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お手軽リニアモーターカー「コイルトレイン」を作る!│ヘルドクターくられの1万円実験室 | リケラボ

お手軽リニアモーターカー「コイルトレイン」を作る!│ヘルドクターくられの1万円実験室

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科学を愛する読者のみなさま、ごきげんよう。くられです。

使える予算は1万円以内。「高価な実験機器は使えない」という制約のなかで知恵と工夫を凝らして実行可能なおもしろ実験を紹介する本企画。第3回目の今回は、予算は1万円どころか千円もかからない超お手軽工作!
低予算かつ材料も入手が容易なものばかりですが、その原理はちゃんとした科学に基づくものであり、電磁気への興味や理解をあらためて深めるきっかけになるでしょう。

●電池と磁石で遊ぶ

電気と磁力。この2つの力はどちらも直接目でみることはできません。磁石は鉄にくっつきますが、その力自体は見えませんね。電気も雷やスパークなどで見えなくはないですが、あれも電気の力で大気がプラズマ化しているだけで直接見えているわけではありません。そういうわけで見えないこの2つの力。実はセットといってもよいもので「フレミングの左手の法則」なんてのが有名です。物理専攻の人ならずとも、電気・磁力・力(ローレンツ力)、それぞれ力が働く方向がある・・・なんてことをぼんやり覚えている人は多いのでは。

もう少し身近に実感できる例としてはたとえば、ミニ四駆なんかに使う電動のモーター。電池を入れて電気をながすとモーターが回って車の模型が走る仕組みですが、あのモーターからでている端子をLEDなどにつなぎ、モーターを手動で廻すとLEDが光ります。

つまり、電気を運動エネルギーにしている装置ですから、その逆、運動エネルギーを電気にする、発電にもなるということです(ダイナモ発電)。
モーターの中には磁石が入っており、その磁石と電磁石が電気を使って回転・・・ということは、回転自体を別のエネルギーから入力すると逆に電気が発生するということ。「電気と磁力はセット」というのは、こうした関係性があるからです。

中学や高校で物理を学んでいる人だと、右ネジの法則やモーターの原理などを思い出して「知ってる知ってる」と言えると思います。

今回はそんな電気と磁力の関係性をホームセンターや100円均一に売られているものを組み合わせて体感できるおもちゃの作り方を紹介します。

その名も「コイルトレイン」。

●コイルトレインづくりの手順

コイルトレインは、2014年あたりにYoutubeの「AmazingScience 君」というチャンネルで公開された実験で、公開後、多くの人がチャレンジした動画が公開されています。

動画などで動いているところを見ると、非常に単純な構造で、誰にでも簡単にマネできそうです。

ところが実際に作ってみると意外と動かないことも多く、その問題点を振り返っていくことで、電磁気に対する理解が進みます。

まずは材料を紹介。


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・ネオジム磁石:100円均一ショップで売られている強力磁石でよい。
・銅線:被膜のない銅線。10mくらいのものがオススメ。
・電池:単3~単5の電池。単4が最もオススメ。
・厚紙など:0.5~1mm厚くらいの厚紙でもゴムでもいい。
・銅線を巻くための棒:これが一番大切なので後述。
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基本的な構造は、電池の両端にネオジム磁石を貼って、銅線をぐるぐるしたものに通すだけです。

実際この通りなのですが、この情報だけで作るとかなりの確率で失敗します。

まずは材料集め。まずは電池と磁石を決定します。磁石の外形より電池が大きいとこの工作は動きませんので、単4あたりで良いでしょう。単5でも問題ないです。磁石はダイソーだとネオジム磁石が13ミリサイズのもの、セリアには16ミリで、単三電池で動くものを作るならセリアのもの、それ以下だとダイソーのネオジムが一番入手性が高いでしょう。

次に磁石のサイズとぴったりの棒を用意します。ホームセンターに行けば多くのサイズの棒がありますので、それぞれに合わせた棒を買ってくるとよいでしょう。

今回は家にあった突っ張り棒の内側の棒が丁度13ミリだったのでこちらを採用しました。

あとは棒に銅線をぐるぐる巻いていくだけなのですが、銅線はホームセンターなどで10mくらいで数百円で売られています。オススメは数メートルから10m以内のもの。あまりに長いと絡んでしまった場合に大規模にゴミになってしまうので、10m程度のものを買います。また被膜処理(絶縁処理)がされているものは当たり前ですが通電しないため今回の実験には使えないので、被膜のないもの(ホームセンターで普通に銅線として売られているもの)を選んで買えば問題ありません。太さも重要で細すぎると工作が非常に面倒なのと壊れやすくなるので、0.5mm以上1.5mm以下のものを買うと良いでしょう。

