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人工知能で変わる暮らし。AI活用の現在とこれからの“リアルな話” ~プロのデータアナリストに聞いてみた~

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GoogleのAI「アルファ碁」が名人に勝ち、世界に衝撃を与えたのが2016年。
以降、「AIによって労働力不足が解決する」と期待されたり、一方では「仕事を奪われる」「人類はいつかAIに支配される」と不安視されたり……。SF的な未来予測はさておき、現実にAIは生活やビジネスのあらゆるところで急速に活用が始まっています。

産業界でいま一番求められている人材も、AIエンジニアやデータアナリスト。実際に、目指す人も増えてきているのです。

そこで、「今現在、AIでは何ができるの?」「将来はどうなっていくの?」という気になる話題に迫るべく、実際にAIをビジネスに活用しているデータアナリストのプロフェッショナルに、「AIの現在とこれからの“リアルな話”」を聞いてみました。

今回お邪魔したのは、NECソリューションイノベータ株式会社。ICT(情報通信技術)を活用してさまざまな企業や官公庁、自治体の課題解決をサポートしている企業です。精細なデータ分析や最先端のAI技術によって、人々が安心安全に暮らせる基盤づくりを支えたり、もっと便利に生活できるようなシステム開発を行なったりしています。

お話を聞かせてくださったのは、『NEC the WISE』という世界トップレベルの最先端AI技術群を活用し、実際にさまざまな社会課題やビジネス課題の解決にAIを活用している「データアナリスト」の、亀山篤志さんです!

 

身近なところで続々と活用され始めているAI

──近年耳にすることの多い「AI」ですが、亀山さんはどんなものだと定義づけていらっしゃいますか?

我々NECグループとしては、「人間の知的活動をコンピュータで行う」ことを「AI」と捉えています。そしてその技術を活用して、社会価値を生み出すことを目指しています。

 

──たとえば、既に活用されている事例にはどんなことがあるのですか?

身近な例でいうと、ひとつは「顔認証」ですね。目、鼻、口端など、顔の特徴をデータベース内の画像と照合して、同一人物かどうか判定します。有名アーティストのコンサート会場でも活用されていて、入場時に顔認証によって本人確認をしているんですよ。

顔認証では、写真から顔を見つけ出し、見つけた顔の特徴を捉え、その特徴を登録されている顔写真と比較することで、顔の照合を行う。NECの技術は、写真の明るさや顔の表情などの違いに対応でき、高精度な照合が実現できることに定評がある。

 

──すでに、そこまでの精度を実現しているのですね。

ほかにも、コンビニやスーパーの需要予測にも活用されています。商品をたくさん仕入れすぎても、少なすぎても損失につながってしまうため、適正な量をAIの力で予測して、仕入れの指標にすることができます。日々の売上や、天気、気温などのデータをAIで分析すると、「明日はこれだけの商品が必要です」と結果が出ます。

 

──これまで人間が気づかなかったような傾向も出てきたりするのですか?

人間が気づかない傾向が出るということは、現状ではあまりありませんが、熟練の方でないと気づきにくい傾向をとらえることで、ベテランの店舗スタッフさんに「AIでもやっぱりこの傾向が出るのか」と分析結果に納得してもらえることが多いです。これはつまりAIを活用することで、新人のスタッフさんでもベテランさんと同じくらいの精度で需要が予測できるようになるということです。

 

──人間の感覚値を、定量化できるようになるのですね。

そうです。工場の検品などでも、検品する人によって良品と不良品の基準にバラつきが出てしまうことがあると思います。そこでAIによる画像分析技術を活用して不良品を検出するようにすれば、品質を一定の高いラインで保つことができるようになります。

業務の効率化や働き方改革にもAIが活用されてきていて、当社でも社内の事務手続きの工数削減に使われています。たとえば「台風で出張に行けなくなってしまったのですが、どうすればいいですか?」といったときに、チャットボットに入力すれば適切な手続きの手順を教えてもらえるんです。質問文の単語を適切に拾うことで質問者の意図を判断し、過去のQ&Aの履歴から該当する答えを予測、表示するというもので、これまで、電話やメールで社員が同じような質問に繰り返し対応していたぶんの労力を大幅に削減できるようになりました。うまく回答が示せなかったケースも、その都度学習していくので、使えば使うほどだんだん精度が上がっていきます。

 

──AIに対する世の中のイメージで、「よくある誤解」にはどんなものがあるのでしょうか?

