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ヨウ素の「時計反応」を市販品のみで起こしてみた!│ヘルドクターくられの1万円実験室 | リケラボ

時間とともに性質が変わるヨウ素の「時計反応」を市販品のみで起こしてみた!│ヘルドクターくられの1万円実験室

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科学を愛する読者のみなさま、ごきげんよう。くられです。

使える予算は1万円以内。「高価な実験機器は使えない」という制約のなかで知恵と工夫を凝らして実行可能なおもしろ実験を紹介する本企画。

第15回目のお題はヨウ素の「時計反応」です。時計反応の実験には通常硫酸などを用いますが、それらを市販品の安全な試薬に置き換えて行ってみましょう。

今回も、私が主宰する秘密結社「薬理凶室」のメンバーであり化学に造詣の深いレイユール氏の協力のもと、お届けします。それではお楽しみください!


皆さんこんにちは。レイユールです。

今回は、時間差で変色が起こる「時計反応」を紹介しましょう。時計反応は、現在までにさまざまな手法が発見されていますが、今回は「市販品のみ使用可」の縛りで、その反応を起こしてみたいと思います。

「時計反応」とは?

時計反応とは、溶液が混合されてから一定の時間経過して突如色が変わるなどの変化を起こす反応のことです。化学反応は種類や条件によって、その起こるスピードが異なります。例えば、ダイナマイトの爆発は非常に早い分解反応といえますし、逆に鉄のサビなどは何日もかけてゆっくりと成長していく遅い反応です。

時計反応は、このような反応のスピードを巧みに利用し時間差でアクションが起こるように設計された化学反応です。時計反応の他にも時間差で起こる反応は数多くあり、例えば一方向のみならず2つの状態を行き来する「振動反応」というものも知られています。

過マンガン酸カリウムとグリセリンの反応

▲時間差で起こる反応の例。過マンガン酸カリウムとグリセリンの反応

時間差で起こる反応の例。しばらくすると発火する

▲過マンガン酸カリウムとグリセリンの反応の続き。しばらくすると時間差で発火する

▲振動反応の1種である「BZ反応」の例。時計反応が1回限りの発現なのに対し、振動反応は繰り返し状態を行き来する

BZ反応をシャーレで行ったところ。シャーレ上で行えば波紋のような模様が出る

▲振動反応をシャーレで行ったところ。シャーレ上で行えば波紋のような美しい模様が出る

「ヨウ素時計反応」を見てみよう!

時計反応はこれまでにさまざまな方法が提案されてきましたが、どれも入手の難しい試薬を使う上級者向けの実験となってしまいます。今回は、ヨウ素時計反応と呼ばれる反応を少し改良して市販されている材料のみで反応を起こすことに成功したので、そのレシピを紹介しましょう。

ヨウ素時計反応のレシピ

まずは、実験に使う溶液を作らなければいけません。少々面倒ではありますが、できる限り正確に測ってください。

注意:実験に使用する器具は一度精製水ですすいだものを使い、水は全て精製水を使ってください。水道水中の塩素化合物が反応を邪魔してしまいます。また、重さの測定はは0.1g単位で計れるキッチンスケールを使ってください。

1.水98.3gにヨウ化カリウム1.7gを溶解する。→A液

2.水200gに片栗粉2gを入れて十分に混ぜてから1回沸騰させる。→B液

3.水95gにチオ硫酸ナトリウム5水和物5.0gを溶解する。→C液

4.空の容器にBの溶液4.0gとCの溶液1.0gを取って水を足して100.0gにする。→D液

5.空の容器にオキシドール23.0gと氷酢酸1.2gをとり水を足して100.0gにする。→E液

ヨウ化カリウムの溶解

▲ヨウ化カリウムの溶解(A液)。今回は撮影のためスターラーを使っているが手で混ぜれば十分溶かすことができる

片栗粉液を熱しているところ

▲片栗粉液(B液)を熱しているところ。でんぷんは熱水に一部溶解する。濾過すればより綺麗な反応を観察できるが、時間がかかる

ここまでで溶液の準備は完了です。ヨウ化カリウムやチオ硫酸ナトリウム5水和物(熱帯魚用のカルキ抜き剤)、氷酢酸はネット通販などで入手が可能です。その他の片栗粉やオキシドール、精製水はドラッグストアなどで揃えることができます。いずれの薬品も毒性は低い安全な成分ではありますが、手袋や安全メガネなどを装着するとより安全です。また、氷酢酸はとても強い匂いがあるので換気の良い場所でこぼさないように注意して扱いましょう。

調製の済んだ溶液

▲調製の済んだ溶液。どの溶液も透明なので付箋などで成分をメモしておくと良い

いざ、時計反応の観察!