棒と磁石が揃ったら、あとは棒に銅線を巻いていきます。

棒にテープなどで巻き始めを固定してから巻き始めの部分を上から3重程度強く巻いて固定します。そうするとつよく力をいれながら巻いていくときに外れたりしません。

銅線はけっこうやわらかく、変な折り目ができやすいので、ゆっくりと針金として余裕をもって引き出しながら、棒に密に巻き付けていきます。綺麗なコイルを作ろうとするとけっこう時間がかかります。

電動ドリルがあるなら、棒をドリルチャックに固定して、超低速で回転させて、あらかじめ真っ直ぐ伸ばして置いた数m程度の銅線を巻き取ってもらう感じでやってもよいのですが、慣れないと事故のもとなので工作に自信のある人はやってもいいかもしれません。

巻き付けたコイルが適度な長さになったら、棒からはずして伸ばします。銅線が接触しているとその部分は変な電気の流れになって上手く動かない原因になるのでゆっくり伸ばしながらはずします。コイルのスキマが1ー2mmくらいになるように伸ばすことができれば成功です。

あとは磁石を電池につけるのですが、電池には必ず反発する方向で磁石をくっつけます。

NS 電池 SN  ないし  SN 電池 NS といった具合です。

そして問題になるのが+極に磁石をとりつけるときに+極の突起が邪魔になって真っ直ぐ付かないことです。これは厚紙などをドーナツ型に切り抜いて間に噛ませることで解決します。

あとはコイルの中に電池を入れれば、進むか押し戻されます。押し戻される場合は、入れる方向を逆にして入れれば、コイルの中を滑るように移動していきます。

注意しなければいけないのは、万一中でひっかかって止まった場合はすぐに取り出しましょう。電池から無限に電気がながれることで詰まっている部分の銅線がすぐに触れないくらいに高温になります。放置して燃えやすいものなどに接していると火事などにもなってしまうので注意が必要です。実験後も中にいれたまま放置することのないように絶対に気をつけましょう。

●コイルトレインづくりの原理を解説!

コイルトレインが進む原理は、いわゆる「右ネジの法則」。電流の流れる方向に磁場の流れる向きが決まるアレです。

参考文献:『魅了する 科学実験2』(早稲田大学本庄高等学院実験開発班 著/すばる舎/2018年)

右ネジの法則を知らない人、忘れてしまった人のために説明しておくと、コイルは電気を流すと磁界が発生し電磁石となります。今回の実験では、磁石の表面からコイルに触れている部分にプラスからマイナスにかけて電気が流れるわけです。そうするとそれぞれ引きつけ合う力と反発する力が生まれるので、あとはそれをずっと繰り返してコイルのなかを電池が進むわけです。

ちなみにかなり電池の消耗がはげしいので、数回遊ぶだけで電池は弱って進む速度がおそくなるか反発に必要なエネルギーに達せず止まってしまいますが、その場合も時間をかけて高温になるので必ず取り出しておきましょう。

安全上の注意点は守りつつ、ぜひともお試しあれ!

●今回の実験にかかった費用

・ネオジム磁石:100円 ×2〜4
・銅線:400円~800円程度
・電池:100円
・厚紙など:100円(なんでもいい)
・銅線を巻くための棒:家にあったもの(今回使ったのはいわゆる”突っ張り棒”)

百均サマサマですが、合計で2,000円かかりませんでした!

くられ with 薬理凶室

くられ with 薬理凶室

くられ。自称、不良科学者。作家/科学監修、大学講師なども兼任する。近著では「アリエナクナイ科学ノ教科書」で2018年第49回 SF大会にて星雲賞ノンフィクション部門を受賞(続きの連載をDiscoveryチャンネル公式WEBにて掲載、好評を博し終了。現在単行本化作業中)。週刊少年ジャンプで連載中の人気漫画『Dr.STONE』の科学監修を務める。人気Youtuber動画チーム「〜の主役は我々だ!」とのコラボによる「科学はすべてを解決する」はコミック化されるなど好評を博している。
公式サイトはこちら

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