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雲を観察しよう(後編) 季節によって変わる雲~ 親子で楽しもう、身の回りのサイエンス | リケラボ

親子で楽しもう、身の回りのサイエンス

第10話「雲を観察しよう(後編) ~季節によって変わる雲~」

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私たちの生活の中には、「科学」で説明できることが多くあります。

見慣れている身の回りの自然を改めて科学的な視点で眺めてみると新しい発見や感動を知ることができます。毎日少しずつ変わる四季の変化から、いろんなサイエンスを親子で楽しんでみませんか。

前回に続き、雲のお話です。今回はいろいろな雲をご紹介していきますね。

私たちの生活の中には、「科学」で説明できることが多くあります。

見慣れている身の回りの自然を改めて科学的な視点で眺めてみると新しい発見や感動を知ることができます。毎日少しずつ変わる四季の変化から、いろんなサイエンスを親子で楽しんでみませんか。

雲を観察してみよう

みなさんの家から、近所から、学校から、通勤通学の電車の窓から、空が良く見える場所はどこでしょうか。

朝起きた時、電車やバスに乗っている時、お昼休みに窓辺に立った時、毎日決まった時間に空を眺めてみませんか。毎日異なる雲の様子を観察してみませんか。

目印となる山や建物を決めて、毎日同じ角度で雲の写真を記録していきましょう。

晴れた日と雨の日で、雲はどのように違うでしょうか。春夏秋冬、季節が変わると雲はどんな特徴が見られるでしょうか。

昨年と今年、同じ季節でも同じ日でも空の様子は異なります。今日の空には、どんな雲が出ているでしょうか。そしてどのように変化していくでしょうか。是非近くの空を観察してみましょう。

以下は同じ場所から撮影した空の写真。電柱、左のクスノキ巨木、道路、正面奥の観覧車などのランドマークを目印に、ほぼ同じ構図で同じ時間に撮影すると比べやすい。

2022/07/30(筆者撮影)

2021/05/01(筆者撮影)

2022/07/01(筆者撮影)

2022/07/08(筆者撮影)

季節によって変わる雲

私たちの住む国・日本は北東から南西に細長く伸びる島国です。その距離は択捉(えとろふ)島から沖ノ鳥島まで南北2,787 ㎞、南鳥島から与那国島まで東西3,146 ㎞も差があります。(※1)そのため、日本では北と南で、東と西で、大きく気候が違います。

夏は気温が30℃前後になっても、沖縄地方では冬は10℃くらいまでしか気温が下がりませんが、北海道でも-20℃くらいまで冷え込むときがあります。

北の地方ほど夏と冬の気温差が大きい傾向が見られます。6月になると梅雨がやってきますが、北海道には梅雨がないと言われています。

東西の距離は日の出や日の入に大きな差が生まれます。2023年元旦の日の出は、最東端の南鳥島では52723秒ですが、最西端の与那国島では73157秒でした。日本の中で2時間434秒も差があったわけです。

世界の気候は、ドイツの気象学者ケッペンにより5つの気候帯、13の気候区に分類されています。日本にはこのうちの2つの気候区分が存在しています。北海道は冷帯湿潤気候(Df)にあたり、本州以南は温暖湿潤気候(Cfa)に分類されています。

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岩槻 秀明 著「気象学のキホンがよ~くわかる本[第3版]」(秀和システム・三松堂印刷株式会社、2017年12月25日出版)を元にリケラボ編集部作成

日本の中央には脊椎のように大きな山脈があり(脊椎山脈=せきついさんみゃく)、この影響で日本海側と太平洋側で気候に大きな違いが現れます。

そこで日本列島は次のような8つの気候区分で考えることがあります。

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岩槻 秀明 著「気象学のキホンがよ~くわかる本[第3版]」(秀和システム・三松堂印刷株式会社、2017年12月25日出版)を元にリケラボ編集部作成

Yumiの地域は瀬戸内気候に属します。みなさんはどんな気候区分に住んでいますか?

