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化学ショーでよく見る信号反応を進化させてみた! | リケラボ

信号反応を進化させてみた!│ヘルドクターくられの1万円実験室

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科学を愛する読者のみなさま、ごきげんよう。くられです。

使える予算は1万円以内。「高価な実験機器は使えない」という制約のなかで知恵と工夫を凝らして実行可能なおもしろ実験を紹介する本企画。

第12回目のお題は「信号反応」です。今回も、私が主宰する秘密結社「薬理凶室」のメンバーであり化学に造詣の深いレイユール氏に協力のもと、お届けします。それではお楽しみください!


皆さんこんにちは。レイユールです。

今回は、演示実験としてよく知られている「信号反応」を進化させてみましょう。これまでの信号反応とはちょっと違う次世代の信号反応を紹介します!

信号反応とは

信号反応は、化学の演示実験として、学校やサイエンスショーなどで披露される実験の一種です。黄色い溶液を振ると、赤、緑に変色します。色が信号の色と同じことから信号反応と呼ばれています。信号反応は、3色の変色を繰り返す美しい反応ですが、有名であるがゆえ理系の読者の皆さんは少々見飽きているかもしれません。そこで、今回はこれまでにない信号反応を作ってみましょう。それに先立ってまずは、一般的な信号反応を観察してみましょう。

ノーマルな信号反応

1. インジゴカルミン0.05gを水10mlに溶解する。(インジゴカルミン0.5%溶液)

▲インジゴカルミン0.05g
精密な測定は必要ないので、目分量でも構わない。

▲溶解の様子
溶液は褐色瓶で保存する。周りが汚れるので新聞紙などを敷くと良い。

2. 水80mlに水酸化ナトリウム2g、グルコース1.2gを溶かす。

▲水酸化ナトリウムの計量
潮解するので手早く行うこと。手袋と安全眼鏡を忘れずに。

▲グルコースの計量
こちらもあまり精度は必要ない。

3. 完成した溶液にインジゴカルミン溶液を加えて着色する。

▲着色の様子
薄いと緑と黄色が分かりにくいので、少し濃いめに色を付けると良い。

4. しばらく放置し、溶液が黄色く落ち着くまで待つ。

▲黄色に落ち着いた溶液
反応が遅い場合には人肌程度まで温めると良い。

5. 振って色が変化するところを観察する。

▲振盪
実際にはPETボトルを使うと良い。

▲変色の様子
振ると黄→赤→緑で変色し、放置すれば逆順で戻る。

これだけでも中々楽しめると思いますが、幾つか問題点もあります。一つは、あまりに有名過ぎて、見慣れてしまっている。もう一つは、水酸化ナトリウムが劇物であり入手が困難ということです。水酸化ナトリウムは劇物で購入しにくく、また一般家庭での取り扱いは推奨されませんので、レイユールが皆さんの代わりに実験をお見せしました。次は、この問題を解決してみましょう。

次世代信号反応

実は、信号反応のカラーバリエーションを増やすことに成功した報告は既にいくつかあり、YouTube等でも動画を見つけることができます。この反応はグラデーション状に変色していくので、虹色グラデーションを意味するゲーミングカラーにちなんで私は勝手に「ゲーミング反応」と呼んでいます。以降も「ゲーミング反応」の呼称で本稿を進めていきます。

このゲーミング反応は、信号反応の亜種であり、色素も信号反応と同じインジゴカルミンを使います。しかし、塩基の水酸化ナトリウムを倍量の炭酸ナトリウムに置き換えることで色調が変わり、色数も増えるようです。それでは、炭酸ナトリウムを使った信号反応が本当に次世代信号反応と呼べるクオリティーなのか検証してみましょう。

ゲーミング反応を試してみる

1. 水80mlに炭酸ナトリウム4gとグルコース1.2gを溶かす。

▲炭酸ナトリウムの計量
炭酸水素ナトリウム(重曹)ではないので注意。

2. 溶液を水浴かヒートガンで60℃まで加熱する。

▲温度の調整
全ての成分が溶解しきってから加熱すること。

3. 信号反応で使ったインジゴカルミン溶液を加えて着色する。

▲着色の様子
この時点で信号反応とは違う色調を示す。(信号反応は緑)

