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香りの化学‐自宅で植物からアロマ抽出~親子で楽しもう、身の回りのサイエンス | リケラボ

親子で楽しもう、身の回りのサイエンス

第7話「植物のかおりをとりだしてみよう」

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私たちの生活の中には、「科学」で説明できることが多くあります。

見慣れている身の回りの自然を改めて科学的な視点で眺めてみると新しい発見や感動を知ることができます。毎日少しずつ変わる四季の変化から、いろんなサイエンスを親子で楽しんでみませんか。

今回は、かおり成分を取り出す実験をしてみましょう。

身の回りにあるさまざまな「かおり」

ある一日の情景を思い浮かべてみましょう。

朝はトーストが焼ける香ばしいにおいで目が覚めるかもしれません。同時にいれたてのコーヒーの香りもするかもしれません。和食のお家ではお味噌汁や炊き立てのご飯のにおいが漂ってくるかもしれません。

家から出ると、梅、桜、フジ、バラ、アジサイ、コスモス、キクなど季節の花が咲いています。イチゴ、ミカン、リンゴ、モモなど季節によって実っている果物も異なります。これらの花や果物からはとてもよい香りが漂ってきます。

撮影:Yumi

一方、環境汚染のひどい川や海からは、ヘドロやゴミのにおいが漂ってきます。魚が死んで打ち上げられて、腐ったにおいも感じるかもしれません。一生懸命勉強したり、必死に仕事をして疲弊した体からは、汗のにおいや体臭なども感じられるかもしれません。

そんなふうに頑張った帰り道、商店街から食べ物のにおいが運ばれてくれば、思わず食欲もそそられることでしょう。おそば屋さんのお出汁もよいかおりです。カフェからはバニラやキャラメルのかおりが感じられるかもしれません。

お家の中でも、トイレのにおいやお風呂のせっけんのにおいなど、いろんなにおいを感じることができます。

いわば、私たちは「におい」に囲まれて暮らしています。

「におい」は「匂い」「臭い」「香り」などと表現されることがあります。

そのにおいが好まれる場合は「香り」と、嫌われる場合は「臭い」と呼ぶことが多く、好き嫌いの感情を伴わない場合は「匂い」と表現することが一般的となっています。※1

このお話ではまとめて「かおり」と表現することにしましょう。

「かおり」は化学物質だ!

幸せに感じたり、不快に感じたり、元気になったり、心地よく眠れたり、「かおり」にはいろんな感覚があります。

「かおり」とは一体何でしょうか。

「ミント」というハーブの仲間があります。ガムやはみがき粉、お菓子、リップクリームなどの香りづけに使われている清涼感のあるかおりは、ミントから得られたかおりです。

ミントというのはシソ科の多年草で、13~24品種くらいあると言われています。

ミントのスースーする(清涼感=せいりょうかん)かおりは「L-メントール」という化学物質による作用です。ミントにはレモンのような少し酸っぱいかおりも感じます。これはリモネンと呼ばれる化学物質から感じる感覚です。その他にもカリオフィレン、ゲルマクレン、βピネンなどの化学物質が数百種類以上含まれています。

ガムやお菓子などに使用されているミントは、「ペパーミント」や「クールミント」などL-メントールを多く含んでいるミントです。

ミントの中にはアップルミントのようにL-メントールをほとんど含んでいないミントもあります。アップルミントはアップル(りんご)のような香りが特徴のミントで穏やかなやわらかいかおりがします。

これらのミントの香り成分の中のL-メントールの含有量は、クールミントでは45.3%ですが、アップルミントでは検出されていません(ほぼ0%)。※2

左から)クールミント、アップルミント

「かおり」を感じる大切さ

「かおり」すなわち「におい」は、人の鼻の奥にある嗅覚(きゅうかく)と呼ばれる感覚器のひとつで感じ取ります。嗅覚は人間の五感のなかで最も原始的な感覚です。

人の体には嗅覚受容体(=きゅうかくじゅようたい)と呼ばれる「においを感じるセンサー」を持つ嗅覚細胞(=きゅうかくさいぼう)が約1000万個あり、おおよそ821の嗅覚受容体遺伝子を持っていると言われています。実際に働いているのは396くらいですが、色覚は3原色(赤、青、緑、第4話「色を分けてみよう」参照)、味覚は5種類(甘味、酸味、塩味、苦味、うま味)であることから、嗅覚受容体は非常に多いことがわかります。

