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漂白剤で洗濯物が白くなる理由、化学反応式について解説【高校生の身近な科学】 │リケラボ

漂白剤で洗濯物が白くなる理由、化学反応式について解説

【高校生の身近な科学】

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今回は、「身近な科学」として漂白剤について詳しくみていきましょう。

みなさんが身近に使っている「漂白剤」。
「漂白剤を使うと、なぜ服が白くなるのだろう」と考えたことはありますか?

服を白くする成分が入っているから?
汚れが良く落ちるのは、洗剤を強力にしたものだから?

いろんな答えが返ってきそうですね。

そもそも、漂白剤にはいくつかの種類があることを知っていますか?

漂白剤は、含まれる成分によっていくつかに分類され、それぞれの成分が起こす化学反応を利用して洗濯物をきれいな白にしてくれています。

この記事では、漂白剤について化学反応式を含めて解説しています。化学が深く日常生活に根付いていることがわかりますよ!

漂白剤とは?

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漂白剤を一言でいうと「汚れの色素を化学反応で白く変化させる働きをもつ成分」のこと。

よく「漂白剤は服自体を白くする」と勘違いしている方がいますが、基本的には汚れの色素に対して反応させる目的で使用します。

一方、洗濯洗剤は「界面活性剤など、服の繊維から汚れそのものを取り除く成分」のこと。

洗剤は汚れそのものを包み込んで取り除くのに対して、漂白剤は化学反応を利用して汚れの色素を落とす働きがあり、大きく異なります。

「漂白剤の方が洗剤より強力」と考えている方がいますが、ある意味その通り。簡単には落ちないシミや黄ばみは洗剤よりも漂白剤の方が「落ちている」ように見えます。しかし、実際には「見えなくしているだけ」なのです。一体どういうことなのでしょう?

効果が強力な分、漂白剤の働きを理解していないと、思わぬ事故を起こすことがありますので、ぜひ最後まで読んでくださいね!

漂白剤にも大きくわけて2種類ある

そもそも漂白剤ではどのような「化学」が使われているのでしょう。

結論からいうと、漂白剤に使われている化学とは、高校でおなじみの「酸化・還元反応」です。どうして酸化還元反応で漂白されるのかというと、「色素が微妙な化学式のもとに成り立っているから」。

例えば、鉄(Fe)はもともと「ごく暗い青緑」をしていますよね。
しかし、酸化鉄(FeOやFe₂O₃)になると、黄色になったり、赤色になったり、黒になったりします。

つまり、物質は酸素と結びついたり化学反応を介して容易にその色を変えるということです。

逆にいえば、酸素を取り除いたり、付け加えたりすることで、物質そのものを変えることで色がなくなったように見せる…これが、「漂白剤」の正体になります。

実際には「漂白剤」と一括りにしていますが、実は漂白剤にも成分によって大きく「酸化型漂白剤」「還元剤漂白剤」に分けられます。さらに酸化型漂白剤は「塩素系漂白剤」「酸素型漂白剤」に分けられます。

それぞれについて見ていきましょう。

(1) 酸化型漂白剤

酸化型漂白剤とは「汚れを酸化させることでシミや黄ばみを落とす漂白剤」のこと。

日常でよく使われている漂白剤に、この「酸化漂白剤」が使われます。しかし、なぜ漂白剤で汚れの色素が落ちるのでしょうか。その大きな役目を果たすのが「活性酸素」です。

酸化漂白剤の主な成分の分子式を見ると分かりますが、どの成分にも「O(酸素)」が多くついていることが分かりますね。(酸化漂白剤の成分例:次亜塩素酸ナトリウムNaClO、過酸化水素H₂O₂)

O(酸素)が多くついていると、ほかの物質を「酸化」して色素や他の成分を変える働きがあります。

酸化型漂白剤は、この性質を利用して「汚れを酸素と結びつけること」で汚れの色素を落としているのです。


日常生活でつく色素の大半は、食べこぼしやちょっとした不注意などによる「植物系の色素」です。これら植物系の色素は2重結合を持った化学物質なので、酸化型漂白剤はこの2重結合を切ることで色素をみえなくする。これが漂泊という仕組みになります。