では、いよいよ時計反応を観察してみます。容器はガラスなど中の観察ができるものが良いでしょう。

1.空の容器にA液8.0gを取り、水を足して40.0gにする。

2.1の容器にD液20.0gを加えてよく混ぜる。

3.2に更にE液20.0gを加えてよく混ぜる。

4.E液を加えてから30秒〜1分ほど経つと突如溶液が青紫色に変色する。

3種類の溶液混合直後。十分にかき混ぜないと反応が均一に進行しない

▲3種類の溶液混合直後。十分にかき混ぜないと反応が均一に進行しない

反応後の溶液。突然着色が起こる

▲反応後の溶液。突然着色が起こる

▲実際に時間差で突然着色が起こる様子はこちらの動画でもご覧いただける

ここまでの手順でヨウ素時計反応を観察することができたと思います。混合前の溶液は全て透明ですが、3種類混ぜてからしばらく経つと突然変色します。化学反応は基本的には早く進行するものが多く、このように1分という長い時間変化が現れないというのは珍しいことなのです。

着色までの時間の測定。分量と温度が同じであれば毎回同じ秒数で着色する。手品などにも応用できそうだ

▲着色までの時間の測定。分量と温度が同じであれば毎回同じ秒数で着色する。手品などにも応用できそうだ

ヨウ素時計反応の仕組みを解説!

今回実験したヨウ素時計反応の仕組みは実はとても複雑です。ここでは分かりやすく要約してお伝えします。

まず、ヨウ化カリウム、オキシドール、氷酢酸が混ざり合うと「ヨウ素」という成分が生じます。この反応は比較的ゆっくりと進むと言えるでしょう。さらにこのヨウ素は片栗粉の主成分である「でんぷん」と反応すると濃い青紫色になることが知られています。これは小学校で習う「ヨウ素でんぷん反応」です。

ヨウ素でんぷん反応。でんぷんとヨウ素が反応すると青紫色に発色する

▲ヨウ素でんぷん反応。でんぷんとヨウ素が反応すると青紫色に発色する

それと対照的に、チオ硫酸ナトリウムはヨウ素を分解(実際にはヨウ化物への変換)することができます。

ヨウ素の脱色。ヨウ素はチオ硫酸ナトリウムと反応して速やかに消費される

▲ヨウ素の脱色。ヨウ素はチオ硫酸ナトリウムと反応して速やかに消費される

これらが混ざり合うとヨウ化カリウムとオキシドールと氷酢酸の反応でヨウ素が生じますが、生じると同時にチオ硫酸ナトリウムに分解されてしまいます。しかし、チオ硫酸ナトリウムも無限のヨウ素を分解することはできないので、いずれ全てのチオ硫酸ナトリウムが使い切られてしまい、余ったヨウ素が溶液中に増え、これがでんぷんと反応することで色が出るというわけです。

ゆっくりと発生するヨウ素をチオ硫酸ナトリウムが分解し続け、限界が来たときにでんぷんとヨウ素が初めて出会うことができる…このように突如反応が起こるまでの透明な期間にも、目に見えない化学反応が進行しているのです。

ちなみに、この反応の着色までの時間は、各溶液の濃度と溶液の温度によって決定されているので、条件をさまざま変化させることで着色までの時間をコントロールすることもできます。

溶液の温度調節。溶液を混合する前に冷やしたり温めたりして温度を調整しておく

▲溶液の温度調節。溶液を混合する前に冷やしたり温めたりして温度を調整しておく

溶液の混合。温度調節した溶液を混合すると温度に応じて発色までの時間が変化する

▲溶液の混合。温度調節した溶液を混合すると温度に応じて発色までの時間が変化する

▲こちらの動画でもヨウ素時計反応の様子を紹介している。簡単そうに見えて実は意図通りのタイミングで発動させるにはかなりシビアな分量管理が求められる

今回実験にかかった費用

・ヨウ化カリウム 3,000円〜5,000円程度
・チオ硫酸ナトリウム 100円程度
・片栗粉 100円程度
・氷酢酸 1,000円程度
・オキシドール 1,000円程度
・精製水 100円程度

材料はネットショッピングで検索を行うと比較的容易に見つけることができます。注意点としてヨウ化カリウムは25g単位で販売されているサイトを探しましょう。500gで購入してしまうと大部分を処分することになってしまいます。

掲載写真,図全てレイユール氏提供

レイユール
薬理凶室怪人。専門は有機合成化学。薬理凶室では化学分野を担当している。

薬理凶室のYouTubeチャンネルでは、化学実験をコミカルな動画で紹介する「ガチ実験シリーズ」を不定期更新している。

薬理凶室YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UC_sxCGl2slqyAj9i26KLKuA

リケラボ編集部

リケラボ編集部

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