イヌは嗅覚受容体遺伝子はおおよそ1100あり人よりもにおいに敏感であることから、麻薬探知犬や警察犬などとして人の役に立っています。

ネズミ(マウス、ラット)やウシやウマなどはさらに嗅覚受容体遺伝子をたくさん持っており、アフリカゾウに至ってはおおよそ4267あることがわかっています。

嗅覚は自然の中で生きる動物ほど発達していることがわかります。※3

人の場合は、においは鼻で感じ取ります。※4

人が吸い込んだにおい(芳香成分)は、鼻の奥(鼻腔)にある嗅細胞(きゅうさいぼう)という神経の一種で感じ取ります。においの情報は電気信号になって脳に届き、私たちはすぐに直感的ににおいを感じることができます。

においは生き物が生きていくために必要な本能的な能力です。

食べられるか食べられないかの判断ににおいは大きな情報を与えます。天敵が近づいていることを察知して逃げるのもにおいで知ることもあります。多くの動物では、体力が弱って動けなくなっても、目が見えなくなったり耳が遠くなったりしても、嗅覚は最後まで衰えないことが多いのです。

嗅覚=においを感じる感覚というのは、原始的かつ繊細であって、重要な感覚なのです。

かおりを感じなかったら?

もし、私たちがかおりを感じなかったらどうなるでしょうか?

私たちが夏に食べるかき氷にはいろんな味のシロップがかかっています。イチゴ味、レモン味、メロン味、ソーダ味、抹茶味、みなさんはどんな味が好きですか?

色とりどりのかき氷のシロップ。実はどれも成分は同じだよ

え!ほんとう?なんで?メロンやイチゴ、それぞれちゃんと違う味がするよ?

かき氷のシロップの材料は砂糖とレモン果汁と水です。これに色(着色料)とかおり(香料)が加えられています。赤いシロップがかかっているかき氷を食べると、目で見て赤いイチゴを想像し、嗅覚でイチゴのかおりを想像して「イチゴ味」だと脳が錯覚してしまうのですが、実際はイチゴ味もメロン味もみんな成分は同じです。

子供たちが嫌いな野菜にピーマンやニンジンなどがあります。野菜特有の青臭いかおりが子供たちの野菜嫌いの原因のひとつとなっています。鼻をつまんで食べたら、ピーマンもニンジンもおいしく食べることができるようになったという話があります。

このように、かおりは私たちの生活に深く関係しています。

人の体に毒性の高い化学物質など命の危険性が高いかおりには敏感に反応し、薄い濃度でもかおりを感じることがあります。においを感じなかったら、私たちは危険から身を守ることができなくなります。

都市ガスに使われている4種類のガス(メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス)はいずれも無色透明の気体でかおりはありません。しかしこれらのガスは引火点(火花があると火がついて燃える温度)が低く、いったん火が付くと爆発的に燃え広がり大火災になります。室内で火災になると不完全燃焼を起こし、一酸化炭素中毒になる危険性が高まります。

そのため都市ガスには付臭剤(ふしゅうざい)と呼ばれる硫黄化合物(メルカプタン、チオフェン、サルファイド)がごく微量混ぜられています。一般に「ガスのにおい」というのは、ガスの中に混ぜられている硫黄化合物のにおいです。人が敏感なにおいなので、すこしガスが漏れただけですぐに分かるように工夫されているのです。※5

かおりを取り出す方法

私たちが感じるかおりは揮発性(きはつせい)の化学物質です。

かおりは水や有機溶媒(ヘキサンなど)に溶けやすい性質を持つものがあります。化学物質は、温めると気体となり冷やすと液体になる温度がそれぞれ異なることから、その温度を利用して気体にさせたり液体にしたりすることができます。

