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"日本一"の給食を食べてみた! 第12回全国学校給食甲子園Rレポート | リケラボ

“日本一”の給食を食べてみた! 第12回全国学校給食甲子園®レポート

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2017年12月3日、第12回全国学校給食甲子園®(以下:給食甲子園)の決勝大会が開催されました。

学校給食は、管理栄養士・栄養士の資格を持った「学校栄養職員」または「栄養教諭」、調理を主に担当する「調理員」によって運営・提供されています。“調理は科学”といわれることもあるように、栄養バランスに考慮しながら、食材をうまく活用しておいしい給食をつくる過程には、理系知識がかかせません。「理系すぎるお料理レシピ」シリーズでも紹介しているとおり、調理過程や食材の組み合わせなど、さまざまなポイントで科学的な知識が必要です。

そんな食のプロフェッショナルたちが工夫を凝らした最高峰の給食って、いったいどんなものなのか気になる! ということで大会にお邪魔してきました!

全国学校給食甲子園®とは?

全国の学校給食では、地域でとれる食材を使ったさまざまな献立が考えられています。食の文化と安全性、そして栄養バランスについて考え抜かれて生まれる学校給食は、まさに“食育”のための生きた教材です。給食甲子園では、地域の特色を活かした献立を競い合うことで、学校給食の現場を活性化させるとともに、“食育”や地産地消の推進を目指しているのです。

食育… “食”に関する知識と“食”を選択する力を習得し、健全な食生活を実現できる人間を育てること。知育・徳育・体育の基礎になるもの。

2005年に食育基本法が制定されたことに伴い、食育の振興、子どもの成長と健康を願ってこの大会が開催されることになりました。大会には毎年2000校以上(給食センターも含む)から応募があり、今年は応募献立総数2025、4次もの書類審査を経て12の代表が選ばれました。

調理過程から評価され、いちばんの給食が選ばれる!

決勝大会では、会場でリアルタイムに調理が行われます。制限時間は60分。6食分をつくり、洗い物まできちんと終わらせます。調理に参加するのは2人。スムーズな連携で手ぎわよく進めることが重要です。もちろん安全のための一手間も欠かせません。加熱中の食材の温度をこまめに確かめたり、食材同士が触れないよう仕切りを立てて作業したり、衛生管理がきちんとなされていることは評価の大前提です。審査員も真剣な眼差しで選手たちを見つめ、チームワークや調理技術、安全面などを厳しくチェックしていました。

調理終了後は、食味審査が行われます。味も見た目もすべてレベルが高く、優劣つけがたかったようです。審査員のみなさんはとても悩みながらも、「心を鬼にして審査した」とのこと。

“日本一”の給食に選ばれたのは……

審査終了後は、いよいよ結果発表。

優勝したのは……

埼玉県 越生(おごせ)町立越生小学校でした!

【献立】
山吹の花ごはん、牛乳、越生うめりんつくね、五大尊つつじあえ、上谷の大クス汁、ゆずの里ゼリー

エネルギー 668kcal、 たんぱく質 26.8g、 脂質 20.1g、 脂質 27.1%、 カルシウム 352mg、 マグネシウム 97mg、 鉄 3.2mg、 亜鉛 3.6mg、 ビタミンA 267μgRE、 ビタミンB1 0.83mg、 ビタミンB2 0.56mg、 ビタミンC 48mg、 食物繊維 5.7g、 食塩相当量 2.5g

そして、“日本一”に輝いた給食、試食させてもらいました!

<山吹の花ごはん>
越生町の「山吹の里歴史公園」をイメージした一品。ターメリックともちきびで山吹の花を、えだまめで山吹の葉を表現しています。見た目が鮮やかで目を引くごはんは、もちきびやえだまめの食感がアクセントになり飽きません。

<越生うめりんつくね>
越生梅林の梅でつくった、給食室特製のかつお入り“梅びしお”(ねり梅)を使用。ふんわりしたつくねを口に入れると、ふわっとかつおの香りが。噛むごとに梅の風味を感じられて、味に立体感がありました。

<五大尊つつじあえ>
越生町にある関東屈指のつつじの名所「五大尊つつじ公園」をイメージしたサラダ。ボイルした紫キャベツを越生産のゆず果汁でマリネすることで、鮮やかな赤紫色に変化させ、つつじの花の色を表現しています。これは、紫キャベツに含まれるアントシアニンの性質で、酸性のゆず果汁によって赤色っぽくなるのです。とてもさっぱりとしていて、ゆずが上品に香ります。にんじんがお花の形になっているのもかわいい!