日本はどんな気候であっても、春夏秋冬の季節があります。季節によって雲の様子も変化します。季節を感じる雲にはどのようなものがあるでしょうか。日本海側と太平洋側では現れる雲はどのように違うでしょうか。

毎日観察していると、雲の様子で季節の移り変わりが感じられるようになります。

春の天気と雲

これは20225129時の天気図です。

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出典「日々の天気図」(気象庁公式サイト)より

この日は西から天気が下り坂で、沖縄から関東地方付近では曇ったり雨が降ったりしていました。一方、高気圧下にある東北地方や北海道では晴天が続き、最高気温がぐんぐん上がって真夏日になった地域も見られました。

春になると、偏西風が日本上空を通るようになり、中国の長江付近から移動性高気圧と低気圧が交互に日本列島にやって来るようになります。

天気は数日ごとに晴と雨を交互に繰り返し、次第に暖かくなっていきます(三寒四温=さんかんしおん)。晴れると気温が上がり暖かくなり、寒冷前線が通過すると急に気温が下がって冬に逆戻りしたかのような急激な気温の変化が見られます。

次の雲の写真は202152日に同じ場所で撮影したものです。晴れ空には積雲がぽっかり浮かんでいましたが、やがて集まり厚みが増して層積雲となり雨雲に変化していく様子が分かります。4枚目の写真では冷たい強い北風が吹いてきました。

2時間40分の間で、雲の様子はこんなにも劇的に変化するのです。

↑積雲(筆者撮影)

↑高積雲(筆者撮影)

↑層積雲(筆者撮影)

梅雨と雲

南側の暖かい空気と北側の冷たい空気は、強くなったり弱くなったりそのバランスが変化しています。

6月になると小笠原付近にある暖かい空気(小笠原気団)が次第に強くなっていき、日本列島上空でオホーツク海付近の冷たい空気(オホーツク海気団)と競り合うようになります。日本列島の上には長い停滞前線ができ、何日もしとしとと長雨が続きます。これを私たちは「梅雨」と呼んでいます。

以下の天気図は、20227159時のものです。

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出典「日々の天気図」(気象庁公式サイト)より

長く伸びた梅雨前線の影響で、日本各地で広く雨になりました。特に、九州では湿った空気が集中的に運ばれて大雨になり、宮崎県では観測史上最高の1時間当たり94ミリを記録して大きな被害が出ました。

梅雨前線は温暖湿潤気候帯(Cfa)上に発生し、北海道には梅雨はありません。梅雨は温暖湿潤気候の特徴的な天気です。水蒸気を多く含んだ下層雲や対流雲が多く見られます。二つの気団の勢力争いはやがて小笠原気団の力が強くなって、梅雨前線を押し上げてやがて消滅してしまいます。梅雨前線の南側に入ると、暑い夏がやってきます。小笠原気団の力が強くなるのは、地球の公転により太陽がより南側を通るようになるからです。

夏の天気と雲

真っ青な空にモクモクと盛り上がる白い入道雲。やがて冷たい風が吹き始めて空が暗くなり、遠くからゴロゴロと雷が近づいてきて激しい夕立になります。30分~1時間もすれば、何事もなかったかのように雨は止み再びまぶしい日差しが照りつけます。

夏の空の特徴は、熱く湿った南の空気(小笠原気団)がもたらす激しい上昇気流。「南高北低型」とよばれる気圧配置です。

下図は2022739時の天気図です。

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出典「日々の天気図」(気象庁公式サイト)より

この日は沖縄や奄美地方は台風4号で強い風雨が続きました。

西日本から東日本にかけては高気圧の周囲の温かい空気と冷たい空気の接触面にあたり、雲が多く激しい雷雨に見舞われた地域もありました。

一方高気圧の中心付近である東京は連続9日の猛暑日となりました。

(筆者撮影)

これは2020829日の写真です。遠くに真っ白い積乱雲が発達しつつあります。Yumiのいる場所では夏の強い日光が照りつけて暑い昼下がりですが、雲の真下は真っ暗になっています。

この30分後、積乱雲が発達している付近で激しいゲリラ豪雨がありました。夏によく見られる雲には、積乱雲のほか、積雲や層積雲、高層雲などがあります。

秋の天気と雲

太陽の南中高度が低くなると小笠原気団の勢いは弱くなり、再び冷たい空気が日本上空を覆うようになります。暖冷の境界線である秋雨前線が日本上空に現れ、次第に冷たい空気の勢力が強くなって秋がやってきます。

秋になると台風が日本列島上空を通過するようになります。

熱帯付近で発生する低気圧は「熱帯低気圧」と呼ばれ、前線が伴わないのが特徴です。熱帯低気圧の最大瞬間風速が17m/s以上のものを「台風」と言います。 (※2

赤道付近の強い太陽の光で温められた海水は盛んに水蒸気になり、急激な上昇気流を起こして強い勢力(気圧が低い)の熱帯性低気圧となります。

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出典「日々の天気図」(気象庁公式サイト)より

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左:2022年台風6号(7月30日~8月1日)の進路。典型的な夏の迷走台風。 右:2022年台風14号(9月13日~9月20日)の進路。典型的な秋の台風コース。