さらに酸化型漂白剤は

  • 塩素系漂白剤
  • 酸素系漂白剤

の2つに分けられます。

※色を染める仕組みについては、過去記事で詳しく解説しています!こちらも見てみてくださいね!
親子で楽しもう、身の回りのサイエンス 第6話「植物の色素で染めてみよう」


 (1)-1. 塩素系漂白剤

塩素系漂白剤の主な成分は「次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)」。高校の化学でお目にかかることがあるでしょう。次亜塩素酸ナトリウムの特徴として

  • 除菌力が非常に高いこと
  • 独特のツンとしたニオイがすること
  • 服の繊維そのものまで漂白してしまうほど、高い漂白力があること


などがあげられます。高い除菌力があるメリットがある一方で、色物の布製品などに使うことができないのがデメリットですね。

ちなみに次亜塩素酸塩と次亜塩素酸ナトリウムは次のように単純な形で原子状酸素を放出すると考えられます。

ClO⁻ + H₂O + 2e⁻ → Cl⁻ + 2OH⁻


次亜塩素酸ナトリウムが使われているのは漂白剤だけではありません。カビ取り剤やパイプ洗浄剤、プールの消毒剤としても使われています。

お風呂をカビ取り剤などで洗った後、プールと同じニオイだと感じたことはありませんか?それは、プールの消毒剤もカビ取り剤も同じ「次亜塩素酸ナトリウム」が使われているからなのです。

ただし、塩素系漂白剤で必ず「次亜塩素酸ナトリウム」が使われているわけではありません。例えば固形や粉末タイプの塩素系漂白剤では、トリクロロイソシアヌル酸や次亜塩素酸カルシウムなどが使われていることがあります。

 (1)-2.酸素系漂白剤

酸素系漂白剤の主な成分は「過炭酸ナトリウム(Na₂CH₃O₆)」や「過酸化水素(H₂O₂)」。過酸化水素は「オキシドール」として、中学や高校の化学でも出てくるので、耳にしたことがあるのではないでしょうか。

粉末タイプに使われる成分が「過炭酸ナトリウム」で、液体タイプに使われるのが「過酸化水素」です。

ちなみに、過炭酸ナトリウムは、水に溶けると過酸化水素と炭酸ソーダに分解して漂白効果を発揮します。そして、過酸化水素水は

H₂O₂+2H⁺+2e⁻ → 2H₂O


という酸化作用を経て漂白されるというわけです。

これらの酸素系漂白剤の特徴として

  • ツンとした刺激臭がない
  • 浸け置き洗いができる
  • 漂白剤の中では作用が穏やかなため、一般的に色柄モノの洗濯にも使いやすい

などがあげられます。

粉末タイプの過炭酸ナトリウムは油汚れや皮脂汚れに強く、掃除全般にも使え、除菌や消臭効果も高いのが特徴ですが、ウール素材や絹などデリケートな素材には向いていません。

一方、過酸化水素は弱酸性で油汚れには向きませんが、ウールや絹素材にも使えるほどやさしい漂白剤となります。

他にも最近人気の自然派素材でのお掃除・洗濯でよく使われている「クエン酸(C₆H₈O₇)」や「重曹(NaHCO₃)」なども、この酸素型漂白剤に分類されます。

(2) 還元型漂白剤



酸化型漂白剤は「汚れを酸素とむすびつける(酸化する)ことで色素を除去します」が、還元型漂白剤では逆に「汚れから酸素を除去する(還元する)ことで色素を除去する」作用があります。