かおり成分の化学的性質を利用して、かおりを取り出す方法が行われています。

そのひとつに「水蒸気蒸留法」と呼ばれる方法があります。

簡単に出来て多くのかおり成分に利用できるので、アロマオイル(精油)には水蒸気蒸留法を用いて得られた製品が多く見られます。※6

ラベンダーからかおりを取り出す水蒸気蒸留装置(北海道富良野市富田ファーム)撮影:Yumi

水蒸気蒸留法のしくみ

水蒸気蒸留法は、精油を取り出すのに行われている方法のひとつです。水と混じりにくい(疎水性=そすいせい)であるかおり成分の中には、水が水蒸気となって蒸発するときにいっしょに気体になって蒸発する性質を持つものがあります。

装置が比較的簡単で、低めの温度でかおり成分を変化させずに取り出すことができることが多く、アロマオイルの値段を下げることができるので、よく利用されています。

正式な水蒸気蒸留の実験装置は、水蒸気発生装置、試料(かおり成分を含む植物)を入れるフラスコ、そして得られたかおり成分を集める受器(じゅき)の3つの部分に分かれていますが(3ポット型)、アロマテラピーで利用されている装置の多くは、水蒸気の発生と試料を入れる容器がひとつになった2ポット型のものが多く見られます。

水蒸気蒸留法は、取り扱いに注意が必要な有機溶剤を一切使わず、台所にあるお鍋などを使って同様の操作を行うことができます。

同時に得られる「精油(アロマオイル)」と「芳香蒸留水(フローラルウォーター)」

植物の葉や花を水蒸気蒸留すると、葉や花に含まれているかおり成分が取り出されます。水蒸気によって温められて気体になったかおり成分は、冷却装置で冷やされて再び液体にもどり受器にたまります。この時、かおり成分だけでなく一緒に蒸発した水蒸気も冷やされて水となって受器に集められます。

かおり成分の中には水に溶けにくい化学物質もあれば、水に溶ける化学物質もあります。受器に集まった液体は二層に分かれます。アロマオイル(水に溶けない成分)は上側に、水が下側に分かれます。この水にもかおり成分が溶け込んでいて、良いかおりがする「芳香蒸留水(ほうこうじょうりゅうすい)」が得られます。

上層の精油はアロマテラピーに用いられ、下層の芳香蒸留水もそのまま化粧水などに用いることができます。

かおり成分によって水への溶けやすさが異なるので、得られたアロマオイルと芳香蒸留水のかおりは必ずしも同じではありません。したがって、アロマテラピーとしての効果も異なり、違った使い方をすることもできます。

アロマオイルを取り出すのには多くの植物が必要となり、ご家庭の小さな簡易装置では少し難しいかもしれませんが、芳香蒸留水はつくりやすいので、いろいろな植物からかおりを取り出してみましょう。

水蒸気蒸留法で「かおり」を取り出してみよう

水蒸気蒸留法は水と簡単な装置で出来るので、おうちでもすることができます。

アランビックやハービックと呼ばれる家庭サイズの水蒸気蒸留装置が数万円で買うことができます。これらの水蒸気蒸留装置を使って、ハーブや温度管理など上手く行えば、少量だけれども精油もとることができます※7

ここではハービックを用いてローズマリーの枝葉を水蒸気蒸留してみました。ローズマリーの枝葉は一度に50~150g程度あれば十分水蒸気蒸留できます。今回は、香りの強い秋のローズマリーを約140g使いました※8。

①加熱層にローズマリーと水を入れ、3つの装置を下から、加熱槽→回収槽→冷却槽の順番に重ねて組み立て、冷却層に氷を入れます。

②IHヒーターをオンにし、抽出口から5秒毎くらいに1〜2滴水滴がでてくるようなペースでパワーをセットします。

③ヒーターを切った後もしばらく芳香蒸留水が出てくるので、触っても熱くない温度まで冷えるまで待ちましょう。

④採れた芳香蒸留水は煮沸殺菌してよく乾燥させたガラス瓶に入れ、早め(1週間以内)に使い切りましょう。しばらく使わない場合は、密栓して冷蔵庫に置いておくと1か月程度は保存可能です。