4. しばらく放置し、溶液が黄色く落ち着くまで待つ。

▲黄色に落ち着いた溶液
溶液が冷えないように、定期的に温めると良い。

5. 振って色が変化するところを観察する。

▲振盪
温度が高いのでゴム手袋の下に布手袋をすると安心。布手袋だけだと万一液が掛かった際に染み込んでしまうので危険。

▲変色の様子
グラデーション状の変色のため、実際にはもっと多くの色調を示す。

大きく変わったところは、水酸化ナトリウムを炭酸ナトリウム(倍量)で置き換えたところと、溶液の温度を60℃に加熱する必要があることです。実験の結果、6色程度まで増えることが分かりました。色に関しては、緑色が消えて、代わりに紫や青が増えました。イメージとしては、信号反応が3色がクッキリと分かれているのに対し、ゲーミング反応ではグラデーション状に変化しているように見えます。

ゲーミング反応の原理

筆者の知る限り、ゲーミング反応の色調の違いの原因について化学的に解説している文献は見つけることができませんでしたので、実験的に調べてみることにしました。ここからはその結果を元に解説を進めていきます。

実験の結果、ゲーミング反応はある一定のpHでしか観察されないこと、塩基の種類は関係ないことが分かりました。インジゴカルミンは、pHが11.4よりも低い溶液では青色、11.4~13.0の溶液中では緑色、13.0以上ある強塩基溶液中では黄色を呈することが知られており、この緑色を示すpHの範囲ではゲーミング反応、黄色を示す範囲では信号反応を示すことが分かりました。信号反応やゲーミング反応の変色は色素の酸化状態によるものですが、信号反応とゲーミング反応ではpHによる発色の違いもあるということになります。インジゴカルミンは、変色点であるpH11.4と13.0で3色に変化しますが、これは酸化型の色素の場合です。還元型や中間型にもpHごとの構造が存在するはずです。構造ごとの色がどのようになっているかを分析するのは極めて困難(しかも実際には平衡状態と考えられる)なので、実際に何色に変化できるのかは不明ではありますが、少なくともpHを変化させるだけでカラーバリエーションが増えることは間違いありません。

今回の実験にかかった費用

  • インジゴカルミン 3,000円~6,000円程度
  • 炭酸ナトリウム 数百円
  • グルコース 数百円
  • (水酸化ナトリウム) 1,000円程度

インジゴカルミンは、食用着色料としても使われており、通称「青色2号」と呼ばれます。ネットショッピングで購入が可能です。安定化処理された青色2号(アルミニウムレーキ)も一緒に販売されているので、レーキではなく、純粋な青色2号であることを確かめて購入するように気を付けてください。

また、薬局で身分証の提示と捺印を行えば、個人でも水酸化ナトリウムの購入は可能ですが、廃液の処理や保管などのハードルが高いので個人での購入はオススメしません。

掲載写真,図全てレイユール氏提供

レイユール
薬理凶室怪人。専門は有機合成化学。薬理凶室では化学分野を担当している。
薬理凶室のYouTubeチャンネルでは、化学実験をコミカルな動画で紹介する「ガチ実験シリーズ」を不定期更新している。

薬理凶室YouTubeチャンネル:https://www.youtube.com/channel/UC_sxCGl2slqyAj9i26KLKuA

くられ

くられ

自称、不良科学者。作家/科学監修、大学講師なども兼任する。近著では「アリエナクナイ科学ノ教科書」で2018年第49回 SF大会にて星雲賞ノンフィクション部門を受賞(続きの連載をDiscoveryチャンネル公式WEBにて掲載、好評を博し終了。現在単行本化作業中)。週刊少年ジャンプで連載中の人気漫画『Dr.STONE』の科学監修を務める。人気Youtuber動画チーム「〜の主役は我々だ!」とのコラボによる「科学はすべてを解決する」はコミック化されるなど好評を博している。
公式サイトはこちら

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