<上谷の大クス汁>
越生町が誇る「上谷(かみやつ)の大クス」をイメージしたスープ。ごぼう、さといも、そして学校で栽培しているジャンボひらたけで太い幹を表現。さらに、世界最初のパスタ“クスクス”とこまつなで、神秘的な大クスを表しました。とても具だくさんで、食べごたえのあるスープです。具材のだしが効いていて、優しい味付けのなかにしっかりとうまみが詰まっています。クスクスのつぶつぶした食感も楽しく、一口ごとに新しい美味しさを感じられるような一品でした。

<ゆずの里ゼリー>
越生産のゆず果汁を使用したゼリー。とにかくフルーティー! すっきりと甘すぎず、身体にもとても優しいデザートです。

栄養バランスや味はもちろんのこと、彩り、食感、香り、表現のすみずみまでこだわりを感じる給食でした。彩りをより鮮やかにさせるために、紫キャベツの色素を化学変化させていたのが理系ならではの発想で、リケラボ編集部のツボにはまりました。地元の名所をイメージした献立で、歴史や文化にまで触れているのも、とてもステキです。こうした心のこもった給食を通じて、地元への愛も育まれていくのではないでしょうか。学校給食が、子どもたちの成長にとって、とても重要なものだと改めて感じることができました。

町全体で、食育への関心を高めたい

▲埼玉県越生町立越生小学校の栄養教諭・小林洋介さん(左)と、調理員・三好景一さん(右)小林さんの左胸についたうさちゃんは、6年生の児童が「給食甲子園頑張ってね」ということで手作りしてくれたお守りなのだとか。

最後に、優勝した埼玉県越生町立越生小学校の栄養教諭・小林洋介さんのインタビューをお届けします。

今回の大会で大変だったことはありますか?

調理器具を決めたり、作業工程や役割分担をいろいろ考えるなど、下準備が大変でした。調理器具の使い方なども徐々に改善しながら、1時間以内に後片付けまで終わらせられるように練習を続けてきました。当日は慣れない調理台を使っての調理でしたが、大きなアクシデントがなくラッキーだったと思います。

ご自身で、優勝の理由はどんなところだと思いますか?

地元の特産を活かした献立だったというのが、評価されたポイントになったのではと。越生で梅やゆずを栽培してくれている農家の方たちの顔が、審査員の方たちの目にもちょっと浮かんだんじゃないかなと思います。

普段、食材の情報収集などはどうやっていますか?

義理の父が農業をやっているので、話したり、手伝ったり、旬のものをいただいたりすると、「この時期に何がとれる」とかがわかったりするので。そのあたりからヒントを得ることは多いですね。あとは、地元で野菜などの食材をつくってくれる人の顔が見えると、「この人がつくってくれる食材で料理してみようかな」なんてかたちで献立をつくることもあります。

日ごろから、学校で子どもたちとも関わる場面はありますか?

そうですね。学校では栄養教諭ということで、食育の授業や給食指導などを通して、子どもたちと触れ合う機会も多いですね。子どもたちも、みんな私のことを知ってくれています。こうやって、顔が見られる環境で仕事をできているのはとても良いことだと思います。

子どもたちから、献立のリクエストもあったりしますか?

ありますよ。子どもたちや、保護者の方からメニューを募集することもあります。保護者の方に関心を持ってもらえると、子どもたちにも伝わるものがあるんですよね。献立表なんかにも、なるべく保護者の方に目を通してもらえるように「今日はこんな意図があって、こういう献立にしました」といったことを書いておくと、「そうなんだ」と、わかってくれるので。そして、おうちでも「給食も残さないで食べようね」なんてかたちで話してくれるといいなと思います。

今後の目標を教えてください。

今は、やっとスタートラインに立てたかなという感覚です。越生町は、食育の面でまだまだ成長の余地があります。だから、給食甲子園で優勝できたことで、さらに食への意識が高まればいいなと。今回の献立は、まさに越生町の良いところを表現したり、地元の食材をふんだんに使った料理です。こういうものを、地域の飲食店でもアレンジして提供してもらえたら。越生は休日になると、たくさんのハイキング客やサイクリストが訪れるので、そういう人たちにも食べてもらって、越生のことを知ってもらう機会になればいいなと。本当に、優勝できたことだけで終わらず、身を引き締めて、また明日から越生町全体としての食育への関心が高まっていくようにしていかなければ、と思います。

まとめ

よりよい給食を提供することで、学校をはじめ、地域全体の食育を盛り上げる──給食甲子園には、子どもたち、そして地域への愛にあふれた栄養職員・栄養教諭・調理員のみなさんの姿がありました。栄養バランスや味が優れているのはもちろんのこと、見て、知って楽しい献立づくりには、栄養士としての高い能力が欠かせません。知識と技術を駆使し、熱意を持って食育に携わる人たちの姿は、とても輝いていました!

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リケラボ編集部

リケラボ編集部

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