⑤加熱槽の中にはハーブのエキスが溶け込んだ水が残っています。

冷めてからお庭に撒くと、植物の栄養になったり害虫やネコ・ネズミ除けになったりします。お風呂に入れてハーブバスにすることもできます。水蒸気蒸留に使ったハーブ(ローズマリー)は色が黒っぽくなっています。これもお庭に撒いておくと植物の栄養になります。

水蒸気蒸留に使った材料は捨てずに使うことができます。自然の恵みを最後まで使うことも考えてみましょう。

行平鍋を使って水蒸気蒸留法で「かおり」を取り出してみよう

ハービックなど数万円もする装置がなくても、台所にある調理器具を組み合わせると、簡単に水蒸気蒸留ができます。

さあ、あなたのお家の台所を探してみましょう。小学生以下の生徒さんは、おうちの方と一緒に実験してくださいね。

<用意するもの>

  • IHヒーター(あるいは電熱ヒーターでもよい。直火を使用するガスコンロなどは可能ならば避けることをお勧めします)
  • ・行平鍋(深さのある大きめのもの)と鍋のフタ
  • お鍋の中に入る大きさのザルまたは中華蒸し器
    (シウマイやおこわを蒸す可変式のザル)
  • 高足の陶器鉢(100~150mL 程度の容量があるもの)
  • スーパーのレジ袋(鍋フタに乗せられるくらい)
  • 製氷機室の氷(レジ袋に軽く一杯)
  • 金属製のクリップ(レジ袋の口を閉じられるもの)

これらを使って、ローズマリーの水蒸気蒸留をしてみましょう。

①使う道具は良く洗い、しっかりと乾かしておきます。あるいはアルコールで拭いたあとミネラルウォーターや精製水で拭いてアルコールをしっかり除去しておきます。

②行平鍋にザルを入れ、ザルの中央に足高の陶器を置きます。陶器の底が浸らない程度の水を鍋に入れます。

③陶器鉢の外側にローズマリーを入れます。結構しっかりと敷き詰めます。

④鍋フタをさかさにして(取っ手が下側になるように)鍋の上に置き、レジ袋に氷をいれて、口をクリップで止めたものを上に置きます。

⑤IHヒーターで加熱をはじめます。お鍋の水が沸騰したら出力を弱め、2~3秒に数滴とれるくらいのスピードに調節します。実際にはよく見えないことが多いので、最も弱いパワーに設定して様子を見てみましょう。

⑥レジ袋の氷が溶けてきたら追加します。レジ袋を破らないように気をつけましょう。

⑦中央の陶器鉢に芳香蒸留水が100mL程度集まったら、加熱を止めます。しばらくそのまま冷めるのを待ちます。

⑧やけどしないように注意してそろっとフタを開けてみましょう。鉢には透明な液体が集まっています。まだ熱いかもしれないので注意して煮沸消毒したガラス瓶に入れてフタをします。すぐに使わない場合は、密栓して冷蔵庫に置いておくと1か月程度は保存可能です。

⑨鍋には色のついた水が残っています。これはハービックの「加熱槽」に残った水と同じで、ハーブのエキスが溶けている水です。水蒸気蒸留の後のローズマリーは色が抜けて黒っぽくなっています。これらもハービックの時と同様に利用することができます。

※実験写真すべてYumi撮影

いろんなものを使ってできるよ「水蒸気蒸留」※8

お台所にあるもので、他にも水蒸気蒸留ができるものはないでしょうか。いくつか探してみましょう。

シウマイやおこわなどを蒸す蒸し器があれば水蒸気蒸留することができます。ハービックと同じように一番下にローズマリーと水を入れ、2層目に芳香蒸留水を集める器を置き、フタを逆さにして上にレジ袋に入れた氷を置きます。

他にも調理器具をうまく組み合わせると、わざわざ専用の水蒸気蒸留器具を買わなくてもおうちで簡単に水蒸気蒸留をすることができます。

植物の香りは、収穫した産地や季節によって変化します。それは植物にとってかおりは光合成によって成長するためのエネルギーを作ったときにできる化合物(二次代謝物=にじたいしゃぶつ)であり、春より秋、若葉より成長した葉の方がかおりが強い傾向にあります。