台風(熱帯性低気圧)はゆっくりと北上を続け、沖縄付近で偏西風により日本列島方面へ向きを変えます。

夏にやってきた台風(熱帯性低気圧)は偏西風が吹いていないのでフラフラとあちこちに迷走し、進路が定まらないという特徴があります(迷走台風)。沖縄付近までやってきた台風は中国大陸へ進んだり、まっすぐ北上して朝鮮半島の方へ行ったりします。沖縄に達する前に東へ方向転換し太平洋上で消滅してしまう場合もあります。真夏に発生した台風の威力は強大ですが、日本列島を直撃することはごく稀です。

秋になると偏西風により強制的に進路が北東に変わり、日本列島に接近あるいは上陸するコースを辿る台風が増えます。

秋の日本列島付近では海水温がそれほど高くないので台風への水蒸気供給が少なく、台風は急激に勢力が衰えてやがて前線を伴う温帯性低気圧に変わります。

春と秋は揚子江気団の移動性高気圧と低気圧による周期的に天気が変わるという特徴があります。

しかし、秋の空は澄んでいて透明度が高く、見られる雲の種類や形が大変多い季節でもあります。

高積雲(筆者撮影)

巻雲、巻層雲(筆者撮影)

「天高く 馬肥ゆる 秋」という言葉があります。

秋の空気が澄んでいるのは、空気中に含まれる水蒸気量が少なくなるからです。雲も含まれる水蒸気量が少ない上層雲や中層雲などが多く見られます。

特に巻雲や高積雲(うろこ雲、いわし雲、ひつじ雲などと言われることもあります)などがよく観察できる季節です。

秋は画家としての空の才能全開で、毎日変わった形の雲の芸術が展開されます。時には、何かの形にそっくりの変わった形の雲も見られます。想像力をめいっぱい働かせて空を眺めてみると楽しいかもしれません。

以下の雲の写真は、何に見えるでしょうか。

魚?鳥?優雅に羽ばたいています。Yumiには火の鳥が現れたかのように見えました。(筆者撮影)

左向きのイヌの顔。たれ耳の大型犬かな?(筆者撮影)

右向きの小さなお魚さん、目玉をギョロリと光らせてエサに突進!(筆者撮影)

びっくりワンちゃん、飛び跳ねた?シャコにも見えます。巻積雲が縞模様のイメージとぴったりです。(筆者撮影)

冬の天気と雲

冬の天気は「西高東低(せいこうとうてい)」と呼ばれます。

シベリア大陸で発達した高気圧が北西から移動してきて、南東には温帯性低気圧が見られます。

冷たい北西の季節風は、日本海を通過するときにたっぷりと水蒸気を含み、日本列島の山脈にあたって日本海側に大量の雪が降ります。

雪を降らせた空気は乾燥し、太平洋側には乾いた冷たい強風が吹きます。この冷たい北風は、地方によって「空っ風」「比良八荒」「六甲おろし」などと呼ばれています。

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出典「日々の天気図」(気象庁公式サイト)より

これは202211日の天気図です。

シベリア大陸から高気圧が張り出してきて、オホーツク海には低気圧があります。典型的な西高東低型の気圧配置です。

2021年1230日から続く強い冬型の気圧配置は、新潟では雹(ひょう)を、日本海側の広範囲で大雪をもたらしました。徳島や静岡、銚子、大阪など太平洋側でも初雪を観測した地域がありました。

日本海側では層雲(雪雲)に覆われどんよりとした空が見られました。一方太平洋側では雲は少なく晴天が広がりましたが、山を越えた北風がこぼれ雪をもたらし、一時的に灰色の雲に覆われることもありました。

Yumiの住む地域は「六甲おろし」と呼ばれる六甲山系から吹き下りる冷たい季節風で有名です。

冬の午前中はよく晴れていて青空が広がっていますが、昼前から雲が増えてきて高積雲から層積雲、高層雲、そして層雲へと変化していきます。

14~15時頃にパラパラと小雨(小雪)が舞い、夕方には再び青空が戻ってきます。

このような寒い冬の日には六甲山から強い風が吹き下り、昔は洗濯ものが風になびいて真横になって凍ったものでした。

六甲おろしは生活するには大変厳しい環境になりますが、冷たく乾燥したからっ風はおいしい銘酒を生み出す重要な要素のひとつになっています。

天気の良くなる雲、悪くなる雲

季節や天気によって空に浮かぶ雲は、形も色も変化します。気温によって海や陸地の温度の温まり方が異なり、上昇気流の起きやすさも変化します。空気中に含まれる水蒸気の量によって雲ができる高さや形が変わります。

