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バイオ技術とアートを融合した"理系アーティスト"スプツニ子!展覧会『bionic by sputniko!』レポート | リケラボ

バイオ技術から生まれるファッションの未来を想像する!“理系アーティスト”スプツニ子!展覧会『bionic by sputniko!』レポート

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2017年8月18日~9月3日、現代アーティストのスプツニ子!さんによる展覧会『bionic by sputniko!』が西武渋谷店にて開催されました。この展覧会は“バイオ技術から生まれるファッションの未来を想像する”がテーマになっており、「衣服もバイオ技術で作られる未来が訪れたとしたら?」という仮説をもとに表現されたインスタレーションが公開。これは見逃せないということで、リケラボ編集部も展覧会にお邪魔してきました。


身体拡張としてのファッションの未来を考える

スプツニ子!さんといえば、英国インペリアル・カレッジ数学科および情報工学科を卒業した経歴を持つ“理系アーティスト”。これまでにも、農業生物資源研究所とコラボレーションして蛍光シルクを用いたドレスを制作するなど、バイオテクノロジーとアートを融合させてきました。

そんな彼女が今回着目したのが、“身体拡張としてのファッションの未来”。近年、iPS細胞やバイオプリンタの開発によって人間の骨や臓器を人工的につくることが現実味を帯びてきており、今後こうした生体材料が当たり前のように用いられる時代が訪れたら、既存の倫理、慣習、思想は大きく揺るがされるはず──そこで「細胞、腫瘍、微生物などのマテリアルで自分のファッションを自由に生成できるようになるとしたら、それはどんな新しい美的価値をもたらすのだろう? 恋人とのデート、大事な家族・友人の結婚式、あるいは誰かとの別れの日。私たちはどんな想いを込めて、オリジナルな服を育て、それをまとうのだろう?」というテーマのもと、バルーンアーティストユニットのデイジーバルーンや映像化の中村壮志氏、ファッションデザイナーのショウコニシ氏らとコラボレーションした作品の展示が行なわれました。

会期中も変化・増殖を続けた作品たち

会場では、バイオテクノロジーによって衣服がつくられるという世界観のもと表現されたインスタレーションを、間近で見ることができました。

細胞に見立てられたバルーンのひとつひとつは会期中も徐々に増やされ、細胞が増殖し、変化していく様子が再現されました。初めはすべての展示が台の上に収まっていたそうですが、会期終盤には写真のように床にはみ出るほどになっています。

台の液晶パネルには、実際に細胞が培養されていく映像を用いて制作されたインスタレーションが映し出され、空間を絶えず変化させていました。

本当に自らの細胞から衣服を生み出せる時代がやってきたら、私たちは一体どのようなファッションを身にまとうようになるのでしょうか。

また、今回の『bionic』プロジェクトでは、そごう・西武の自主ブランド『ハニカムモード』とコラボレーションしたファッションアイテムの販売もされていました。

コレクションのコンセプトになっているのは、“HeLa細胞の培養・増殖”。世界最初のヒト由来の細胞株であるHeLa細胞はさまざまな病理研究に活用され、医療技術の発展に大きく貢献してきました。一方で、細胞を採取された女性やその家族に許可なく培養が続けられた事実があり、しばしば批判もされています。そんな、科学技術の二面性を象徴するともいえるHeLa細胞をテーマに取り上げたスプツニ子!さんは、「私にとってファッションとは、自らの思想・哲学を主張するためのデモンストレーションだ。世界中の都市空間で、異なるファッション=思想同士が遭遇し、今も無数のセレンディピティが起きている。HeLa細胞がそうであったように、この商品たちが多様な議論を生み出す契機となることを願っている」とコメントしています。

バイオ技術が導く未来とは?

バイオとアートを融合させた、スプツニ子!さんならではの世界観。今後ますますテクノロジーが発展していくなかで世の中がどう変化していくのか、改めて考えさせられるきっかけにもなる展覧会でした。アートを通じて私たちに新しい視点を与えてくれる“理系アーティスト”のスプツニ子!さんに、今後も注目です!

リケラボ編集部

リケラボ編集部

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