらって反応を見るまでが仕事だと思っています。だから、今はまだドキドキしながら発売を待っている状態です。(※取材が行われたのは2017年8月)

 

研究開発職に就くには?
─興味の対象を広げて、みずからに新しい発見を─

──学生時代はどんな研究をされていたのですか?

有機化学を専攻し、有機ELディスプレイに使われる発光材料の合成や評価実験などをしていました。有機ELも家電などに使われていて身近ですが、私が研究していたのはそのなかの発光材料の一部だったので、実際の製品とは少し距離があるように感じていて……それで、より身近な製品を扱う企業での研究職を希望しました。

学生時代の研究は、現在関わっている界面活性剤とはまったく違う分野。そのため就職が決まったときは、知識がないという面で多少不安もありました。だけど、仮説を立てて検証していくという研究の進め方や考え方は同じですし、学生時代に学んだ有機化学の基本的な知識もあらゆる場面で活きていますね。それに、「学ぼう」という意識さえあればいつでも知識は身につけられるということも、社会に出てから実感しています。

食器用洗剤の部隊に加わったのは、今回の「Magica 速乾+」の開発からなのですが、以前はお風呂やトイレの洗剤を扱うチームにもいたんです。いろいろな商品を開発させてもらえるのは、毎回新鮮で面白いですね。

 

──研究開発職を目指す場合は、どんなことを心がけておくと良いでしょうか?

まず、日ごろからいろいろなことに幅広く興味を持つことが大切だと思います。画期的なアイディアは既存のものの組み合わせから生まれることも多いため、その素材になりうる引き出しは、たくさん持っておいて損はありません。最初から「これは自分に合わない」と決めつけないで、何ごともチャレンジしてみるのがいいのではないでしょうか。私自身は、日ごろからドラッグストアなどで、あまり興味のないジャンルの売り場にもあえて行ってみて、製品や開発のヒントを見つけることもあります。

また、先ほどお話した通り、製品の開発では想像以上にたくさんの人と関わることになります。そのため、人とのコミュニケーションも大切。苦手意識を持っている人もいるかもしれませんが、心配しすぎずチャレンジしてみてください。苦手だと思いこんでいたことでも、いざやってみると意外と平気だったり、そこから自分の可能性が広がることもあるはず。これは私の実体験からも言えることですね。

それと、大学(院)での研究にはぜひ能動的に取り組んでください。研究室によって、細かく指示を出してくれる先生もいれば、「自分で考えなさい」といったスタンスであまり口出ししない先生もいるかと思います。どちらの場合でも、どうしてこの仮説を立てたのか、この実験は最適な方法なのか、など、常に思考をめぐらせることが大切です。きちんと考えることを続ければ、社会に出てからも役立つ研究能力が身につくはずですよ。

 

まとめ

生活者のニーズに寄り添い多くの人が力を注いだ結果、高い洗浄力とすばやい水切れが両立する「Magica 速乾+」が誕生したのですね。開発時のエピソードから、苦手意識にとらわれず、興味の対象を広げてきた服部さんの姿勢まで……研究開発職を目指すみなさんは、ぜひ参考にしてみてください!

著者プロフィール:

リケラボ編集部

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