また、植物によっては水蒸気(水、熱)によって化学変化を起こすかおり化合物を持っているものがあり、得られた芳香蒸留水のかおりはもともとの植物のかおりとは異なる場合があります。

得られた芳香蒸留水を使っていろんなものを作ってみよう。

かおりが溶け込んだ芳香蒸留水がとれたら、これを利用してかおりを楽しんでみましょう。

☆ふき掃除に

お家のふきそうじをするときに使ってみましょう。ぞうきんを絞るときに芳香蒸留水を加えると、お部屋によいかおりが広がります。フローリング床をふくときにもモップに吹きかけておくこともできます。

バスタイムに

芳香蒸留水を浴槽に入れて、かおりのお風呂を楽しみましょう。芳香蒸留水は弱酸性である場合が多いので、入浴後は出来るだけ早く浴室をよく洗っておいてください。

ルームスプレー

<準備するもの>

  • 50 mLアトマイザー(スプレー容器)
  • 芳香蒸留水50 mLくらい
  • 無水エタノール+お気に入りの精油(3~5滴)※9

<作り方>

  • アトマイザーに芳香蒸留水を入れ、これに精油を加えてよく振り混ぜます。精油はかおりの強いものは少なめに、多くても全部で5滴以内にします(日本アロマ環境協会(以下AEAJ)推奨濃度)。
  • 無水エタノールを加えると精油が芳香蒸留水と混ざりやすくなります。しかし場合によっては、水に溶けていたかおり成分が析出して濁ることがあります。濁った場合はティッシュや綿でろ過してから使います。
  • においの気になるところやかおりがあるといいなあと思う場所に軽くスプレーします。

化粧水に

近年、アロマテラピーやハーブクラフトの一環で、自分用のコスメづくりをする人が増えています。水蒸気蒸留したばかりの新鮮な芳香蒸留水は、化粧水や石けん、ハンドクリームなどコスメにも利用することができます。※10

芳香蒸留水を利用した化粧水

<準備するもの>

  • 化粧水ボトル(30~50mLくらいのもの)
  • 芳香蒸留水(約50mL)
  • グリセリン、無水エタノール、精油(お好みで)

<作り方>

  • 30~50mLの化粧水ボトルに芳香蒸留水を入れます。
  • しっとり系がよい人はグリセリンを、さっぱり系が好きな人は無水エタノールを計5mL以下加えることもできます。
  • 精油を加えたい場合は刺激性の少ない精油を1滴加えることもできます(AEAJ推奨規定で0.5%以下)。
  • 涼しいところに保存し、1週間以内に使い切るようにしましょう(AEAJ推奨規定による)。

***もっと知りたい方へ***

※1)JCiA(日本化粧品工業連合会)によると、よいと感じる時は、香り、悪い場合は、臭い、その様な感情を入れない一般的な場合は、匂い(におい、ニオイ)と呼ぶ。

https://www.jcia.org/user/public/knowledge/explain/perfume

匂いの研究者の中には、文学的に扱うときは「香り」、科学的・数学的な扱いをする時は「匂い」、そして人体に対して悪影響を及ぼすときは「臭い」と表記の使い分けを行っていることがある。この場合「におい」「かおり」などひらがな表記の時は、上記の分類に属さずニュートラルな考え方でとらえていることが多く見受けられる。

(参考文献)倉橋隆ら著「トコトンやさしいにおいとかおりの本」(日刊工業新聞社、2011年12月30日)

※2)大久保氏によると、ミント18品種について固相マイクロ抽出(SPME)法により香気成分を抽出し、GC-MS(ガスクロマトグラフィー-マススペクトロメトリー)分析によりその種類と含有量を分析している。108-111ページに分析データが記載されているが、ミントの品種によってその含有量は随分と異なることが分かる。