気象予報士は、天気図に加え気温や湿度、風向など多くの観測データから天気を予報しています。私たちはそこまで多くのデータと深い知識がなくても、かんたんな天気なら予想できます。

「観天望気(かんてんぼうき)」 ※3

天気予報に関する昔からの言い伝えやことわざのことを「観天望気(かんてんぼうき)」といいます。観天望気を、雲画像・雨雲レーダー・気圧配置などと照らし合わせると、科学的にも正しく説明のつくものでした。

二つほどご紹介します。

「夕やけは晴れ、朝やけは天気が悪くなる」

↑2018年4月3日、大阪湾の夕やけ(筆者撮影)

春や秋には美しい「朝やけ」や「夕やけ」が見られることが多くなります。朝やけや夕やけは、空気中の水蒸気に太陽の光がナナメに当たることで波長の長い赤い光があまり散乱されずに強調されて見える現象です。(※4

夕やけは西側に現れ、朝やけは東の空に見えます。

天気は西から東へと移動し変わってゆくので、これらの気象現象はこれからやって来るであろう西側の天気を予想する現象のひとつになります。

夕やけが見られるということは、西側が晴れていて雲がないということなので、この後晴れるということが予想できます。

↑2022年9月22日の夕やけ(筆者撮影)

夕やけは空気中の水蒸気量が多いほど色が濃くなり、晴れた日は黄色~オレンジ~赤~ピンク色と変化することが多く、濃い赤や赤紫など不気味な色になる夕やけは雨になる確率がたかくなります。

一方、朝やけでは東側が晴れているということを意味し上空や西側に雲があることが多いので天気が下り坂の可能性が高くなります。ただし、夕やけと逆(ピンク~赤~オレンジ~黄色)と色が変化する場合は、晴れることが多くなります。

朝やけと夕やけの様子で、直後の天気がある程度予想できます。

「秋の朝霧は晴れる」(※5

冷え込んだ秋の朝には濃い霧が発生することがあります。

特に盆地(盆地霧)や川沿い(川霧)が名物となっている地域があります。

良く晴れて雲のない夜は陸地が急激に冷やされ(放射冷却=ほうしゃれいきゃく)、大気との温度差により霧が生じます。周囲を山に囲まれた盆地に霧がたまり、朝には濃霧が発生します。

太陽が上がると陸地が温められて上昇気流が発生し、霧が消えて気温が上がり晴天となります。

写真は2015928日の由布盆地の朝霧です。

(筆者撮影)

(筆者撮影)

1枚目の写真は朝の6時半、目の前の道路を走る車も全く見えない濃い霧に包まれています。

2枚目は約2時間後の湯布院の街の様子です。霧は晴れて由布岳がはっきりと見えています。

由布盆地の秋の盆地霧は大変有名でよく見られる現象ですが、この日は地元の人が「一年で数回しかないとても良い天気」と太鼓判を押した快晴になりました。

***もっと知りたい方へ***

1 JICE(国土技術研究センターのページより引用)
https://www.jice.or.jp/knowledge/japan/commentary01

2 気象庁の定義による
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-1.html

3 科学実験データベースより引用
https://www.proto-ex.com/data/895.html

4 ウェザーニュースのページから引用
https://weathernews.auone.jp/au/satellite/redsky_topic.html

5 株式会社気象サービスのページから引用
http://www.weather-service.co.jp/pastcolumn/6238/



***参考文献***

岩槻 秀明 著「気象学のキホンがよ~くわかる本[3]」(秀和システム・三松堂印刷株式会社、20171225日出版)

「日々の天気図」(気象庁公式サイト)
https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/hibiten/index.html
※過去の天気図を見ることができます。

天気のことわざ
http://econeco.sakura.ne.jp/kotowaza/

Yumi

Yumi

理学修士(ペプチド化学)。環境分析、バイオ細胞実験、マルチスケールの有機合成、HPLCでのキラル分離など幅広い業務を経験。2018年10月よりパーソルテンプスタッフ研究開発事業本部の社員。現在、高分子合成の研究職として勤務。
甲種危険物取扱者、有機溶剤作業主任者、毒物劇物取扱者などの専門資格の他、花火鑑賞士、温泉分析書マスター、京都検定、AEAJ認定アロマテラピーインストラクター、ハーブコーディネーターなどの民間資格を所持し、児童対象の科学実験教室ボランティアなどで活かしている。
趣味はバイオリン、旅行、写真、散策、アロマクラフトなど。

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