「とりあえずデータを全部放り込めば良い答えを出してくれる」と思われがちなことですね。ここからはあくまで個人的な見解ですが、少し前にテレビの刑事ドラマで、AIにあらゆる情報を入力すると犯人がわかる、という話がありました。でも実際には、犯罪とひとくちにいっても同じ事件はふたつとなく、凶器も動機も、犯人の交友関係もまちまちですよね。そういった関連性の低いバラバラの情報から傾向を見つけるのは難しいと思います。また、ドラマ内で割り出された犯人は初犯だったんですが、犯罪歴のデータがない人を犯人だとピンポイントで割り出すことも難しいと考えます。AIは“機械学習”ですから、あくまでも学習されたものからしか答えられませんので。出せるとすれば「今回の事件ではこういうプロフィールの人が犯人の可能性が高い」という傾向くらいでしょうか。

もうひとつよく誤解されているのが、「ひとつのAIがあればなんでもできる」ということ。AIの開発思想にもいろいろあって、ひとつのAI技術を多方面に活用できるような汎用性の高いものを目指すパターンもたしかにありますが、細分化された目的に特化して開発されるものも多い。我々NECソリューションイノベータが得意としているのは、どちらかというと後者の細分化された製品の開発のほうですね。

 

データの声を聴くことが、よりよい分析につながる

──亀山さんは、具体的にどのようなお仕事をされているのですか?

『NEC the WISE』というAI技術群を活用して、分析の実証実験をするところを担当しています。

基本的にデータ分析の仕事は、お客さまからもらったデータを観察し、「このデータからはある程度こんな傾向を割り出すことができそうだな」と、分析の方向性を検討したり、より精度の高い分析結果を得るために、活用するデータの取捨選択をしたりします。

そしてデータを分析エンジンにかけたら、その結果をじっくりと見ながら考察し、お客さまに分析結果の報告をする、というのが一連の流れです。また、もし悪い結果があった場合は原因を調べて、再度分析にかけることもあります。

「報告」とは、お客さまの課題をデータ分析によって解決できるのかどうか、というのがまずひとつ。さきほどもお話したように、データのばらつきがあまりにも大きい場合などは、有効な分析結果を得られない可能性もあるためです。

もうひとつは、どのような分析方法が効果的なのかについて。『NEC the WISE』シリーズでは、予測結果の根拠が可視化されるのが特徴の「異種混合学習」と、高速・軽量で画像などのデータからも学習できるのが特徴の「RAPID機械学習」があります。「RAPID機械学習」は、いわゆるディープラーニングを搭載したソフトウェア。世間ではディープラーニングが話題になることも多いのですが、精度や汎用性の高さと引き換えに、結果を導き出すまでのプロセスが見えないという特徴があります。そのため、「根拠を可視化する必要があるか」など、お客さまの目的に合わせて、どちらの方が有効なのか最適な技術を提案します。

 

──通常、ひとつの分析プロジェクトがどのように進んでいくのですか?

だいたい1プロジェクトに2〜3ヶ月かけて、2、3人で取り組みます。一人がプロジェクトリーダーとして分析の指示を出し、残りの者が手を動かしてデータ加工のプログラムを作り、分析エンジンを動かして、分析結果を考察する……という役割分担で動くことが多いです。また、お客さまの課題に合わせてデータ分析を継続できるよう、システム化のイメージを作ることもあります。

顧客の課題を解決するためには、分析するだけではダメで、分析結果がその後の業務に組み込まれて有効活用されていく必要があります。そのため、システム化を分析プロジェクトの目的の一つとしています。

 

──「AIに任せればなんでもやってくれる」とイメージしている人も多いかと思いますが、しっかりと精度の高い分析結果を得て、実用につなげるには、亀山さんたちデータアナリストの力が不可欠なのですね。

そうですね。いくらAIを使って精度の高い分析が可能になったといっても、元のデータをそのまま入れるだけではダメなんです。たとえば天気のデータの場合、何十年に一度の異常気象があった場合、そのデータを入れるのか、はたまた入れないほうが良い分析結果を得られるのか判断したり、細かいところでいえば、天気のデータが「晴れ」だったり「はれ」だったり表記がバラバラなところを整えたり……単に、過去にさかのぼって大量のデータの蓄積があれば良い学習ができる、というものではないんです。生のデータを観察して、どのように分析するのがいいか考えるのは、やはり人間。私たちが「データの声を聴く」ことが大切になってくるんです。

 

AIの未来像 いつかは人間を超えるのか?