(参考文献)大久保直美「ミントの葉における発散香気成分の解析と分類」、花き研報、Bull.Natl.Inst.Flor.Sci.12:103〜112,2012

https://www.naro.go.jp/publicity_report/publication/archive/files/NIFS12-04.pdf

※3)(参照)東京大学 大学院農学生命科学研究科科学技術振興機構(JST)「アフリカゾウはイヌの2倍、ヒトの5倍もの嗅覚受容体遺伝子を持つ~ゲノムの比較が明らかにした哺乳類の嗅覚受容体遺伝子の多様性~」(平成26年7月23日)

https://www.jst.go.jp/pr/announce/20140723/index.html

※4)化学物質として鼻に吸い込んだにおい(芳香成分)は、鼻の奥(鼻腔)にある粘膜(嗅上皮=きゅうじょうひ)に溶け込みます。

嗅上皮という部分には嗅細胞(きゅうさいぼう)という神経の一種が約200万個存在しています。嗅細胞から伸びる細長いセンサー(嗅毛=きゅうもう)は約2000万本あり、それぞれ異なるにおいに反応する仕組みになっています。芳香化合物に反応するとその情報は電気信号に変換されて神経を伝って瞬時に脳(大脳辺縁系から視床下部という部分へ)に伝えられ、どのようなかおりか判断されます。

鼻の奥(嗅細胞)は脳に非常に近い場所にあり、電気信号のパターンは限りなく多くなります。人はとても多くの種類の繊細なにおいをかぎ分けられるということになります。

現在知られているにおい成分は40万種類ともいわれていますが、人間の嗅毛は2000万本もあるため新しい種類のにおいが現れても区別できる余力を持っています。

(参考文献)林伸光「アロマテラピーコンプリートブック・上巻」BABジャパン出版局、2012年4月30日第5版第3刷

※5)都市ガスは天然ガスから製造され、主に4種類の炭化水素化合物が含まれています。

メタン(CH4) 80~90%
エタン(CH3-CH3) 4~6%
プロパン(CH3-CH2-CH3) 3~5%
ブタン(CH3-CH2-CH2-CH3) 1%未満

よく用いられる付臭剤には次のようなものがあります。

ターシャリーブチルメルカプタン・ジメチルサルファイド・テトラヒドロチオフェン

(参照)都市ガスは4つの成分で出来ている

https://www.tainavi-switch.com/contents/30068/

※6)アロマテラピーで用いられる精油は、植物から取り出した芳香化合物が主成分となっている。その方法には水蒸気蒸留法のほかに、圧搾法、油脂吸着法、揮発性有機溶剤抽出法、超臨界流体抽出法などがある。

「圧搾法」はかんきつ類の精油抽出などに多く用いられる方法で、圧力をかけて果皮を絞って精油を取り出す方法である。搾りかすなどの不純物が混入することがあり、精油も劣化しやすいことが多い。オレンジスイート、レモン、ライム、グレープフルーツなどの精油が圧搾法で得られる。

「油脂吸着法」は、繊細な花のかおりの抽出などに多く用いられる。油脂にはラード(豚脂)やヘット(牛脂)などが用いられ、冷やしたり温めたりして芳香成分を油脂に吸着させる。油脂に吸着された芳香成分は、有機溶剤(芳香成分を溶かし出す液体)に溶かしだされたのち、有機溶剤を除去すれば芳香成分が得られる。

「揮発性有機溶剤抽出法」は、石油エーテルやヘキサンなどに植物の芳香成分を溶かし出して取り出す方法である。油脂に吸着した芳香成分を、エタノールなどを用いて溶かし出して取り出す。熱に弱い花などに適している。水蒸気蒸留法と比べて、より多くの芳香成分が抽出できるため、ローズやジャスミンなど繊細な花の香りの抽出に多く用いられる。大変な手間がかかるので高価な精油が多い。使用した有機溶剤が完全に除去されずに残留していることがあり、これらの精油をスキンケアとして使用する際には注意が必要になることもある。

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日本アロマ環境協会作成の資料を参考にリケラボ編集部作成

「油脂吸着法」や「有機溶剤抽出法」の残留有機溶剤の問題を解決したのが「超臨界流体抽出法」である。主に超臨界状態の二酸化炭素(二酸化炭素が気体と液体の中間の状態で存在している状態が超臨界状態)が用いられる。抽出溶剤の除去が非常に簡単であるが、コストがかかり精油は非常に高価である。