還元型漂白剤の主な成分の1つが「二酸化チオ尿素 (CH₄N₂O₂S)」や「ハイドロサルファイト」。

これらの還元型漂白剤は(例えば二酸化チオ尿素の場合)以下のような化学反応式を介して還元作用を示します。

H₂NC(:NH)SO₂H + H₂O → H₂NC(NH₂):O +H₂SO₂ SO₂²⁻ + 2H₂O → SO₄²⁻ + 4H⁺ + 4e⁻


還元型漂白剤の主な特徴として

  • 酸化漂白剤ではとれない、鉄サビや塩素系漂白剤による黄ばみも落とせる
  • 水洗いできる白ものに使える
  • 色ものの衣類・金属製のボタン・水洗いできないものなどには使用することができない

などがあげられます。特に大きな特徴は「衣類についた鉄のサビや赤土などの汚れに適している」ということです。

鉄サビの主な主成分は「酸化鉄」。すでに酸化して変色しているので、酸化させることで色を落とす「酸化型漂白剤」では落とせません。

一方、還元型漂白剤では、酸素をなくして色素を落とすので、鉄さびのようなすでに酸化している物質を取り除くのにはうってつけというわけですね。

ちなみに、塩素系と還元型を混ぜると有毒ガスが発生することがあるので、絶対に混ぜて使わないでください。

なぜ「混ぜると危険」なの?

よく塩素系漂白剤などを見ると、容器に「まぜるな危険」などと記載を見かけることがありますが、これは有毒ガスが発生することがあるためです。

もっとも有名なのは、塩素系漂白剤の代表である「次亜塩素酸ナトリウム」にトイレ用の洗剤などに含まれる「塩酸」が混ざってしまった場合。

次亜塩素酸ナトリウム+塩酸 
→ 塩 + 次亜塩素酸

【化学式】

NaClO + HCl → NaCl + HOCl


となります。さらに、次亜塩素酸の酸化還元反応がおき

次亜塩素酸 + 塩酸→ 塩素 + 水

【化学式】

HOCl + HCl → Cl₂ + H₂O


となります。このような化学反応の連鎖で塩素が発生してしまいます。

気体となった塩素は、人体の、眼・鼻・気管・肺などさまざまな器官にダメージを与えます。具体的には、ガス化した塩素ガスは眼の水分を奪い結膜炎を起こしたり、咽頭炎、皮膚炎、気管支炎などを生じさせます。

さらに、濃い塩素ガスを大量に吸引すると命の危険をおよぼすことも。広範囲に気管支に損傷を起こし、全身の臓器障害にまで至ることもあるのです。

他にも「まぜては危険」という例も

塩素系漂白剤と洗剤以外にも混ぜてはいけない場合があります。

例えば「カビ取り剤」と「トイレ用洗剤」の組み合わせ。カビ取り剤にも次亜塩素ナトリウムが含まれていることが多く、トイレ用洗剤は塩酸やクエン酸が主成分であることが多いので同様の化学反応で塩素ガスが発生してしまいます。

排水口クリーナーと酢の組み合わせにも要注意。シンク掃除に酢を使い、排水口クリーナーを同時に使うと、酢とクリーナーの成分が化学反応を起こし、塩素ガスが発生します。排水口クリーナーも塩素系洗剤、酢は酸性のためですね。酢のほかに「クエン酸」もよく掃除用品として使われますので要注意です。

台所用漂白剤も塩素系洗剤のひとつ。そこにレモンの皮や果肉が残っていても…予想通り、塩素ガスが発生してしまいます。台所用漂白剤を使う場合、レモンなどの柑橘類が残っていないか、確認する必要がありますね。

リケラボ編集部より

漂白剤が洗濯物を白くする仕組みについて、化学の基本「酸化還元」を用いて、わかりやすく解説してきました。

漂白剤1つにも奥深い「科学の世界」が隠されていたんですね。

私たちの身のまわりには科学で説明できることがたくさんあります。身のまわりの不思議を科学で理解していくと理数系科目が面白くなってきますよ!リケラボではこれからも身近な科学を紹介していくのでお楽しみに!


記事監修:秋津貴城(東京理科大学 理学部第二部 化学科 教授)

リケラボ編集部

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