──AIの究極の目的は、人に近づけていくことなのでしょうか?

そうですね、人に近づけるというのはひとつあると思います。機械なので、近づくというよりも人間を超えていく可能性もあるかもしれませんね。実際に、囲碁や将棋では既に人間に勝って話題になったりしましたが、今では車の自動運転技術でも、ブレーキや車庫入れなど、サポート的なところから少しずつ使われ始めていますよね。

実用面では、今はまだ人間のサポート的な役割を担うことが多いですが、そのうち機械が自ら判断していろんなことができるようになっていくのではないでしょうか。

 

──よく「人間の仕事がいつかAIに奪われるのでは」といった声も耳にしますが、亀山さんはどうなると思いますか?

仕事が奪われる、というほどにはならないのではないかと思っています。

特に、創意工夫や感性を必要とする仕事は、なかなか取って代わられはしないのではないでしょうか。

日本はこのままいくと人口が減って、働き手が少なくなっていきます。人間の代わりにAIができることはどんどん任せていこうという考えは、より進んでいくと思います。

たとえば今、担い手不足が深刻な問題となっている農業では、工場を作って、室内でAIを使って温度や湿度を管理して栽培するようなシステムが生まれています。このように、これまで人手に依存していた部分を自動化することにより、そのぶん人間は、品種改良などに集中できるようになるかもしれません。

労働人口減少への対策という意味では、AIが人間になり代わるだけではなく「長く健康に働ける人間を増やそう」という発想もできますよね。そこで最近では、ヘルスケア分野でAIを活用していこうという動きも注目されているんですよ。レントゲン写真を画像分析してがんを早期に発見したり、人間の歩行姿勢を点数化して健康チェックができたりする技術は、すでに実用化されています。今後ますます、医療分野でAI技術が活用されるようになっていくのではと感じているところです。

このように、将来的には用途・目的別にさらに数多くの種類のAIが出てくるのではと考えています。そうなるとAIで「どう分析するか」というより、数あるAIの中から何を選んで「どう使いこなすか」ということが大切になってくるように思います

私も今はAIを使ってデータを分析する仕事をしていますが、将来は「あなたにぴったりな、こんなAIがありますよ」と、目的に合ったAIを提案するような仕事をしていたりするかもしれませんね。

 

──AIに関わる仕事をするとしたら、どんな人が向いていると思いますか?

データを扱う仕事なので、やはりまずは数字が好きな人でしょうか。大学で数学や統計学を学んだ人は活躍しやすいと思いますよ。でもそれ以上になにごとにも興味をもって取り組める好奇心旺盛な人が向いていると思います。やっぱり分析の対象に全く興味が持てなかったら、結果もそれなりのものしか出せないんですよ。データを使って課題を解決するには、AI任せで分析にかけてそれで終わりではなく、その結果から何を読み取れるかというところまで考える必要があります。対象に興味をもって向き合えば向き合うほど、同じデータからでもさまざまな情報を読み取れるようになるんです。

ちなみに私は子どものころからゲームが大好きで、大学では情報工学を専攻していました。プログラミングに興味があって、エンジニアになりたいと思っていたんです。就職活動ではゲーム会社も受けたのですが、当時は縁がなく、ソフトウェア会社に入ればプログラミングができるだろうということで、NECソリューションイノベータ(当時は日本電気ソフトウェア)に入社しました。今でもシューティングゲームが大好きなので、ゲームのデータ分析に関われるととてもテンションが上がりますね。プロ野球も大好きなので、野球のデータ分析もできたらうれしいですね。一方で、たとえ事前知識がない分野だったとしても、好奇心を持って取り組むと、いつの間にか興味が湧いて扱うのが楽しくなってきます。「好きこそものの上手なれ」という通り、人間、興味のあることは上達も早い。これから社会に出る皆さんも、ぜひいろいろなことに興味がもてるよう、好奇心を大切にしていってください。

 

──亀山さん、今日はお忙しいなかありがとうございました!

 


複雑で雑多なローデータの背景を理解し、精査することは、今のところ人間にしかできないこと、そしてAIに学習させるデータの“質”が、AIの進化に大きく関わることがよく分かりました。AIの進化を悲観しすぎず楽観しすぎず、時代やテクノロジーの発展に合わせて、私たちも人間ならではのスキルを日々アップデートしていくことが大切といえそうです。

著者プロフィール:

リケラボ編集部

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