※7)アランビック水蒸気蒸留装置は基本的にはアルコールランプで加熱を行う仕様が多いが、最近では電熱ヒーターやIHヒーターなど裸火を使用せずに水蒸気蒸留を行える製品も出てきている。ハービックはガスコンロはもちろん、IHヒーターも使用できる。

裸火を使用する際は、周囲から燃えるものを遠ざけ、保護者の目の届く場所で一緒に実験されることをお勧めしたい。またIHヒーターを使用する際も、水蒸気蒸留装置や出てくる蒸気は熱いのでやけどには十分に注意したい。誤って冷めないうちに装置に触れてしまったり、熱い水蒸気に触れてしまったりしてやけどした場合には、すぐに水道水でしっかりと冷やし、症状の程度に応じて医師の診察を受けるようにお願いしたい。

※8)ローズマリーやミントなどのハーブは成長が早く葉っぱがたくさん採れるので、水蒸気蒸留の材料として簡単に集めることができます。また、レモンバーム(メリッサ)のアロマオイルは非常に高いですが、芳香蒸留水だと気軽にたくさん採ることができます。

1種類のハーブがたくさん集められないときは、複数のハーブを組み合わせて同時に水蒸気蒸留することで、自分だけの特別な香りを楽しむことができます。

(参照)「蒸留」を知り暮らしに取り入れる」、AEAJ, No.102,Winter 2021

※9)水蒸気蒸留法では芳香蒸留水と精油が得られます。精油は水に溶けにくいかおり成分であることから、精油によっては芳香蒸留水と香りのイメージが異なることがあります。

同じかおりの精油を添加するのもよいですが、芳香蒸留水に含まれないかおり成分を加えて、かおりをブレンドしてみるのも楽しいかと思います。

また、スパイス系の精油(シナモン、タイム、ブラックペッパーなど)など刺激性の強いかおりは多く用いないように気をつけましょう。精油の中には犬や猫などの動物の健康を害するかおりがあるので、ペットを飼われているお家では精油の種類や場所をよく考えてからご使用ください。

※10)アロマテラピーやハーブを楽しむ際に注意しなければならない法律がいくつかあります。そのうち特に注意したいのは薬事法、製造物責任法(PL法)、消防法です。

手作りの石けんやハンドクリームなどは自己責任のもとに使用し、お友達にプレゼントする場合はお互いに理解と認識を持って受渡をしなければなりません。

その石けんがとても使い心地が良く、お肌がきれいになったように思えても、「アトピー皮膚炎が治るよ」とか「保湿作用があって美肌になれるよ」と薬効を肯定するような表現をしてはなりません。(薬事法)

また、自分が作ったものには責任があります。自分自身が使ってもプレゼントされたお友達が使っても、それが原因で健康にトラブルが生じた場合は訴えられる可能性があります。(PL法)

一般の家庭で保管している精油の量では消防法の規制対象にはなることはありません。しかし精油は揮発性物質であり、引火性物質であるため、火災には十分気をつけて火気から遠ざけて取り扱わなければなりません。(消防法)

精油は紫外線や酸素によっても劣化することがあります。高温多湿を避けて暗く涼しい場所に保存しておきましょう。アロマ教室の先生の中には専用の冷蔵庫を準備している人もいます。

Yumi

Yumi

理学修士(ペプチド化学)。環境分析、バイオ細胞実験、マルチスケールの有機合成、HPLCでのキラル分離など幅広い業務を経験。2018年10月よりパーソルテンプスタッフ研究開発事業本部の社員。現在、高分子合成の研究職として勤務。
甲種危険物取扱者、有機溶剤作業主任者、毒物劇物取扱者などの専門資格の他、花火鑑賞士、温泉分析書マスター、京都検定、AEAJ認定アロマテラピーインストラクター、ハーブコーディネーターなどの民間資格を所持し、児童対象の科学実験教室ボランティアなどで活かしている。
趣味はバイオリン、旅行、写真、散策、アロマクラフトなど。